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第31回「レースカメラマンのお楽しみ」

 第31回「レースカメラマンのお楽しみ」

 8月、9月とアジアロードレース選手権が日本で開催されました。
 8月はオートポリス、お盆の時期だったので飛行機は高値、宿は混雑。アジアのオーガナイザーさんはマレーシア人が大半なので日本の風習など知らないのでハイシーズン開催。お盆過ぎて、大体帰省やら家族旅行やらで、普段レースを見にいけそうな人たちにも大変ご面倒をおかけしました。主催者に成り代わって御礼申し上げます。
 アジア選手権は、日本で開催でもアジア選手権。パドックはマレーシアやインド、フィリピンなど各国選手が闊歩しますが、なんと金曜は……選手のだれひとり見えなくなるくらいのオートポリス名物の霧、ピエール・フランチェスコ・キリ。

 ライバル同士でも幼い頃からずーっと一緒にレースを続けてきた藤原克昭選手と、玉田誠選手はピットが隣同士、霧の写真を撮るのに2人でなかよくじゃれあってくれました。こんなゆるーい雰囲気で進行するアジア選手権もちろん走行になるとパチンとスイッチはいります。今回の日本ラウンドも、この2人の活躍が目立ちました



藤原克昭選手と、玉田誠選手


<第3戦オートポリス レース1>

 トップが集団でバトル。アジア選手権は周回数が13ラップの超スプリントレース。序盤にトップを奪った藤原克昭選手が2位以下を従えての周回が続き、ほとんど団子のまま最終ラップに、ラストスパートで藤原選手が少し2位以下との差をひろげ、6台が僅差のままチェッカー。藤原克昭選手カワサキのホームコースで今季初優勝!


レース1

レース1
オートポリスレース1。最後まで食い下がった伊藤選手とやっぱり強かった藤原選手。

レース2


<第3戦オートポリス レース2>

 ホンダ勢の巻き返しが1コーナーで炸裂。ダブルウィンを狙っていた藤原克昭選手は後退を余儀なくされる。トップ集団の後方で様子を伺っていた玉田選手が一気にトップに立ち優勝。2位にザムリ選手、3位に小山知良選手が入ったが、小山選手はのちの車検で失格。

オートポリスレース2で優勝の玉田選手。


<第4戦鈴鹿 レース1>

 日本人が優勝を分け合った第3戦から3週間後、鈴鹿サーキットで第4戦が開催されました。
 アジアロードレース選手権は、全チームのバイク、用品全てをコンテナに詰め込んで船で運んでくるのですが、昨年は鈴鹿~オートポリス間をコンテナを陸送したら国内で莫大な輸送費がかかってしまったらしく、今年は海から出直し開催。
 アジア諸国の大半でライブ中継されているアジアロードレース選手権ですが、なんと鈴鹿サーキットでの観戦料金はタダ! 遊園地の入場料でパドックまでOKの太っ腹でした。

 鈴鹿サーキットは、藤原克昭選手、玉田誠選手、ザムリ選手、ザクワン選手など7月末に開催された鈴鹿8時間耐久ロードレースで走り慣れているコースですが、アレは1000cc。アジア選手権の600ccで走るのとは全然違います。それぞれトップライダーの話をきくと、鈴鹿の攻略に苦労している様子もチラホラ。

 決勝当日の鈴鹿は快晴、気温は「8耐か?」っていうくらいの真夏の暑さのなか、レース1がスタートしました。
 今回注目は初ポールの伊藤勇樹選手。若手、23歳のイケメンライダーです。スタートから勢いよく、その後はザクワン選手、玉田選手、藤原選手、小山選手、岩田選手とトップ集団になりました。
 集団になると強いのはレース経験値の高い藤原克昭選手と玉田誠選手の2人。集団のなかでのポジション、かわし方、レース運びが上手いです!
 レースが動いたのは終盤。最終ラップの藤原選手、玉田選手の攻防戦で、藤原選手がしっかりとインを抑えて勝利! 貫禄の今季2勝目、玉田選手は2位、3位には小山選手が入りました。
 藤原選手、千葉や地元から沢山の応援団が駆けつけてくれ、大漁旗まで用意されての盛り上げっぷりはさすがアジアのスターの貫禄!

 表彰台ですが、藤原選手の顔が真っ赤です。レース1は思ったより気温があがり、レース後の選手は熱中症の1歩手前くらいの疲労度でした。


レース1

レース1
レース1。NTSの小山選手と岩田選手。 レース1。藤原選手と玉田選手。暑そうでしょ。

レース1

レース1
鈴鹿レース1表彰台、日本人が独占。 応援してくれる方からの大漁旗!


<第4戦鈴鹿 レース2>

 続いて2レース目、勢いよく出たポールの伊藤選手。途中、ザクワン選手がいったんトップに出ましたが、すぐに奪いかえすと一度も後ろも見ないままゴール。伊藤選手の背後には、スタート失敗した藤原克昭選手が追い上げ、最終ラップで迫っていたのです。2位以下も最終ラップまでもつれこむ展開で、2位藤原選手、3位小山選手。

 
 伊藤選手はA級昇格 初優勝。勝ちを焦るあまり、アジアでも全日本でも転倒が続いていたのですが、この鈴鹿は1度も転倒せず、勢いのままに優勝。あ~あんなにクラッシュキングだったのに、勝っちゃった!
 いつかこういう時か来るんだろうなと思っていた、伊藤選手の優勝には藤原選手も笑顔で祝福。
 表彰台の一番上に立った伊藤選手、いつもと違う眺めだな~と思って撮影しました。
 翌日、伊藤選手が「世界が違って見えます!」って言ったのは、あながちまちがいでも勘違いでもないようです。かつて北川圭一選手が、ワークスからプライベーター参戦となり、KENZで初優勝したときに「久ぶりや~コレが勝ちの味やな~!」としみじみ呟いていたのを思い出しました。あぁ、伊藤選手も勝ちの味を知ってしまったのね。一度覚えたらまたほしくなる禁断の味・・・ 
 そして、第3戦、第4戦ともレース1優勝の藤原克昭選手「ピンピン獲りたかった~」と、またそのうえを行く味、さらにその上、シリーズタイトルの味もご存じです。


レース2

レース2
夏の西日の中で超スプリントの戦い。 最終ラップ伊藤選手、藤原選手、小山選手のバトル。

レース2

レース2
伊藤選手、藤原選手、小山選手の3人とも表彰台の常連ですが、伊藤選手が頂点は初! 第4戦鈴鹿のウィナー2人。クリックすると初優勝の伊藤勇選手に駆け寄って水シャワーをかける藤原選手が。

 若い選手はどんどん先輩を追い越して勝ち上がっていかなければ、頂点も世界もありません。これから何人の選手が違う世界を見て、世界に挑戦していくのかな? と思います。
 カメラマンとしては誰かの「お初」を撮ることはなによりの楽しみなのです。

 アジアロードレース選手権は、今シーズンは残り2戦(4レース)日本人だけでなく、アジア各国の選手も勢いがあります。僅差の争いはまだまだ続きます。


アジアロードレース選手権

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