Today(AF61)以来、12年ぶりとなる新開発スクーターとして「Dunk(ダンク)」が登場。2月20日より発売される。気軽に上質な移動を楽しんでもらいたいという想いによって定められた開発コンセプトは「プレミアムスニーカー」。若者をターゲットに、スクーターを活用している状況や求めるデザイン、使い勝手など、徹底的にリサーチされたという。果たしてその仕上がりは?
■報告:高橋二朗 撮影:徳永 茂
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今も日本の二輪市場の半分は原付一種
カタログに「Mobility Gadget,Dunk.」とキャッチがある。”小さく気の利いた乗り物”という意味だろう。少なくともホンダ原付スクーターの代名詞的存在でもある「Dio」とは一線を画する乗り物のようだ。正に今風の言葉でホンダのニューモデルを言い表していると思った。
新型スクーター「Dunk(ダンク)」は2002年の「Today」以来12年ぶり、エンジンから車体まで刷新された新開発の50ccファミリー・スクーターで、青山一丁目の本社ビルで発表会が行われるなど、ホンダの並々ならぬ意気込みを感じるモデルである。
普通免許でも運転できることで、多くの人が簡便な乗り物としてその利用価値は高い50cc以下の原付一種(原一)。公共交通機関の少ない地域では軽自動車と共に重要な移動手段にもなっている一方、都市部での四輪を主体とした交通環境では30km/hの法定速度、二段階右折といった制限が多く、不便を感じることも事実である。
そんな原一、ピークだった1982年の国内出荷台数は何と278万5000台! 1992年に100万台を切り、2008年には排ガス規制によるラインナップの減少で29万6000台、2010年には23万1000台にまで落ち込み、ピーク時の12分の1となり、その後は横ばいの傾向にある。
原一がそんな状況にあることに加え、二輪業界で原付二種(原二)免許の容易化を訴えている中、敢えて原一のオール・ニューモデルを投入する理由は? ホンダの考えは「国内の道路環境や通勤・通学などの使用環境を考えると、原二がミニマム・モビリティとして効率の良い排気量帯と考えているが、まだまだ原一の保有ユーザーを含めて潜在需要があることから、今回のダンクの投入に至っている。使い勝手の良い利便性の高い原一、原二の普及こそが『モビリティ全体の活性化』に寄与できるもの」とのこと。実際、横ばいが続いているとは言え、2013年の全銘柄・総出荷台数42万台の内、半分以上の23万9000台は原一なのである。
そんな状況の中、発表されたダンクは、若者の需要減少に歯止めをかける、という任務も背負っている。16歳から乗ることができるミニマム・コミューターとして、若者の使い勝手をとことん追求した仕様装備としているのがポイントだ。昨年の東京モーターショーにも参考出品され、若者からはもちろん、幅広い層から注目を浴びたとか。
ライダーの身長は173cm。コンパクトな車体ながらロングシートのおかげで着座位置の自由度があり、窮屈感はない。燃料タンクを下にレイアウトするフロアの高さも気にならない。 |
ビギナーからベテランまで幅広く支持されそうな仕上がり
2月20日より発売となるダンクを試乗させていただく機会に恵まれた。見た目はとてもコンパクト。シンプルなスタイルはとっつきにくいところがなく、前後タイヤ間にバイクとしての要素がギュッと凝縮された感じ。
しかし、ダンクの目玉はエンジンと言えるだろう。PCXなど、世界のホンダ125~150ccクラス・スクーターの主力エンジンとなっている「eSP」のテクノロジーをそのまま50ccに凝縮した、今や日本国内専用という贅沢なユニットだ。尚、このユニット、水冷としながら従来の空冷エンジンに対し約11%の軽量化が図られているのも特筆。
イグニッションをONにし、スタータースイッチを押す。”スルスルスルッ…”っと、エンジンは独特の目の覚まし方をする。”キュルキュル”という甲高いクランキング音は発生しないので、深夜早朝のスタートもさほど気を使わない。PCXなどでも体験済みだが、セルモーターと発電機の役割をもつACGスターターの心地よさを改めて実感する。
2ストロークがスタンダードエンジンだった時代を知っている身として、2007年の排出ガス規制以降の原付スクーターの”牙を抜かれた感”は正直言って否めない。が、ダンクは予想を裏切って力強かった。法定速度30km/hまでのスタートダッシュはもちろん力強いが、その後の速度の乗りの速さ、伸びの良さも感じる。
ある程度水温が上がるとアイドリングストップも作動可能に。信号待ちなどで停車し、数秒後の絶妙なタイミングで訪れる静粛、コイツは一度味わうと病みつきだ。「ジョルノ クレア」から始まり「クレア スクーピー」以来となる原一クラスのアイドリングストップ機構。今回のダンクをきっかけに、もっと多くの人にこの機構の心地よさを体験してもらいたいものである。
ダンクはエンジンのみならず、しっかりとした車体にも感心させられた。フレームは今までのモノ・アンダーボーンからダブル・アンダーボーンに。フロントには油圧ダンパーのフォークを採用することで、今までの原一スクーターのイメージを脱却したしっとり感、落ち着き感をもたらしている。若干、フロントに立ちの強さを感じたが、これは初めてバイクに乗る人でも不安にならないよう、敢えて施した安定性を狙ったセッティングだとか。
コンパクトな車体とは裏腹、意外や大容量のシート下スペースをはじめとするユーティリティなども徹底的に考慮されたダンク。車両価格以上の内容が備わっていると感じた。若い人をメインターゲットとしているモデルなので、まずは若者から乗ってもらいたい1台。若い人が乗る姿こそバイクが輝いて見えるし、そんな姿は”類は友を呼ぶ”と思うから。もちろん、幅広い層に支持されそうな仕上がりで、ベテランライダーのセカンドバイクにも最適。原付スクーターで”初心”のワクワク感や、青春の淡い思い出が蘇ること必至です!
新開発となった49cc水冷4ストロークOHC単気筒エンジンは、125/150クラスで展開中「eSP」ユニットの低フリクション化といったテクノロジーを踏襲。低燃費と余裕ある動力性能を実現。 | シート下のラゲッジボックスは23Lの大容量。フルフェイスのヘルメットを収めつつ、さらに小物の収納も可能。かつての2ストオイル注入口を思わせる場所は冷却水の注入口となっている。 |
ヘッドライトをボディにマウントしたシンプルなフロントマスク。バスケットのオプション設定はない。 | 車体色によって色も異なるアルミヘアライン調のサイドモールがアクセントに。ロングシートは背負ったバッグが載せられるよう配慮。 | テールにLEDランプを採用。ブレーキ時は点灯面積が増えるので後続車に対する視認性も高い。 |
ボディストライプやカラーシートなどを採用したダンクのカスタマイズコンセプトモデル。アフターパーツも今後リリースされる予定。 | 50~150の日本国内eSPエンジン搭載車フル・ラインナップ。今後、50ccのeSPエンジン搭載車も増えていくという。 |
■Dunk主要諸元 ■型式:JBH-AF74 ■全長×全幅×全高:1,675×700×1,040mm■ホイールベース:1,180mm■最低地上高:110mm■シート高:730mm■燃料消費率:75.3 km/L(国土交通省届出値 30km/h定地燃費値)56.6 km/L(WMTCモード値 クラス1)■最小回転半径:1.8m■車両重量:81kg■燃料タンク容量:4.5L■エンジン種類:水冷4ストロークOHC単気筒■総排気量:49cm3■ボア×ストローク:39.5×40.2mm■圧縮比:12.0■燃料供給装置:PGM-FI■点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火■始動方式:セルフ式(キック式併設)■最高出力:3.3kw[4.5PS]/8,000rpm■最大トルク:4.1N・m[0.42kgf]/7,500rpm■変速機形式:無段変速式(Vマチック)■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/機械式リーディング・トレーリング■タイヤ(前・後):90/90-10 50J・90/90-10 50J■懸架方式(前・後):テレスコピック式・ユニットスイング式■車体色:マットアーマードグリーンメタリック、ポセイドンブラックメタリック、パールジャスミンホワイト、アーベインデニムブルーメタリック、キャンディーノーブルレッド、マットギャラクシーブラックメタリック■メーカー希望小売価格:208,950円(消費税抜本体価格 199,000円) |
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