VFR800F 1,350,000円(4月18日)

★ホンダ VFR800F 車両解説

“ハイテク”スポーツツアラー、VFR800Fがスタイル一新のモデルチェンジ

「VFR」の血統は、1986年4月に発売されたVFRシリーズ、VFR750F、VFR400R、VFR400Zに始まる。1982年のVFシリーズ、VF750SABRE、VF750MAGNA、そしてVF750Fの発売で’80年代のV4エンジン攻勢への口火を切ったホンダが、V4時代の隆盛を決定づけたのがVFRシリーズだった。その後、V型エンジンはレースでの活躍を背景に過激レプリカ時代へと発展していくのだが、それはまた別項にて。

ここでは、VFR(オーバー750)に関連するその後の流れを追ってみると、1998年4月にV型4気筒、781ccエンジンを搭載する「ホンダ VFR」が発売される。「’99年10月より国内で新たに導入される小型二輪自動車の排出ガス規制に適合する排出ガス浄化システムを採用したモデル」と説明されていた。ベースとなったのは世界各地のスーパーバイクレースで活躍していたRVF/RC45のエンジンだったが、スーパースポーツ(当時はレーサーレプリカと称された)とはまた別の、来たるべく新しい時代の要求を先取りするマシンの姿で登場した。

環境の時代の到来だ。VFRの排出ガス浄化システムの切り札として新開発されたのがPGM-FIシステム(電子制御燃料噴射装置)だった。このPGM-FIシステムは、専用にプログラムされたECU(エレクトロニックコントロールユニット)の働きによって、様々な運転状況に応じ理想的な空燃比の混合気を供給する事で、燃焼過程での有害物質の低減を図るというもの。そしてエキゾーストエアインジェクションシステム(二次空気導入装置)も同時に採用し、エアを排気ポートに送り込み排出ガス中の未燃焼ガスHC、COを排気管内で再燃焼させるもので、HC、COの低減を図っていた。

これで分かるとおり、VFRは卓越した運動性能だけでなく、年々厳しくなっていく排出ガス規制に適合する環境性能も兼ね備えた大型ロードスポーツモデルとして’90年代を先取りするマシンだったのだ。その後、2000年1月に三元触媒システム“HEC3”(Honda Evolutional Catalyzing System 3)を採用するなどのマイナーチェンジを受け、さらなる環境時代のハイテクマシンとしての姿を印象づけている。

2002年1月、VFRはフルモデルチェンジを受ける。ホンダのV型4気筒エンジンでは初のバルブ制御システム“V4 VTEC”(Variable Timing & Lift Electronic Control System)エンジンを、基本骨格は引き継ぎながらも剛性の見直しなどが行われたアルミツインチューブフレームに搭載。PGM-FIの更なる熟成やイリジウムプラグの採用などとともに世界最高水準の環境性能を謳うモデルとして登場した。

2004年1月にはカウル類のエッジやシャープなラインを強調、またホイールカラーや車体ロゴも変更するなどのマナーチェンジ。車体色もイメージカラーとして引き継がれてきたイタリアンレッドからデジタルシルバーメタリックへと変更。

2006年2月には、ABSを標準装備するとともにリアサスにプリロードアジャスターを装備。新色のパールコスミックブラックも追加している。カラーといえば、2006年12月にトリコロールイメージのカラーリングを施された「VFR・スペシャル」が限定200台で発売されている。その後、国内での“ハイテクのショールームマシン”の重責は、2010年3月に発売されたVFR1200Fにバトンタッチしていた。

今回発売されたVFR800Fは、2006年発売のモデルをベースにアップトゥデートしたモデルといえ、熟成を図ったエンジンを新デザインのカウル類を備えた車体に搭載している。大きな変更点は、リアフレームを従来のスチール製からアルミ製へと変更、スイングアーム、フロントフォーク、ホイールなども新設計、ユニークなエンジンサイドに配置していたラジエーターを一般的な前面配置へ、マフラーも従来のセンター2本出しを右1本出しとするなど、ほぼフルモデルチェンジといえる変更が行われた。
 

VFR800F。カラーは2色設定。ヴィクトリーレッド
VFR800F。ダークネスブラックメタリック

★HONDA プレスリリースより (2014年4月14日)

スポーツツアラーモデル「VFR800F」の外観を一新し発売

Hondaは、外観を一新し、スポーティーな走行とロングツーリングの快適性を高めたスポーツツアラーモデル「VFR800F」※1を4月18日(金)に発売します。

今回のVFR800Fは、開発コンセプトを「大人のスポーツバイク ~Elegant Sport~」に設定しました。車体の軽量化に加え、空力性能を追求したカウリングや、トラクションコントロールシステムを採用し熟成を図った水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・V型4気筒エンジンなどにより、市街地での扱いやすさとロングツーリングでの快適性をさらに高めています。

スタイリングは、「大人を魅了するエレガントな佇まい」をスタイリングコンセプトとして、シャープなエッジと質感の高さを主張する造形美を追求しました。ボディーは、ラジエーターの搭載をエンジンサイドから前側に移動したことにより、サイドのボリュームを徹底的に絞り込んだスポーティーなイメージとしています。フロントは、シャープな新デザインのカウルにLEDヘッドライトを採用することで、精悍さを際立たせています。

車体・足回りは、リアフレームを従来モデルのスチール製からアルミダイキャスト製に変更。また、スイングアーム、フロントフォーク、ホイールを新設計するとともに、マフラーのレイアウトを右側に一本出しにするなどで、大幅な軽量化を図っています。シート回りのスリム化を図ることで、足着き性に配慮するとともに、シート高を標準仕様より20cm低く設定できる機構を設けるなど、取り回しやすさも考慮しています。ブレーキは、ABSを標準装備しています。

エンジンは、低・中回転域の力強さを向上するために、吸・排気系とバルブタイミングを見直しています。また、一定の回転数で作動するバルブ数を切り替えるHYPER VTECを継承しています。なお、過剰な後輪駆動力を抑えるTCS(トラクション・コントロール・システム)を新たに採用し、安心感のある走行に寄与しています。

装備は、ツーリングで便利なETC車載器とグリップヒーターを標準装備するなどで利便性を高めた仕様としています。

※1 受注生産車。「Honda 二輪ETC標準装備取扱店」で販売します。使用するにあたり、別途セットアップ店にて事前にETCセットアップとセットアップ手数料、および決済後のETCカードが必要となります。

●販売計画台数(国内・年間)
200台
 
●メーカー希望小売価格(消費税8%込み)
1,350,000円(消費税抜き本体価格 1,250,000円)
※価格には(リサイクル費用を含む)保険料・税金(消費税を除く)・登録などに伴う諸費用は含まれておりません
=VFR800Fの主な特長=
 
●スタイリング
ウインドプロテクションと空力性能を追求したフロントカウルやシャープなラインを強調したサイドカウルなど、外観を一新し所有する喜びを高めたスタイリングとしています。また、右側に一本出しとした新デザインのマフラーや、新デザインのホイールも精悍かつ上質なイメージに寄与しています。フロントビューは、ボリュームを抑えたカウルに新たにLEDヘッドライトを採用し、VFR1200Fから継承したX字型のデザインを表現することでVFRの個性を際立たせています。
リアビューも、VFRの個性を演出するために、LEDのテールランプ、ストップランプを装着した新形状のコンビネーションランプを採用。また、テールランプは、灯火器中心から左右方向に光が広がる「ライン発光」として上質感を高めています。
カラーリングは、VFRシリーズ伝統のシンボルカラーのヴィクトリーレッド、都会的で引き締まったイメージのダークネスブラックメタリックの2色を設定しています。
●車体・足回り
フレームは、従来モデルのアルミツインチューブを継承しながら、リアフレームには軽量化に寄与するアルミダイキャスト製を新たに採用。リアフレームは、タンデム走行や荷物の積載にも考慮し剛性の最適化を図っています。スイングアームは、VFRシリーズのアイデンティティである片持ち式のプロアームの形状を一新して採用。アーム部は、「やぐら型」とすることで、ねじれ方向の剛性バランスを最適化することで、高速巡航時の安心感とワインディングでの軽快感を両立したハンドリングに寄与しています。
新開発のフロントフォークは、アウターチューブをアルミの削り出しとし、アルマイト加工を施した2ピース構造にすることで、質感の高い外観を実現しています。リアサスペンションは、プロアームにプロリンクを組み合わせることで、しなやかで路面追従性に優れた走行フィーリングとしています。新デザインのアルミキャストホイールは、ファインダイキャスト製法の中空ホイールで、スポーク部が交差する形状としています。正面から見て、スポークがリムに斜めに接する形状にすることで、直進時の路面振動をしなやかに受け止め、コーナリング時には高い剛性感を発揮し、乗り心地の良さとコーナリング時の安定感に寄与しています。
ライディングポジションは、好みや体格に合わせて、シート高を2段階に調整できる機構を採用しています。車載工具を使用するなどで、標準のシート高809mmから20mm低い789mmに変更を可能としています。ハンドルの位置も、別売のオプションに設定したハンドルアジャストプレートを追加することで、グリップの位置を上方に13.5mm、手前に6.5mm変更可能とすることで、ユーザーの好みに考慮した設計としています。
●エンジン
低・中回転域から高回転域まで力強い出力特性の水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・V型4気筒781cm3は、特に、低・中回転域で力強いパワーフィーリングの向上を図っています。これには、エアクリーナー内のファンネル管長を長くし、吸気脈動を利用した充填効率の向上を図ることで実現しています。排気システムは、軽量化と効率化を追求した一本出しタイプを採用しています。エンジン回転数に応じてバルブ数を切り替える独創のバルブ制御機構HYPER VTECを継承。低・中回転域では2バルブ作動とし、高速巡航時の燃費性能に貢献しながら力強いトルクとリニアなレスポンスを実現。高回転域では4バルブ作動として、V4エンジンならではの力強いフィーリングとしています。
TCSは、スイッチONの状態では、前・後輪の回転差を感知し、所定のレベル以上となった場合、ECUが後輪のタイヤがスリップしたと判断し、燃料噴射の制御により後輪駆動力の最適化を行い、安心感のある走行に寄与します。
●その他の装備
・ギアポジション表示と燃費計を備えたメーター
・ウインカーオートキャンセラー
・シフトペダルの操作のみでシフトアップがおこなえるクイックシフターをオプション(別売)として設定

★主要諸元

車名型式 EBL-RC79
VFR800F
発売日 2014年4月18日
全長×全幅×全高(m) 2.140×0.750×1.210
軸距(m) 1.460
最低地上高(m) 0.135
シート高(m) 0.809/0.789
車両重量(kg) 242
乾燥重量(kg) -
乗車定員(人) 2
燃費消費率(km/L) 28.7(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)※3
19.6(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)※4
登坂能力(tanθ) -
最小回転小半径(m) 3.2
エンジン型式 RC79E
水冷4ストロークV型2気筒DOHC4バルブ
総排気量(cm3) 781
内径×行程(mm) 72.0×48.0
圧縮比 11.8
最高出力(kW[PS]/rpm) 78[106]/10,250
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 75[7.6]/8,500
燃料供給装置形式 電子制御燃料噴射装置[PGM-FI]
始動方式 セルフ式
点火方式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑油方式 圧送飛沫併用式
潤滑油容量(L) -
燃料タンク容量(L) 21
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.846
2速 2.062
3速 1.578
4速 1.291
5速 1.111
6速 0.965
減速比1次/2次 1.939×2.687
キャスター(度) 25°30′
トレール(mm) 95
タイヤサイズ 120/70R17M/C 58W
180/55R17M/C 73W
ブレーキ形式 油圧式ダブルディスク
油圧式シングルディスク
懸架方式 テレスコピック式
スイングアーム式(プロアーム)
フレーム形式 ダイヤモンド(アルミツインチューブ)

※3 燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
※4 WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。