HONDA CRF250R

60歳。2013年型CRF450Rを所有する還暦ライダーMr.T“タケさん”鈴木武仁。2012年にCRF250LでBAJA1000に出場している。250のインプレから。

 大きさは今までとそれほど変わらないはずなんだが、乗っていると不思議なくらいコンパクトに感じるんだ。すべてが自分の股の下で動いている感じ。それとギアのつながりがいいね。450と違って250はシフト操作の回数が増えるんだけど、どのギアでもエンジンパワーがスロットル操作に気持よくついて来て、気持よく走れた。乗っていて「ああ、これはいいな」と思ったよ。自分が上手くなったような気にさせる。速く走らせていると感じさせる楽しさがあった。このコンパクト感とギアの繋がりは最高だ。動きが軽いからジャンプも思いっきり行ける。
 
 ハンドリングもいいね。ワダチに入って行く時に、ちょっとズレたと思った時に、ステップ荷重だけでスーッと動いて修正できた。タイトコーナーでもフロントの接地感がとても良くて、フロントを中心にテールがスムーズに曲る感じ。ギャップやワダチでもフロントがあまりとられないんだね。だから上手く曲がれる。両タイヤがズルズル滑ることがなかった。開発陣はいい仕事をしたよ。これはとても気に入った。買っちゃおうかな。
 
(CRF250R試乗:鈴木武仁)

酷使に酷使を重ねた歴戦のCRF250Xを所有するエンデューロ・マニア、濱矢文夫。次期主力マシンにオレンジ色のモデルを導入したとかしないとか。

 今回の目玉はこのCRF250Rである。なんたってフルモデルチェンジだ。
 
 見た目から大きく違うのに気がつくだろう、450と同じイメージの外装になった。エキゾーストマフラーがマスの集中を狙った2本出しなのもそうだ。フレームは第6世代と呼ぶヘッドパイプとメインパイプの接合部を下方に持ってきたもの。燃料噴射装置を使うエンジンは吸排気ポートの形状変更や圧縮比を上げる(13→13.5)などでピークだけでなく全域でパワーを底上げ。とにかく何から何まで新しい。気になるフロントフォークは450のようにエアサスペンションではないけれどセッティングを変更。リアはスイングアームやショックユニットから新設計。
 
 私は最近までエンデューロ、クロスカントリーレースでCRF250Xを使っていたこともあるし、450と違いこれまで何度かCRF250Rにも乗ったことがあるので、450より気軽な気持ちで乗れた。乗ってすぐに感じたのは使いきれる楽しさ。私でもレブリミットまでエンジンを回して走れること。特に低中回転に厚みが出て、かつ特性がフレンドリーで、コーナーからの立ち上がり加速がとても気持ちいい。誰もが常に高回転域をキープしながら乗れる訳ではなく、コース状況やレース状況によっては回転がそれほど上がっていないところの扱いやすさとパワーが速さに繋がるのはオンロードもオフロードも一緒だ。
 
 コーナー、ジャンプ、全てで車体はこれまでより小さく感じる動き。高いスタビリティ。コーナーリングの軽快性だけでなく安定性もこれまでより確実に向上している。無駄な動きが少なくなって、自由自在感がより高まった。私のレベルだと恐る恐る乗った450より、使いきれるこちらの方が確実に速く走れる。もともとCRF250Rはライバルに比べて乗りやすい特性だと言われてきたし、私自身もこれまでそれを感じていた。今回のモデルチェンジはそれが更に進化しながら、パワフルさも手に入れた。
 
(CRF250R試乗:濱矢文夫)

2014年モデルのエンジンは、全域でトルクフルなパワー特性を狙った新設計ピストンと新燃焼室形状をはじめ、混合気の充填効率を高める吸気通路形状の最適化、低中速のパワー感とスロットルレスポンスを両立させる“デュアル・ステージ・フューエルインジェクション”と呼ばれる1サイクルで2度噴射させる新制御方式などを採用した。新形状のピストンにより圧縮比も13.2から13.5へアップ。ピストンスカートにはモリブデンショットを施している。
フロントフォークは従来モデルをさらに熟成し、新設計の車体に合わせたセッティングを施している。マスの集中と共に軽快感を最大限に引き出した車体レイアウトとマッチング。 低重心化による車体の左右の倒し込み時の軽快感と、ギャップ通過時等のピッチング低減を実現するため、リアクッションの全長を14.5mm短縮し、車体のより低い位置に取付けて低重心化を図っている。

マスの集中化のため、全長を短縮したデュアルマフラーを採用

第6世代となるアルミフレームは、前輪の接地感と後輪のトラクション向上を主眼として開発された。またマスの集中化を最大限に引き出すためデュアルマフラー形式を採用、エキゾーストの分岐部内面には排気圧を最適化するため整流板を設けている。リアフレームもデュアルマフラーに合わせて新設計。ロール慣性で0.5%、ピッチング慣性、ヨー慣性もそれぞれ1%以上低減させているという。 スタイリングは、ジャンプ中でもより扱いやすく必要最小限の外装部品とすることが求められたという。“マンマキシマム・メカミニマム”(MM)思想によるダイナミックで自由なライディングアクションに対応。
■CRF250R 主要諸元
■型式:ME10■全長×全幅×全高:2,181×827×1,271mm、ホイールベース:1,489mm、最低地上高:322mm、シート高:951mm、車両重量:106.2kg、燃料タンク容量:6.3L
■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ、総排気量:249.4cm3、ボア×ストローク:76.8×53.8mm、圧縮比:13.5、燃料供給装置:PGM-FI(スロットルボアφ46mm)、点火方式:フルトランジスタ式デジタル点火、始動方式:プライマリーキック式、、変速機形式:常時噛合式5段リターン
■フレーム形式:アルミツインチューブ、ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・油圧式ディスク、タイヤ(前・後):80/100-21 51M・100/90-19 57M、メーカー希望小売価格:735,000円
 

HONDA CRF450R

2014年モデルのCRF450Rは熟成の年に。パワーユニットでは、シリンダーヘッドの吸排気ポートの形状見直し、“デュアル・ステージ・フューエルインジェクション(1サイクル2度噴射制御)”の採用、マフラー分岐部分の形状見直しと左側マフラーエンドパイプの径変更により、スロットル低開度領域と、高回転領域の出力、スロットルレスポンスの向上が行われた。足周りでは、フロントフォークの伸び側センターロッド構造変更、伸び側ピストン形状の変更、位置依存減衰力特性の変更、そしてエア圧の変更が行われた。リアクッションも車両に進化に合わせて減衰力セッティングの最適化を図っている。

 俺が乗っている2013年モデルよりやっぱり進化しているよ。サスペンションの動きがいい。前のは場合によってはフロントサスが入ったら入りっぱなしになる傾向があって、2014年モデルはそれを感じることがなかった。
 
 エンジンは流石に450だからパワフルで性能をフルに使いこなせるライダーじゃないからね。誰もがスロットルを全開にして乗れるものじゃない。それでも気がついたことはパワーデリバリーが変わったことかな。2013年モデルでコーナーの立ち上がりでスロットルを開けていくと、リアタイヤが逃げて行く場面で、2014年モデルは逃げない。派手に流れて立ち上がるとカッコイイけど、遅いんだな。逃げないから車体が前に進む。

 上手な人は元気がないように感じるかもしれないけれど。俺レベルのライダーだと結果的に速く走れる。このままでもとても軽くていいんだけれど、ワガママ言うならもっと軽くしてくれてもいいな。
 
(CRF450R試乗:鈴木武仁)

 フルモデルチェンジで大きく変わった2013年モデルにも昨年の同じ時期にこの場所で乗った。2014年モデルは2013年モデルを踏襲しながらリファインといったところ。
 
 エンジンは力に厚みを増やしながら、高回転域での出力の伸びと、スロットルをあまり開けていないところでの特性をよりフラットに変更されていると説明された。さすがに450もあるから、パワフルで最初は積極的にスロットルを開けるのを少しためらったことを正直に話そう。パワフルだから各ギアでの守備範囲が広くて、ギア・チェンジの回数が少ないオートマチック感覚。とにかく右手を捻ればいつでもどこでもドカンと前に進む。
 
 しかし不思議と怖さはない。「速く走っていないからだ」と言われると、その通りだが、しょぼい走りで遅いながらも、乗っていてちゃんと楽しめた。まずオフ走行ビギナーが乗れるものではないけれど、突然、低い技量のコントロールから外れて、獲って食われるようなことはない。スロットルを開ければドカンと前に出るパワーがあるけれど、パワーの出方に唐突なところはない。立ち上がりで加速体制に入っても、大きくパワーが盛り上がらずに、フラットだから、リアタイヤが急に横へスライドして慌てることはなく、思い通りにグイグイっと前に出る。
 
 2013年モデルで感じたコンパクト感はそのままで、コーナーもさっと思い通りに向きを変えられた。流石に250と比べると重さを感じるのは当たり前だけど鈍重ではない。フットワークは軽い。2013年モデルで話題になったフロントフォークエアサスペンションや、リアショックユニットにも手が入って減衰特性が最適化された。確かにいろんな場面で、路面追従能力が上がっているように感じた。私のモトクロスコースにおいての技量はこの1年でそれほど進化していないと思うから、それは勘違いではないと思う。フープスやギャップも、自分なりに積極的に行けた。2014年モデルのCRF450Rは『熟成』という表現が似合うもの。
 
(CRF450R試乗:濱矢文夫)

■CRF450R 主要諸元
■型式:PE05■全長×全幅×全高:2,191×827×1,271mm、ホイールベース:1,492mm、最低地上高:330mm、シート高:953mm、車両重量:111.0kg、燃料タンク容量:6.3L
■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ、総排気量:449.7cm3、ボア×ストローク:96.0×62.1mm、圧縮比:12.5、燃料供給装置:PGM-FI(スロットルボアφ46mm)、点火方式:フルトランジスタ式デジタル点火、始動方式:プライマリーキック式、変速機形式:常時噛合式5段リターン
■フレーム形式:アルミツインチューブ、ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・油圧式ディスク、タイヤ(前・後):80/100-21 51M・120/80-19 63M、メーカー希望小売価格:871,500円

HONDA CRF125F

 CRF250R/450Rのいわゆる本格的モトクロッサーも気になっていたけれど、実は今回の試乗で最も注目していたのがこれだった。前モデルであるCRF100Fにはこれまで何度も乗ったことがあり、それがとても楽しいバイクだったからだ。
 
 小さくて足つき性が良く、パワフルではないけれど、極低速から粘るエンジンは一見ダメそうな急な上りだってトコトコと登っていける。CRF100Fは、初心者だけでなく、経験者が乗っても笑顔で操れる優れた性能を持っていた。排気量が拡大してパワーに余裕が出たからか、100の5段リターンから4段リターンになっている。
 
 デザインが兄貴分のCRF250R/450Rに似たものに大きく変わったが、新型CRF125FのボディサイズはそのCRF100Fとほぼ同じだ。フロント19インチホイール、リア16インチホイールなのも同じ(タイヤサイズも)。シート高は10mm高くなっているけれど、オフロード専用モデルとしてバツグンの足つきというのは変わらない。
 
 これはCRF100Fのエンジンを、ただ単に排気量を拡大しただけではない。車体から足廻り、多くの部分でブラッシュアップされている。エンジン以外ではフロントのブレーキがドラムからディスクに変わったこと。なんてったって嬉しいセルスターターが装着されたことが大きなトピックだ。
 
 当たり前だけど、空冷単気筒エンジンはCRF100Fより明らかにパワフル、トルクフルで速い。誰でも、どんな時でも扱いやすいフラットなトルク特性は後輪に伝わる出力のコントロールが簡単。極低速での粘りも磨きがかかった。
 
 正立フロントフォークは太くなって、プロリンクのリアサスペンションに使われるショックユニットも性能が上がっている。これまである程度オフを乗れる大人が速度を上げて走るとどこか頼りなかった足廻りは俄然しっかりして、攻め込める。
 
 CRF125Fは、CRF100Fが持っていた全体のバランスの良さ、面白さの、どれかを足してどれかを引いたのではなく、その全てをレベルアップした感じ。これぞまさしく正常進化。
 
 定評があったものを変にイジらず、あくまでも入門用モデルとして使われることが多いので、バランスを大切にしながら増大、この出来具合にはとても共感した。好きだったバイクがもっと好きなバイクに変身。技量の幅、体型、カテゴリーを乗り越えて遊べるものに仕上がっている。FUNバイクとして、走りの懐が深くなった。
 
 いやぁ~、操るのがめっちゃ楽しいわ。 小柄な女性ならモトクロスコースだけでなく、エンデューロレースでも強い味方になるだろう。
 
(CRF125F試乗:濱矢文夫)

125cc最適設計の軽量コンパクトエンジンは、バルブタイミングを低中速域の充填効率重視に設定、エンジン特性を支える新設計エアクリーナーとマフラーを採用。
フロントにはインナーチューブ径φ31mmのテレスコピックサスを採用。油圧式フロントディスクブレーキも採用。 リアは、エア室とガス室がフリーピストンで分離されている、分離加圧式リアサスペンションを採用。これにより、オイルの乳化(オイルに空気が混合し白濁する状態)を低減し、リアクッションの性能安定性を図っている。プロリンク摺動部にはニードルローラーベアリングを採用。
■CRF125F 主要諸元
■型式:JE03■全長×全幅×全高:1,860×770×1,075mm、ホイールベース:1,255mm、最低地上高:265mm、シート高:785mm、車両重量:124.9kg、燃料タンク容量:4.3L
■エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ、総排気量:124.9cm3、ボア×ストローク:52.4×57.9mm、圧縮比:9.0、燃料供給装置:PD B4Cφ20mm、点火方式:CDI式バッテリー点火、始動方式:セルフ式(キック式併設)、変速機形式:常時噛合式4段リターン
■フレーム形式:ダイヤモンド、ブレーキ(前・後):油圧式ディスク・機械式リーディングト・レーリング、タイヤ(前・後):70/100-19M/C 42M・90/100-16M/C 51M、メーカー希望小売価格:299,250円


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