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■試乗・文:青木タカオ ■画像提供:HARLEY-DAVIDSON JAPAN
■協力:HARLEY-DAVIDSON JAPAN https://www.harley-davidson.com/

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/xlLkfwk9uHY

電動モデルに興味はない。既存のバイク乗りの多くが、そう思うかもしれない。股ぐらの下に、熱い鼓動を感じるガソリンエンジンを抱えて乗るからこそ、オートバイは楽しいのだと……。しかし、そんな頑固さをもっとも持っているはずのハーレーダビッドソンが先陣を切って発売するのだから、ガソリンエンジンでなければバイクは面白くないと決めつけるのは、もしや早合点かもしれない。ハーレーダビッドソンは「LOOK」「SOUND」「FEEL」を大切にしてマシン開発に取り組んできたが、電動であってもそれは変わらないと開発陣は言う。一体どういうことなのか、米国にて開催の報道向け試乗会で確かめてきた!!

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ライダーの身長は178cm。

 
“様子見”ではなく
“本腰”を入れた市販版発売!!

 今夏、ハーレーダビッドソンが電動モデル「LIVEWIRE(ライブワイヤー)」をアメリカで発売開始した。米国仕様の車両価格は2万9799ドル(約315万円)で、ツーリングファミリーに相当する価格帯。ハーレーにしては決して高くない価格設定といえ、EVモデルへの意欲は高いことがうかがえる。
 H-Dグローバル広報責任者のポール・ジェームズさんによれば、「ライブワイヤーに続くバリエーションモデルも開発中で、電動モデルを今後充実させていく」とのこと。2022年には、さらなるニューモデルが発売予定というから楽しみは尽きない。

 懸念される充電環境も整備は進み、全米で650ある正規ディーラーのうち150店舗にチャージングステーションを設置。2019年中にヨーロッパの主要国でも取扱いを開始するが、欧州でも100店舗に充電設備を整えた。
 ライブワイヤーを販売する正規ディーラーでは、チャージングステーションのほかマスターテクニシャンが配属されている必要がある。H-Dユニバーシティでデジタルトレーニングセッションや実習セミナーを受講した専属メカニックで、電動モデルに対するアフターサービスにも万全を期した。こうした販売網の整備は、世界共通で急進させていく方針。日本への導入は2021年までを目指しているが、HDJ正規ディーラーの受け入れ体制が確立できるかどうかで、時期が早まるのか、それとも遅れるのかが決まってくるだろう。

 
走行可能距離は回生充電を活用し
街乗りメインで最大235km

 ジャーナリスト向け試乗会は、アメリカ・オレゴン州ポートランドにて開催された。米国一住みたい街、もっとも環境に優しい都市に選ばれるなど、電動モデルをアピールするにはうってつけの場所。ファッションや芸術にも敏感で、そこに暮らす人たちの生活からは潤いを感じる。
「ターゲット層は35歳から55歳の世代」と、ポールさんが教えてくれたが、こうした街でアーバンライフをおくるスマートな人たちを想定しているのだろう。少なくとも好奇心が強く、新しいモノ好きでなければ、まだ凌明期にあるエレクトリックバイクに容易く手は出せないはずだ。

 心配なのは、なんといっても走行可能距離だろう。街乗り中心なら235km、市街地と高速道路走行の組み合わせでは142kmと発表しているが、大きな差が生じるのは、回生ブレーキ(充電)によるところ。つまり、ストップ&ゴーを繰り返す街乗りでは、回生充電によってバッテリーの持ちが良くなり、航続距離が伸びる。
 その一方、ハイウェイでアクセルを開け続けると、電力を消費するばかりでバッテリー消費がかさんで距離は稼げないのだ。ガソリンエンジンとは逆となる。

 今回のテストライドは、街乗りとワインディングを中心に65kmほどをもっともパワーの出る「スポーツモード」で走行したが、終了時のバッテリー残量は35%とメーター画面に示されていた。バッテリーの持ちは天候や使用状態などコンディションによっても大きく異なり、ライダーモードを「レンジ」に切り替えれば、航続距離はさらに長くなる。
 仮に142kmとすると、これはハーレーならタンク容量7.9リットルの「フォーティーエイト」と同じくらい。日欧のモデルと比較すれば短いが、H-DとしてはVツインエンジンを積むモデルでも、走行可能距離は同等レベルにあるのだ。

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強烈なダッシュ力を持つ
究極の短距離スプリンター!!

 肝心のライドフィールだが、その加速力に驚かされる。回転上昇に伴ってパワーが盛り上がるガソリンエンジンと異なり、電動モーターは最大トルクを瞬時に発生するからスタートダッシュがなんせ鋭い。「スポーツモード」ではトラクションコントロールの介入が低くなり、停止状態からフルスロットルすれば駆動輪が容易く空転する力強さ。
 0→100km/hがわずか3.0秒、100→129km/hへはたったの1.9秒と驚異的な速さで、177km/hでリミッターが効く。「それ以上は要らない」と、ストリートバイクであることを宣言しているかのような潔さだ。

 そして、加速と同時に耳にする音もエキサイティングとしか言いようがない。これはモーターの駆動力をギヤボックスで90度変換する際に発生するメカニカルサウンドを積極的に活かしたもので、空気の壁を切り裂く轟音とともに全身を包み込む。
 ハーレーダビッドソンのマシン開発は「LOOK」「SOUND」「FEEL」をキーコンセプトに一貫してきたが、電動であってもそれは変わらない。静粛性に優れることをアピールするのではなく、音を追求してくるあたりは“らしさ”を感じる。
 強烈なダッシュ力といい、高揚感のあるサウンドといい、ライブワイヤーはVツインモデルとはまた違った別モノの刺激に満ちあふれ、強い“クセ”の持ち主であるのだ。

 また、「スポーツモード」ではスロットレスポンスがシャープになるだけでなく、回生ブレーキの効きも強くなり、アクセルを戻したときにエンジンブレーキの役割を果たしてくれるのも持ち味。コーナー進入時の減速で車体の姿勢が整えやすく、ワインディングでは「スポーツ」が操りやすい。
 ピックアップが穏やかで、回生ブレーキも弱くなる「ロードモード」はゆったり流すのにちょうど良く、ハンドル左にスイッチのあるオートクルーズコントロールとの相性もいい。最新の6軸慣性計測装置(IMU)を利用した電子制御は、コーナリングABS、トラクションコントロール、ウイリー制御など多岐にわたって存在感を示し、セーフティライドに大きく貢献している。

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新時代の幕明けと
ひとり大感激!!

 ライブワイヤーの姿を見るのは、これが初めてではなかった。「Project LIVEWIRE(プロジェクト・ライブワイヤー)」は2014年6月に発表され、H-Dはその年のうちにアメリカとヨーロッパで試乗会を開催。翌15年2月にはマレーシア・セパンサーキットの敷地内でも招待制の試乗会がおこなわれ、そのとき走らせたのが最初だった。
 次に見たのが、2018年の夏。本社を構える米国ミルウォーキーにて、創業115周年のアニバーサリーイベントがおこなわれたが、そこで市販版と変わらぬフォルムとなったライブワイヤーの実車が展示され、パレードランで走行するというサプライズもあったことを記憶している。

 ずっと追いかけてきた電動ハーレーだけに、ついに自分が乗って公道へ走り出したときは感慨深いものがあった。これまで、大手バイクメーカーが発売するエレクトリックバイクは、BMW「C evolution」をはじめ、ホンダ「PCXエレクトリック」などスクーターモデルだけで、シートに跨って乗るスポーツバイクタイプはこれが初。走り出しはあっけなかったものの、心の中では新たな時代のスタートを告げる盛大なファンファーレが鳴り、紙吹雪が舞うかのような景色が広がっていて、とても意味のある大きな一歩であった。
 そんなふうに大袈裟な感情を抱いたのは、参加したジャーナリストの中では自分だけだったかもしれない。しかし、その感動は生涯忘れられないものとなるだろう。
 
(試乗・文:青木タカオ)
 

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マレーシアでの試作タイプ試乗シーン(2015年2月)。 ミルウォーキーで見た市販版(2018年8月)。
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H-Dグローバル広報責任者のポール・ジェームズさん。ライブワイヤーのメインターゲットは「アーバンライフをおくっている35から55歳の世代」という。「ハーレーダビッドソンの電動モデルはライブワイヤーに始まり、さらに続く機種も開発中」とのことだ。 車体と同色に塗られたビキニカウルを、9つの発光体を持つLEDヘッドライトに組み合わせ、アグレシッブなフロントマスクを演出。
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フロントサスペンションはインナーチューブ径43mmの倒立式フルアジャスタブルタイプ。SHOWA製「SFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストン)」で、ブレーキはブレンボ製ラジアルマウントキャリパーと300mmディスクの組み合わせとした。専用開発のミシュラン製ラジアルタイヤを履く。
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4.3インチ(10.9cm)のフルカラータッチスクリーンでは、車体の状況によって操作方法をアナウンスしてくれるなど賢く親切。スピードやバッテリー残量、走行可能距離などをディスプレイするほか、ライダーモードなどの設定も直感的な操作で可能としている。モニター輝度も周囲の明るさによって自動調整され、どんな状況下でも見やすい。
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クラウド接続による「H-Dコネクトサービス」をスタートさせたことも大きなトピックスだ。パナソニックによるテレマティクスサービス対応の専用アプリにて、スマートフォンからリモート接続が可能となり、リアルタイムで情報サービスが受けられる。アプリはiOSとAndroidそれぞれのアプリストアから入手でき、ナビゲーション、ライド・プランニング、販売店やイベントの検索などのほか、離れた場所から車両の位置情報、充電状態などをモニターすることができ、ヘッドセットを繋げれば電話応対や音声入力などもおこなえる。初年度無料で、翌年から有料だ。 シート下に収納する専用の電源コードを使って一般家庭電源につないで充電できる(満充電に一晩かかる)ほか、最新のレベル3急速充電にも対応し、80%まで40分、100%まで60分でチャージ完了となる。充電コネクターは北米仕様ではSAE J1772 コネクター、ヨーロッパなどではCCS2-IECタイプ2。欧米で普及する「Combined Charging System」通称“コンボ”に対応した。
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軽量アルミフレームととともに、車体の剛性メンバーとなる15.5kWh高電圧バッテリー(RESS)はリチウムイオン電池で構成され、ヒートシンクとしても機能するアルミ製ハウジングで覆われる。バッテリーの保証期間は5年で、走行距離の制限はない。シャシー底部にウォータージャケットによって冷却されるモーターがマウントされ、低重心化が図られた。
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モーター出力はギヤボックス内で90度変換され、独特のメカニカルサウンドを生み出す。ファイナルドライブはベルト式で、アウトプットプーリーとホイールプーリーの比率3:1で、後輪へとパワーが伝えられる。発進可能状態になると、メーターディスプレイに速度が大きく表示される他、モーターから微かなトルクのパルスがライダーに伝わり、走り出せる状態になったことを感じ取ることができた。 フィット感の良いダブルシートはテールエンドが短くカットされ、スタイリッシュ。ニーグリップする部分もクッションとシート表皮が施され、座り心地に優れる。
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リアサスペンションもSHOWA製のフルアジャスタブル式「バランスフリークッションライト(BFRC-Lite)」で、減衰力発生機構をシリンダー外側に配置、加圧することで減衰力応答性向上を果たしている。スイングアームへのマウントはリンクレスとした。 ライセンスホルダーはスイングアームにマウントされ、ブレーキ/テールランプ、ウインカー類もそこに装備。回生ブレーキが強く効くときは、ブレーキ操作をしなくともストップライトが点灯し、後続車に急減速を知らせる。

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■主要諸元[北米仕様]
全長×全幅×全高:2135mm×830mm×1080mm
軸間距離:1490mm
シート高:780mm
車両重量:249kg
モーター:水冷式埋込磁石型DCモーター
最高回転数:15,000rpm
最高出力:105HP
最大トルク:11.9kg-m
変速機:なし
バッテリー:リチウムイオン電池
最大航続距離 235km
フル充電:急速充電にて1時間
ブレーキ:F=Wディスク R=ディスク
タイヤ:F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
●北米仕様車両価格:2万9799ドル(日本円換算313万円、2019年8月時点)


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