最後はしっかりした言葉で締めくくった春菜ちゃんの目は、オートレース選手としての覚悟と未来を目指していました。
人生の選択というものは、もっと明るく晴れ晴れしいものであってほしいのだけど、誰が25歳の女性にこれだけの荷物を背負わせてしまったのでしょうか……
4度のレディスチャンピオンに輝き、レディスモトクロスを代表する 選手になり、みんなの憧れでありつづけた益春菜。
生活のほとんどをモトクロスに捧げ、アメリカのレースに挑戦する夢を捨ててまで、オートレースに転向しなければならなかった現実はあまりに も厳しい。
モトクロスファンであれば、いつまでもモトクロスの世界で頑張ってほしいと思うものの、レディスモトクロスの抱える問題は大きく、選手としての契約金、賞金も低く、メーカーの保証もない。どれだけ活躍していても、内情はプライベーターの選手と変わらないのが現実だ。夢も大事だけど、お金がなければ何にもならない。
そのため、春菜ちゃんも料理の専門学校に通って、普通の就職活動も続けていました。
その就職先が、オートレース。オートレース候補生としての入所後の個別インタビューで見せた涙は、モトクロスが大好きで、今までモトクロス一筋に打ち込んできて、それでもモトクロスと決別をしなければならなかった益春菜の、抑えきれないモトクロス愛があふれだした瞬間でした。