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 2007年にスーパーXRことXR250の販売が終了してから、ホンダが「オン・オフモデル」というオンロードとオフロードの両方で使える250のデュアルパーパスフルサイズモデルは途絶えていた。その間、XR230は継続して発売されていたが、軽二輪枠いっぱいのモデルは5年間カタログから消えていたことになる。このクラスのオン・オフモデルには根強いファンがいるので、「待望」という言葉を使ってもいいだろう。

 車名はXRを引き継がず、CRFとなった。国内で販売されているCRF250と名の付くバイクは3モデルあって、オフロード系に詳しい人なら説明不要だが、それほどでもない人は間違いやすいので、最初に説明しておこう。

『CRF250R』は人工的に作られたクローズドダートコースで飛んだり跳ねたりしながら速さを競うモトクロス用競技車両。いわゆる市販レーサーで公道走行不可。始動はキックのみ。それをベースにエンデューロ、クロスカントリーレースと呼ばれる、自然の地形を利用したコースで速さを競うことに特化したモディファイを施されたのが『CRF250X』だ。車体や足周りの基本は旧モデルのCRF250R譲りながら、小ぶりのヘッドライトを装備して、専用の足周りセッティングとエンジン。キックだけでなくセルスターターも追加されている。これも日本で発売されたものは公道不可。

 この『CRF250L』は、その2台とはフィールドがまったく違い、一般公道やオープンな林道で使うために誕生したもの。車体、足まわり、エンジンはレーシングモデルのCRFと名前以外共通したものはない。

こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/0YRakygObM4」で直接ご覧ください。 こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/1kW8fo3zgD4」で直接ご覧ください。

 太陽の下で直接見て触れたCRF250Lの車体は堂々としていた。ホイールは前1.85×21インチ、後ろ2.15×18インチという、オフロード走行モデルとしては定番のサイズのアルミリム。スチール製ツインチューブフレームにCBR250Rの双子と言える水冷DOHC単気筒エンジン。すらっと伸びたアルミのスイングアーム。XR230よりひとまわり大きい名実ともにフルサイズ。全体的に最終型スーパーXRとほぼ同じ大きさ(ホイールベースはこちらが20mm長い)。

 シート高もXRと同じ875mm。オフロード専用車と比べると高い方ではなく、身長170cm、体重70kgが乗るとよく動くリアサスペンションが沈んで両足の指の付け根まで接地する。このままの状態で市街地のみならず林道へ行ってもまったく不安はない足着き性。それでも小柄な方や、XR230からの代替わりを考えている人は高いと感じるかもしれない。かゆいところに手が届くのは、サードパーティー製を待たなくても、走りの性能をほとんど損なわず45mmダウン出来るキットがメーカーオプションとして用意されていること。これは素晴らしい。

試乗者の身長は170cm。シート高は875mm。
この状態がノーマルの車高。写真をクリックすると、純正オプションとして用意されている45mm車高を下げられるローダウンキットを組み込んだ状態が見られます。 ローダウンキットを組み込むとシート高にこれだけ差ができます。写真をクリックすればさらに納得!?

 エンジンを始動すると、静寂性もさることながら、一次バランサーを採用していることもあり振動が小さいことに軽い驚き。ハンドルグリップ位置は近くて、高さはへそと胸の中間くらいに位置する。幅も一般的なもので、体に大きなストレスがかからない楽なポジションだ。

 乗り出して最初のシチュエーションは、舗装路のワインディング。ゆっくり流して乗ると、オフで確実に足裏をホールドするワイドステップにラバーは付いていないけれど足裏から不快な振動は伝わってこない。高回転になっても手はビリビリとならない。前後のサスペンションは低速でもよく動き、シートはオフ車と考えると座面も広めでクッションは柔らかいので快適。公表されたエンジンのトルクカーブは見事な台形。どこからスロットルを開けても唐突なところがなく、スルスルっと速度が乗ってくる。のけぞるような加速はないけれど、23psというスペックよりも俊敏に感じた。

 試乗車が履いていたタイヤはIRC製GP21、GP22。これが見た目以上にアスファルトでのグリップが良く、ペタンとかなり寝かせても安心だと判ってからは、少しペースを上げてひらりひらりとコーナーリングを楽しめた。ロードスポーツのように前からぐいぐい曲がる旋回性ではなく、バンクさせて曲がっていく感じは動きが穏やかで扱いやすい。ここが街乗りやツーリングでオン・オフモデルを好んで使う人が多い理由である。ブレーキの効き、コントロール性は良好だ。

 そこからフラットな林道へ移動。よく動く前後サスペンションはダートでも仕事して凸凹をいなす。タイヤグリップが低くなるダートでも印象はロードと大きく変わらず。エンジン出力特性のおかげで、スロットルを開けていっても大きくリアタイヤをスライドさせることなく車体を前に進ませた。調子に乗ってペースをあげると、特にリアのサスペンションが動き過ぎると思う場面もあった。しかし、考えてみれば見通しが悪く狭い林道で、その速度を維持するのは現実的じゃないもの。ちょっとした小山や急坂にもトライしてみたけれど、エンジンが強くはないけれど粘ってトラクションを失わずクリアできた。

CRF250L開発スタッフの皆さん。 デジタルメーターは中央にスピードを表示。右にホンダの250オフ車初のバーグラフ式フューエルメーター。左には時計やツイントリップを表示。
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 143kgという車両重量は250のオフロード車としては重い。それは確かだ。しかし、このCRF250Lはオフロード専用車ではないのだ。そこを混同してはいけない。当然モトクロスジャンプやエンデューロレースは想定外。ホンダがオン・オフモデルと説明するように、オンロードとオフロードを楽しく乗るオールラウンドモデル。オフロード走行だけに特化していない。

 走りだけでなく、街やツーリングでの使い勝手が良いように純正でリアに便利な荷掛フックが付いているなどの装備がそのキャラクターを顕す。切り返しで重量を感じる場面もあったけれど、フラットからやや荒れたダートで不足だと思うことはなかった。気軽に林道へ入っていける性能は問題なく有している。

 突出した走破性、軽さ、パワフルさはないけれど、長い時間、道を選ばずに遊べる。2時間程度の試乗で耐久性に言及するのはおかしいけれど、これまでの実績から優れているであろう。それがホンダのアイデンティティであるからだ。

 オフロード性能に特化したモデルで長距離のライディングは厳しい。このCRF250Lだったらトコトコと距離を伸ばしても体やマシンは相対的にへこたれない。どこでもどこまでも走っていけるような気にさせた。これがストロングポイント。開発者は代わっているけれど、そこにXLR、XRと続いてきたホンダのオン・オフモデルの血統を感じてヘルメットの中でニヤリとしてしまった。これで44万9400円。お買い得と言わずして何と言おう。
(試乗:濱矢文夫

CRF250Rのゼッケンプレートをイメージしたヘッドライトバイザーには、グローバルモデルとして各国の法規に対応した仕様としたヘッドライトを装備。国内モデルでは、普段使いでも安心な60/55Wの光量を確保。 リアフェンダーは斜め後方へ跳ね上がるデザインとすることで躍動感を表現している。リアフェンダーの左右4ヵ所にはツーリング時の荷物積載に便利なボルト型の専用荷掛けフックを装備。
XR250に比べて長さでプラス21mm、前後幅でプラス9mm大型化されたステップ。滑りにくい形状と居住性をアップ。ラバー付のオプションがあるともっと良いのだが。 サイドゼッケンをイメージさせる形状のサイドカバーを開けると(写真をクリックすると開いた状態が見られます)そこは書類入れとツールが。ちゃんとキーロックが付いている。
■CRF250L開発のねらい

 開発のキーワードは“On(日常)を便利に、Off(週末)を楽しむ“ちょうどいい相棒 New On & Off Gear!”
『ユーザー調査の結果、オフロード走破性の高いマシンでモトクロスやエンデューロレースなどを楽しむユーザーがいる一方で、モトクロスやエンデューロレースに憧れを持ちながらも、その性能や排気量のヒエラルキーにこだわらず、リーズナブルな価格帯のフルサイズオン・オフ250ccモデルで日常生活での扱いやすさや利便性を優先し、週末はゆったりとオフロードを含む郊外へのツーリングなどのFUNライディングを味わいたい。自分のスキルの範疇で性能を余すことなく発揮させ、満喫したい、という先進国でのユーザー像が見えてきました。
 また、新興国ではステップアップできるモデルや、新たなカテゴリーに憧れるユーザーの存在が顕在化してきています。このような、新興国では「手の届く価格」で、先進国では「リーズナブルな価格」で、フルサイズオン・オフ250ccモデルを求める多くの声をいただきました。そして「喜びの創造」「喜びの拡大」、さらに、「喜びを次世代へ」という見地から、将来に向け持続可能な社会に貢献しながら市場の活性化を目指すため、優れた燃費性能を持つ高品位で次世代のベンチマークとなる公道走行車としてのオン・オフ250ccモデルの開発へ向けベクトルを合わせました。』(ホンダPRESS INFORMATIONより)

■パワーユニット

 エンジンは基本的にCBR250Rと同じ水冷シングルがベースとなっている。車名のCRFからすればCRF250RやCRF250Xとの共通性を思い浮かべるが、直接的な関連性はない。それと、CBR250Rのエンジンをベースに開発した、という“通評”は間違いで、水冷4ストローク単気筒250ccDOHC4バルブという新型エンジンの開発をスタートした時点から、すでにオン・オフモデルへの搭載も考慮して並行開発が行われていた、というのが真実だという。
 オンロードでもオフロードでもマシンをコントロールしやすいトラクション特性とするため、低回転域から谷のない、厚みのあるトルク特性を追求。また、水冷DOHCエンジンらしい伸びのある出力特性も同時に実現し、扱いやすさと楽しさを高次元でバランスさせたエンジンとしている。
 容量5.7リットルのエアクリーナーボックスからストレート化させた吸気ポート、そして排気ポート、さらにはエキゾーストパイプに至るまでの形状を徹底的に解析し理想的な吸・排気管径や管長、スロットルボア径としているという。
 クランク部軸受けにはホンダのオフ単気筒エンジンとしては初の“半割圧入メタル軸受け”が採用された。クランクケース側には鋳鉄製のブッシュを採用。ケースハウジングの剛性を高めるとともに、熱膨張による内径のオイルクリアランスの変化を抑え、軽量化と静粛性の向上を実現している。また、振動対策として1次バランサーを採用した。
 新世代の新型エンジンとして、動弁系にはローラーロッカーアームを採用。コンパクトな設計、配置によりシリンダーヘッドのコンパクト化とフリクションの低減を図っている。
 また、ピストンのフリクションロスを低減するため、オフセットシリンダー(排気側に4mmオフセットする)とともに、ピストンにはエンジンオイルの潤滑をより促進する粗条痕やモリブデンコーティングを採用。
 さらに、燃費性能向上のため、希薄混合気でも着火効果が高く、通常のスパークプラグと比べて、推奨交換サイクルが約4倍という長寿命のイリジウムプラグが採用された。PGM-FIによる燃料噴射の最適化とあいまって、オン・オフ250ccカテゴリートップの低燃費を実現しているという。
 排ガスのクリーン化では、O2センサーとシリンダーヘッドにビルトインのエアインジェクション(二次空気導入)システムと組み合わせ、さらにマフラー内にキャタライザーを装備している。クラッチはトルク特性を配慮した専用設計、ミッションもオフ走行に配慮した強度アップが行われている。

■車体

 メインパイプは楕円断面形状としたスチール製ツインチューブフレーム。足つき性を高めるスリムな車体とサスペンションからの入力を確実に受け止める縦剛性を確保している。キャスター角やトレール量はCRF250Rに準じた設定としている。
 サブフレームは鋼管丸断面パイプを採用。スリムなサイドビューを実現させつつ、二人乗り+リアキャリア(積載容量5kg)を想定した強度を確保。メインフレームとの結合はボルトオン留めだ。
 マフラーは丸断面+テーパー形状で、静粛性を確保しながら、車体後方のスッキリした外観を実現。マフラープロテクターは導風窓を設定した2重構造の樹脂製。ラジエターは放熱量10.7kWのラジエターを、重量バランスの最適化のため車体左側に配置。薄型ガイドリング式クーリングファンを採用し、渋滞時の低速運転時にも安定した水温を保つ。

■足回り

 フロントフォークはスライドバルブ径φ43mmのSHOWA製倒立式セパレート・ファンクション・フロントフォークを採用。ストローク量は250mm。リアサスはアクスルトラベル量240mmとし、減衰特性の優れたシリンダー径φ40mmの倒立加圧シングルチューブ式(SHOWA製)を採用。CRFで熟成されたプロリンクサスだ。
 テーパー形状のスイングアームは、バネ下重量の軽減によるサスペンションの追従性を高める目的で、アルミ一体鋳造製法を採用。自由度の高い形状を可能とし、スイングアームの強度を確保すると同時に、適切な剛性バランスとすることで、軽快な乗り心地を実現している。チェーンアジャスターもアルミ押し出し材を採用。
 ブレーキは、前・後輪に制動フィーリングに優れた油圧式ディスクブレーキを採用。フロントにはφ256mm+2ピストンキャリパー、リアはφ220mmシングルディスク+1ピストンキャリパーの組み合わせ。

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■HONDA CRF250L主要諸元■
●全長×全幅×全高:2,195×815×1,195mm、ホイールベース1,445mm、最低地上高:255mm、シート高:875mm、車両重量:143kg、燃料タンク容量:7.7L●水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cc、ボア×ストローク:76.0×55.0mm、圧縮比:10.7、燃料供給装置:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)、点火方式:フルトランジスタ式バッテリー点火、始動方式:セルフ式、潤滑方式:圧送飛沫併用式、最高出力:17kW(23PS)/8,500rpm、最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7,000rpm、常時噛合式6段リターン、1速:3.333、2速:2.117、3速:1.571、4速:1.304、5速:1.115、6速:0.962、一次減速比:2.807、二次減速比:2.857●フレーム形式:セミダブルクレードル、サスペンション前:テレスコピック式(倒立タイプ)、後:スイングアーム式(プロリンク)、キャスター/トレール:27°35′/113mm、ブレーキ前:φ256mmシングルディスク、後:φ220mmシングルディスク、タイヤ前:3.00-21M/C51P、後:120/80-18M/C62P●価格:449,400円


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