かつて高速道路のSA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)といえば「高い、まずい、サービス悪い」が常識でした。そりゃあなた、黙っていても客はやって来るし、競争相手のない寡占状態ですから、ある意味しょうがない。だって人間なんだもの。
そんな恵まれた状況下でも、一生懸命な手本は二宮金次郎的PA(SAは大資本系で小回りが効かないのか、そういう話は聞きませんでした)もあり、ネットもツイッターもない時代に「手軽でおいしい○○PA。まずくて混んでいる△□SA」「素人相手の○×SA、ツウは○△PA」と口コミで評判が広まったのもなつかしい昭和の一コマです。
小泉改革の一環として2005年に道路公団が分割民営化されたこともあり、今やSA、PAは大きく変わりました。かつての三悪などみじんもないどころか、ニュースやバラエティで度々取り上げられるようにまでなったのです。ビバ小泉! ビバ構造改革!! というと、「郵政民営化で笑ったのは誰」という話になりますが、SA、PAに関しては分割民営化の面目躍如といったところでしょう(本当は道路公団末期からファミレスとかが入ったりしていたんですけど)。
高速道路会社にしてみればSA、PAが目的地になれば、通行料金は入るは、テナント料は入るはで大変結構なことです。が、本来の目的である休憩、トイレ、給油に立ち寄ろうにも大混雑で入れなかったり、本線まで渋滞が延びて事故につながるんじゃないかと心配になったりします。
もっと心配なのが「もっと儲かる店に入れ替えっ!」と立喰・ソがなくなってしまうのではないかという憂患です。
そこで現在、日本の高速道路にどれくらいのSA、PAがあるのか調べようと思いましたが、日本中高速道路だらけ、一説によると1000以上ということで、めんどくさいわけではありませんが、紙でもないのに紙幅の関係もあり(←ご存知、逃げの常套句)日本の大動脈にして代表である東名、名神高速道路の下りで立喰・ソの現状を調べてみました。
あれ? ほぼすべてのSA、PAで立喰・ソが食べられるみたいですね。ハイウエイオアシスやらパサールやらネオパーサやらリニューアルやらで立喰・ソが消滅していくと危惧していたのですが、調べてみれば一目瞭然。話題の第二東名も、ソがあるかどうかはともかくウならあるようです。スナックコーナーのメニューにソ(この場合はウも含めて)があるかどうかは未確認ですが、たぶんあるでしょう。立喰かどうかも定かではありませんが、たいした問題ではありません。こだわるなら立って喰えばい〜んです。
予測大間違いのお詫びに「ソの聖地、長野に近づくと旨くなるか?」みたいな企画(だったかな?)で中央道、長野自動車道で長野までのSAとPAのソ完全制覇をやったときの写真を掲載しますので許してください。若かったとはいえ、よくやったもんです。この大量のソ、ちゃんと全部食べたのでしょうか? 味も記憶に残っていません(価格、メニューは1997年1月時点のものなので、さすがに今は変わっていると思います)。
石川PA ジャンボかき揚げそば490円 | 藤野PA 藤野そば300円 | 談合坂SA 揚げかまそば570円 | ||
初狩PA 磯とろろそば390円 | 釈迦堂PA 天ぷらそば330円 | 境川PA なめこ山菜そば390円 | ||
双葉SA 牛すきそば650円 | 八ヶ岳PA きんぴらそば360円 | 原PA 丸天そば400円 | ||
諏訪湖SA 天ぷらそば500円 | みどり湖PA 信州風手打ちそば270円 | 梓川SA ワサビそば500円 | ||
姥捨SA 天ぷらそば480円 | 筑北PA なし | 松代PA とろろそば430円 |
高速道路で気軽にささっと食べられるソやウがないとは画龍点睛を欠くです。日本人にとってソは欠かせない食べ物であると言えましょう。めでたしめでたし。と終わっては申し訳ない。どこかに反ソPA(違う意味になりそうですが、赤いソは消滅したので、今やソと言えば食べるソなのです)がないかと調べてみると、その前にまた余計な事に気づきました。
「うどんの色は?」と問われれば白。
「ラーメンの色は?」と問われれば黄色でしょう。
しかるに「そばは?」と聞かれたら?
音威子府など一部方面では「黒!」と即答できますが、「黒っぽいような灰色みたいな……」と歯切れが悪いのが現況です。東名名神沿いで24時間つるつるしこしこぺろぺろな大メジャーなソなのに、表わす色がないとはいったいどうしたことでしょう。
ソの色は、ソの実の挽き方によって色が変わるのです。実の外まで挽くほど黒くなるそうで、中心あたりだけを挽いた白いそばを「更科」、外に行くほど黒くなり「藪そば」「並そば」「田舎そば」と呼ばれることが一般的だそうです。勉強になりましたね。ソの色は更科色、藪色、並色、田舎色ということです。余計に解らなくなります。次回の全ソ連(例によって、赤い国ではなく「全国ソバ連合会議」のことにしておいてください)の議題になるでしょう。
なんの話でしたっけ? ああ、そうでした。ソのないPAもあるはず……はい、ありました! 2010年6月リニューアルオープンした関越道上り「寄居☆星の王子様パーキング」です。行ったことありますか? まだの方のお楽しみを奪ってはいけませんので詳細は省きますが、予備知識もなく訪れたおじい、おばあは「だんごはないか?」「大福もないんか!」と浦島太郎状態になるかもしれません。でも、ひとつぐらいこんな冒険野郎パーキングがあってもいいと思います。嫌なら次に行けばい〜んですから。
星の王子様になる前の寄居PA。(2010年以前撮影のはず) | 星の王子様になった寄居PA。(2010年6月頃撮影) |
調子に乗ってエライ人が「それ、どんどん作れ」と、とんとん拍子に話が進み「第二星の王子様PA」(5代目円楽ミュージアム)、「星野王子様完投PA」(釜田投手博物館)、「コシノ王子様PA」(よくわからないけどファッション的な何か)、「もしも王子様PA」(三瓶と、ごくまれに関根さんやキャイーンが出る寄席)など王子様系PAをどんどこ作り「でもやっぱりメジャーな食い物もあったほうがいいな」と「カレーの王子様PA」(ヱスビー食品プレゼンツ)も作るけれど、お子様向けでちょっと甘口すぎて、超辛口の「王子の王子様PA」(溶けて無くなるお金模様のティシュが名物)も作ったりなんかしちゃったりして、もう。
すいません。本題の幻立喰・ソいきます。
話の流れ的には、星の王子様になる前の寄居PAのフードコーナーであれば丸く収まるのですが、残念ながら食べたことがありません。ということで、京葉道路の鬼高PAに登場していただきましょう。鬼が高いとはすごい名前ですが、鬼高? どこそれ?? と全国的に見ればマイナー道路のマイナーPAです。特に名所も名物もありませんし。行きがかり上、今月のお題目になりました。古葉監督と山本浩二監督のつなぎ役だと思われていた阿南監督みたいな感じです。おっと、こんな事を言うと「リーグ優勝までもっていった阿南さんをなめとんかのぉ!」とCマークの方にぶちのめされます。
鬼高PAですが、東京外環道路とのジャンクションを建設するための支障(=じゃま)になるということで、今年の4月1日上下線共に閉鎖されました。「じゃまだよ、鬼高!」です。泣くに泣けない、泣いた赤鬼状態。「お菓子もお茶もあります。遊びに来てください」という泣ける張り紙はありませんでしたが、青鬼役が東京外環道路ということでしょうか。まったく違いますね。お隣の幕張PAがパサールに昇格し、こけら落としにAKB48の大島優子ちゃんがやってくる大出世をしたのに対し、地味で使いにくい昔ながらの狭くて古い昭和のPAのまま生涯を終えたのです。泣くな赤鬼!
泣いた鬼高、ではなくて鬼高PAも幻立喰・ソになってしまったのですが、かんじんのソ、何度か食べた記憶も立喰・ソ帖に記録もあるのですが、味が思い出せません。そうなんです。奥様は魔女だったのです、ではなくて可もなく不可もないフツーのソだったのです。すごくおいしいは言うまでもなく、すごくまずい、すごむほどまずい、すごめないほどまずい、すごむ店員さんが極悪というような強い印象が残っていないと、普通のソは忘れてしまうのです。しょうがないじゃないか、だってバカなんだもん。 |
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在りし日の鬼高PA上り(写真上 2002年4月撮影)と下り(写真下 2005年6月撮影)。現在の模様はNEXCO東日本のHPに出ています。 |
立喰・ソ帖の記述によると「鬼高PA(上り)そばはしゃきりレベルが高い。が、つゆはうすくてイマイチ。天ぷらは具だくさん。が、油がしつこい。でもネギは入れ放題で、水は冷えていてうまい。が、バイト君の店員がぴりっとしない。400円」となっています。結局よかったのか、わるかったのか?(2002年4月撮影) | これも立喰・ソ帖より。「鬼高PA(下り)珍しくてついつい注文してしまった納豆天。食べたら納豆のかき揚げだった。大阪の人が食べたら倒れる。天ぷらにしないほうがいい。いなりは150円。いなりに関しては特に感想はない。400円」納豆天に夢中で、そばとおつゆに関する記述がないですね。ダメすぎてため息が出ます。(2005年6月撮影) |
あっ、最後になりましたが、鬼高PAに代わる新PAは平成27年度を目処に新設される予定だそうです。みにくいアヒルの子は白鳥になって、幕張PAを見返すことができるのか? がんばれ「どっこい大作」のように。
4年後どうぞお楽しみに。
■立喰・ソNEWS ●日本一、いやたぶん世界一! |
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今春、北海道遠軽駅ソ攻略作戦の不手際で軍資金を喪失し、今年度作戦計画の大幅変更と経費削減が叫ばれる昨今ではありますが、ひょんなことから(どんなひょん?)立山黒部アルペンルートに行ってまいりました。で、ついでといいますか、かねてより懸案の室堂バスターミナルにある立喰・ソにも寄ってきました。 |
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左は2007年、右が2012年。ソのメニューはこの5年間で7品から4品へとリストラクチャリングにより統合スリム化がおこなわれたようです。ここらあたりに「日本一、いや世界一標高の高い所にある立ち食いそば」と表示されるよう、心から願っております。 | ||
一応、幻立喰・ソ以外は紹介できない(とはいいながら、じゃあ上の中央道の写真はどうなんだ……ははは、それはほらもうだいぶ前の写真ですから、ということで)というルールなので、せめて主のこだわりの逸品の一品「立山かまぼこ」を。って、おやっさん、かまぼこ裏返しになっちゃってるよ……アルペンルートには黒部平と扇沢駅にも立喰・ソがあります。アルペンルートお友達、トロッコ列車で有名な黒部峡谷鉄道も宇奈月、鐘釣、欅平に立喰・ソがあります。ちなみに富山地方鉄道の宇奈月温泉駅にあった越中そばは2012年3月30日をもって幻立喰・ソになってしまいました。合掌……写真右は標高2450mの室堂バスターミナル屋上展望台からの風景。日本一標高の高い駅(バスターミナル)の目の前が有名な「雪の大谷」です。今年の積雪は17mにもなったそうで、6月末でもごらんのとおり。 |
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在500店以上を制覇したものの、データ化されていないのでたいして役に立たない。そば好きから、立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。
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