MBHCC E-1
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西村 章

スポーツ誌や一般誌、二輪誌はもちろん、マンガ誌や通信社、はては欧州のバイク誌等にも幅広くMotoGP関連記事を寄稿するジャーナリスト。訳書に『バレンティーノ・ロッシ自叙伝』『MotoGPパフォーマンスライディングテクニック』等。第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した『最後の王者 MotoGPライダー・青山博一の軌跡』は小学館から絶賛発売中(1680円)。
twitterアカウントは@akyranishimura

第9戦 ドイツGP ザクセンそれもこれも

 3週連戦のみっつめ第9戦イタリアGPが終了し、これで2012年シーズンのMotoGPはちょうど全スケジュールの半分を終えたことになる。サマーブレークにまだ少し間があるけれども、計算上はここが折り返し地点。Moto2クラスとMoto3クラスは次のU.S.GPがお休みなので、まさに今回で前半戦が終了。その節目となるレースで健闘したのが中上貴晶だ。

 プレシーズンテストではトップタイムを記録してダークホース的存在とも目されたが、開幕してみると、第2戦スペインGPで2番グリッドから5位で終えるリザルトを残したものの、以降はなかなか思いどおりに走れず、ポイントを獲得できるかどうかという苦しいレースが続いていた。そこで今回は急遽、全日本時代の恩師HARC-PROの本田重樹監督が急遽、応援にやってきた。本田氏は「前日まで鈴鹿で8耐のテストをやってたんで、時差ボケでフラフラだよ」と苦笑しながらも、セッションが始まるとコースサイドへ出て中上の走りをチェックし、走行後にはアドバイス、とムジェロサーキットを動き回った。中上は予選で10番手を獲得し、「ここ数戦はレース後半になってもタイムを落とさずに走ることができているので、課題はむしろ序盤にどこまでタイムを上げて行けるか」と語ったが、決勝レースではその課題を見事に克服して見せた。

 スタートを決めて先頭集団につけると、6周目にはついにトップに浮上。2008年と2009年は125ccクラスに参戦し、今年Moto2へ復帰した中上のグランプリ全43戦中で、先頭を走行したのはこれが初めて。その後、トマス・ルティに前を奪われた後もトップグループで走行を続けたが、最後はフロントタイヤがいっぱいいっぱいでチャタリングなども発生し、7位でチェッカー。

「昨日言っていた序盤の課題はクリアできた。最後に少し順位を落としてしまったのは悔しいけど、それでもレースは100パーセント楽しめました。ベストリザルトではないけど、自分もチームもトップで戦える手応えを掴んだ意義のあるレースだと思う。今回の結果は90パーセント以上、(本田)社長のおかげ。今回掴んだものを離さずに、サマーブレーク後は一戦でも早く表彰台にあがりたいですね」

 日本でレースを盛り上げるためには、やはり日本人の活躍が第一なので、中上には今後もこの調子で、ぜひとも毎戦トップ争いを繰り広げてほしいものである。がんばれ、タカアキ!!

第9戦イタリアGP 第9戦イタリアGP
チャンピオン争いはともかく、後半戦は毎戦の表彰台争いを期待したい。

 さて、イタリアGPといえばシーズン中で最も盛り上がるレースである。パドック内でかなりの割合を占めるイタリア系チームのホームGPで、チームスタッフはゲストやらスペシャルイベントやらなんやかんやでてんてこ舞いになる。発表ごとも多く、たとえばレースが始まる前日の木曜日はこんな具合。

16:30 アルパインスターズがホルヘ・ロレンソのスペシャルヘルメットとウェアを発表。
17:00 定例事前記者会見。出席選手:ペドロサ、ロレンソ、ストーナー、ドヴィツィオーゾ、ロッシ
17:45 サンカルロ・ホンダ・グレシーニが、マシンのカラーリング変更発表会見
18:15 HRC副社長中本修平囲み会見
19:00 ヤマハ・ファクトリー・レーシングの新スポンサー発表会見
……等々、あわただしいことこのうえない。

第9戦イタリアGP 第9戦イタリアGP
毎年恒例。レースが終わると観客がコースに大挙してなだれ込む。 どれほど苦戦していても、出待ちのファンは引きもきらない。

 それにしても今回は観客数が少なかった。金曜や土曜の段階でも、コースサイドのテントやキャンパーなどは例年よりもまばらな様子がハッキリと窺えた。イタリア人ジャーナリストたちと雑談していても「やっぱ、不景気だからなあ……」という言葉が彼らの口からついて出る。スペインの次はイタリアか、と言われるくらいに同国の経済は深刻な状況にあるようだが、今回の観客動員数の少なさはそれだけが要因ではないだろう。やはり、スーパースターのバレンティーノ・ロッシが活躍していない、ということが大きいように思える。昨年のドゥカティ初年度も苦戦が続いたが、それでもまだ移籍から日が浅いこともあって、ファンは期待をなくしていなかったように思う。それが一年経っても一向に明るい兆しが見えず、さらには入場券も日曜の一日券が100ユーロ、という金額では、観に行こうという気が萎えるのも、まあ、わからないではない。昨年の動員数は、三日間総計で127,102人(日曜:83,748人)。今年は、三日間総計で88,714人(日曜:64,165人)。今年は全体的な傾向として昨年比マイナスという会場が多いけれども、この落ち込みはちょっとすさまじい。

 土曜日の予選で、MotoGPフロントロー+CRT最上位+Moto2ポールポジション+Moto3ポールポジション、のすべてがスペイン人であったことも、イタリア人の凹みにさらに拍車をかけたような気がしないでもない。一方のスペインは当然ながら大喜びで、「UEFAユーロ決勝の再現だあ」と騒いでおりましたけれども。

第9戦イタリアGP 第9戦イタリアGP
恒例のムジェロスペシャルヘルメット。予選で苦戦し、5位フィニッシュ。 課題の多いマシン開発に、はたして何を思う……。

 この凹みを払拭するにはロッシの復活が最も手っ取り早いのだけれども、現状はというとどうにもこうにも苦しそうである。レース後の月曜に行われた合同事後テストでも、ロッシはECUの問題で軽く転倒。安全性の検証のために彼のテストはそこで終了。計画していた車体は確認できずじまいとなった。このような状態では、次戦のU.S.GPラグナセカに向けて投入する予定のエンジンがどこまで戦闘力アップを果たしているかは、「??」というのが実情だろうか。

 一方のホンダ勢は、首位を快走するロレンソになんとしてでも歯止めを掛けるべく、当初は2013年用として開発していたRC213Vを事後テストに投入。ペドロサは好感触を得た模様で、次のラグナセカはこのマシンで走行。一方のストーナーは新エンジンと現行の車体という組み合わせになる模様だとか。ストーナーといえば、次戦がコークスクリューの走り収めである。どんな走りを披露してくれるのか、楽しみにするといたしましょう。というわけで、また次回。

第9戦イタリアGP 第9戦イタリアGP 第9戦イタリアGP
タイヤがワークせず、思うようなマシンにも仕上がらず大苦戦。 フリープラクティスから圧倒的な安定感で、決勝も独走勝利。 この3連戦は3戦連続表彰台。ファクトリーの椅子が近づいた??
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チームの地元で今季最高位の4位。監督のルーチョも大喜び。 チーメカのR・フォルカダとヤマハ中島氏に不安な表情はなし。 今回は万が一の場合を考慮して耐熱構造のリアタイヤも準備。
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「どやさどやさ」という今回のタイトルは、このおねいさんたちに掛けたわけではありません。
■第9戦 イタリアGP
7月15日 ムジェロ・サーキット 晴
順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #99 ホルヘ・ロレンソ ヤマハ・ファクトリーレーシング YAMAHA
2 #26 ダニ・ペドロサ レプソル・ホンダ・チーム HONDA
3 #4 アンドレア・ドヴィツィオーゾ ヤマハ・テック3 YAMAHA
4 #6 ステファン・ブラドル LCRホンダ HONDA
5 #46 バレンティーノ・ロッシ ドゥカティ・チーム DUCATI
6 #35 カル・クラッチロー ヤマハ・テック3 YAMAHA
7 #69 ニッキー・ヘイデン ドゥカティ・チーム DUCATI
8 #1 ケーシー・ストーナー レプソル・ホンダ・チーム HONDA
9 #8 エクトル・バルベラ プラマック・レーシングチーム DUCATI
10 #19 アルバロ・バウティスタ ホンダ・グレッシーニ HONDA
11 #11 ベン・スピース ヤマハ・ファクトリーレーシング YAMAHA
12 #14 ランディ・デ・ピュニエ アスパーチームMotoGP ART(CRT)
13 #41 アレックス・エスパロガロ アスパーチームMotoGP ART(CRT)
14 #77 ジェームス・エリソン ポール・バード・レーシング ART(CRT)
15 #54 マティア・パシーニ スピード・マスター ART(CRT)
16 #22 イバン・シルバ BQR BQR-FTR(CRT)
RT #5 コーリン・エドワーズ フォワードレーシング SUTER(CRT)
RT #68 ヨニー・エルナンデス BQR BQR-FTR(CRT)
RT #9 ダニロ・ペトルッチ イオダ・レーシングプロジェクト IODA(CRT)
- #51 ミケーレ・ピロ ホンダ・グレッシーニ FTR(CRT)

第2戦スペインGP
※第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した西村 章さんの著書「最後の王者 MotoGPライダー 青山博一の軌跡」(小学館 1680円)は好評発売中。西村さんの発刊記念インタビューも引き続き掲載中です。どうぞご覧ください。

※話題の書籍「IL CAPOLAVORO」の日本語版「バレンティーノ・ロッシ 使命〜最速最強のストーリー〜」(ウィック・ビジュアル・ビューロウ 1995円)は西村さんが翻訳を担当。ヤマハ移籍、常勝、そしてドゥカティへの電撃移籍の舞台裏などバレンティーノ・ロッシファンならずとも必見。好評発売中です。

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