HONDA NC700X Dual Clutch Transmission
INTEGRA、NC700X、NC700Sというホンダニューミッドコンセプト3兄弟。DCT(デュアル クラッチ トランスミッション)オンリーのINTEGRAに続き、NC700XとNC700SにDCTモデルが追加されたので乗ってきた。
INTEGRAに乗りDCTの進化にとても感心した。だからデュアルパーパスなNC700XとネイキッドモデルのNC700SのDCTはどういう風に仕上がっているのか、とても気になっていたところ。
初めに乗ったのはNC700X DCT。INTEGRAはスクーターと同じライディングポジションだったが、こちらは跨って乗る普通のバイク。長年ライダーをやってきたから、頭の中でスクーターとバイクの住み分けは出来上がっていて、判っていてもクラッチレバーと左足のシフトチェンジペダルがないことが不思議。実際、走りだしても、INTEGRAの時にそこそこの距離を乗って慣れていながら、最初はクラッチレバーを握る動作やシフトチェンジしようとする動作をしてしまったのはご愛嬌。その後慣れてしまえば操作に戸惑うことはなかった。
スロットルを開けた時の加速は、少しだけ通常ギアモデルの方が鋭い。しかしATモードならばレブリミットを気にすることなくスロットルをひねりっぱなしで加速するのは楽だ。多くのスクーターに使われているCVTは、シームレスでスルスルっと加速する。しかし、スロットル操作に対して駆動の反応がやや鈍く感じられるところもある。DCTは小さいながらギアシフトしているショックと音が伝わり、スロットル操作に対して反応がよりダイレクト。どちらが優れているではなく、これは考え方が違う。DCTはオートマチック運転が出来るけれど基本の立ち位置はバイクだ。そこが、出来ることは一緒ながらスクーターとは違うものになっている。
Dual Clutch Transmissionモデルを試乗。こちらNC700X。NC700Sとインテグラ、基本のメカニズムは3車共通だが…。 | こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/c2TkdqMCppk」で直接ご覧ください。 |
INTEGRAに乗った時に進化したDCTの自然なフィーリングについてインプレッションで書いた。その印象はNC700X DCTでも同じだった。特にコンピューターで制御する部分の進化が大きい。ATモードのDモードからキビキビ走れるSモードにするとちゃんと加速の強さに違いが出るが、この第2世代と呼ばれるDCTではDモードの許容範囲を広げたことで、Dモードでは物足りなく、Sモードにすると急に元気というじれったさが消え、DとSの連携が気持ちいい。
ATモードでワインディングに入って、コーナー手前で親指シフトダウンボタンを押すと、弱いエンジンブレーキを効かせ立ち上がる時に合わせたギアチェンジが選べる。初代のDCTは、そうするとATモードからMTモードに自動で切り替わっていた。このニューミッドコンセプトシリーズに積まれたDCTはシフトダウンしてもATモードは維持のまま。だから立ち上がる時には右手をひねるだけで、ギアチェンジの必要がない。ライダーはATモードを選んで走っているのだから、これは理にかなった変化だ。コーナーリング中にギアダウンしても姿勢が乱れたりしないので怖くない。もっと積極的にギアを選びたいならMTモード。
走りが自然だと感じた部分として、走行状態を判別しての制御が加わったこともある。ワインディング走行時にひとつのコーナーを立ち上がると自動シフトアップしてコーナーでは自動シフトダウンの場合。コーナーの間合いが狭くなり短時間にこれを繰り返されると走りがギクシャクして不快だし、面白くない。そこでバイクの様子、ライダーの意思(スロットル)でシチュエーションを判断してコーナーから立ち上がり、そして次のコーナーまで同じギアを維持するようになった。実際にタイトなコーナーが連続する道を走ってみてそれを感じることが出来た。試乗中「どうしてここでギアチェンジ?」と思うようなことはなかった。でも当然、万能ではないので、千差万別のライダーの走りたい気持ちと100%シンクロすることは難しい。狭いワインディングでも立ち上がりでレブリミットに近くなれば、ギアを維持せずシフトアップをする。そういう時はMTモード。
NC700X TypeLD。写真のライダーの身長は170cm。NC700X Dual Clutch Transmissionのシート高はMT版と同様の830m。ただNC700X Dual Clutch Transmission発売と同時に、NC700Xには、ローダウン仕様のTypeLDが登場。シート高800mmと小柄な方でも安心して乗れるモデルがラインナップに加わっている。 |
シリーズの中サスペンションストロークに一番余裕があるNC700Xは、素直なハンドリングでしなやかな乗り心地が魅力。ワインディングでも充分に楽しめる。ツマラナイなんてことはない。軽快さと快適さのバランスが取れている。一方のネイキッドモデル、NC700Sは足の動きが比べると抑えられている。だから駆動がかかった時や向きを変える動きに操作とのタイムラグが小さくすばしっこい。全体的にNC700Xより小ぶりでシートが低いこともあって操りやすい。個人的には長距離ツーリングも考えるならばスクリーンもあるNC700X。日常の移動と、日帰りでさっと走りに出かけるような使い方が多いならばNC700S。
ちなみに、今回、両車のDCTモデルだけでなく、NC700Xのシート高が30mm低くなったTYPE LDにも乗れた。単純にシートだけを変えたものではなく、前後サスペンションの変更で低さを手に入れているからスタンダードとは走りが少し違う。乗った感じは全体的にNC700Sに近いものだった。
もし、左人差し指と親指のシフトに抵抗があるなら、オプションでシフトチェンジペダルキットが比較的安価で手に入る。かゆいところに手が届くような用意は素晴らしい。これを装着すると足だけでなく、従来の指シフトも併用出来るので、指先シフトで問題がない人でも、便利なものとして装着してもいいと思った。特にコーナーリング中や、右に大きく舵角が入って回る時は、どうしても左腕が伸びる。私は手の指も腕もそれほど長くないのでシフト操作が少々やりにくいと感じる場面もあった。そういう時にこの足シフトがあれば楽だ。
一般的なギアのモデルからDCTになって車重は10kg重くなっている。びっくりするのは燃費がまったく同じ値だという事実。ABSモデル(DCTモデルは標準装備)ならばたったの53,550円の違い。低価格なニューミッドコンセプトシリーズ自体に驚いたのに、新しいDCTを付けてこの価格差にも驚く。これは選択を悩む。
(試乗:濱矢文夫)
NCシリーズ開発のエピソードを話してくれた二輪R&Dセンターの深谷和幸さん。“ニューミッドコンセプト”シリーズ、DCTモデルの走行実験を担当。 | こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/aXyR_VkzBxM」で直接ご覧ください。 |
HONDA NC700S Dual Clutch Transmission
左グリップ・ホルダー部にはパーキングブレーキレバーを装備。レバーを上にカチッとロックされるまで引っ張り上げるとパーキングブレーキが掛かる。解除はハンドル下の赤いラインが見えるボタンを押す。写真をクリックすると解除された通常の状態が見られます。 | パーキングブレーキレバーを引くと、ワイヤーケーブルにより写真のリア・キャリパーに追加されたパーキング機能が作動しロックする。 |
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