2014年11月4日 

■Kawasakiのモンスター「H2R」が、鈴鹿サーキットに見参

 うわさのモンスターマシン、KawasakiのH2Rがついにベールを脱いだ。舞台は国内屈指の鈴鹿サーキット。デモンストレーション走行を担当するライダーは、藤原克昭選手だ。

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「かっちゃん」こと藤原選手は、世界選手権をはじめヨーロッパ選手権で数々の名勝負を展開し、現在アジア選手権のトップライダーとして君臨するKawasakiのエースライダーのひとりだ。当初のイベントプランでは、土曜日と日曜日の二日間にわたり、デモ走行が計画されていたが、あいにくの雨で土曜日の走行がキャンセル。そのパワフルすぎる性能ゆえか、2日目の日曜日も雨が落ちてきた時点でサーキット走行はキャンセルすることが決まっていた。そしてあろうことか日曜日の降雨確率は60%。見上げる空はいつ降り出してもおかしくない状態だった。

 レースアナウンサー辻野ヒロシのMCでメインスタンド前に登場した藤原は、インタビューを受けながらもどこか上の空。それもそのはず、誰よりもH2Rの魅力を知っている藤原は、集まったファンにH2Rの魅力を直接感じて欲しかったのだ。それには、エンジンに火を入れ300馬力を誇るH2Rの雄姿とエンジンサウンドを体感してもらうのが一番なのだ。インタビューを早々に切り上げるとヘルメットを奪うようにしてマシンに跨った藤原はたちまちコースへと消えていった。ヘルメットのシールドに小さな雨粒がぽつりと落ちてきたからなのか、レーススケジュールが押していたせいかは定かではないが、フルコース3ラップのデモ走行は決行された。

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 ゆっくり、ゆっくり路面状況を確かめるように5.8キロの鈴鹿サーキットをラップしてきた藤原だったが、最終コーナーを立ち上がると一気にフルスロットル。その瞬間、大げさにいえばマシンだけがずんずん近づいて大きくなり、エンジン音がわずかに遅れてやってくる錯覚に陥った。しかも爆音だから、まるでジェット戦闘機が起こす音速衝撃波、ソニックブームのような感覚だ。「フル加速しない」と聞いていたメディアのカメラマン達も思わず目を丸くしていた。

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 2周目の藤原はさらにパフォーマンスする。メインストレートに戻ってきた藤原はコース中央ではなく、ピットウォールぎりぎりを駆け抜けた。「コンクリートの壁で反響させれば、メインスタンドで見ているファンの方にもH2Rの咆哮を感じてもらえるよね」とは走行後の藤原のコメント。どこまでもファンサービスを徹底する藤原らしい意気なはからいだったが、広報スタッフは肝を冷やしたに違いない。もちろんそのパフォーマンスのおかげでH2Rの持つ計り知れないパワーの魅力を多くのファンが感じることができたはずだ。

 ファンへのはからいはサウンドだけではなかった。マシンが搬入された金曜日の夜、サーキットの闇を引き裂くようなエンジンサウンドが50番ピットから轟いてきた。新品のチタンマフラーが装着されたマシンに気付いた藤原選手が、「ファンにお披露目するなら、きれいなチタンカラーにもこだわるべきでしょ」と急きょイグニッションスイッチを入れ、チタンが真っ赤に灼けるまで熱を入れたのだ。

「航空宇宙学とかガスタービンの最新技術とか、すごいハイテクがぎっしり詰まってるんだよね。デザインだって、ひとつひとつに意味があって細部にこだわって誕生している。でもさ、感じてほしいの。僕がセパンではじめて出会った時に感じたフィーリング『お~、かっこいい』ってうなったのと同じ感覚を。まずはそこからだよね」と藤原選手。

 見て感じて、聞いて感動して、そのサウンドと速さに震えて。この日鈴鹿サーキットを訪れた14000人強のファンは、一気にその感動を手に入れたんじゃないのだろうか。

(レポート:林 海洋 写真:楠堂亜希)

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