カワサキ“W”を識る──前編 W800ストリート&カフェをW1乗りが徹底試乗!! “らしさ”を残しつつ、走りは進化! カフェという新提案もあり カワサキWがますます楽しい!! Kawasaki W800STREET Kawasaki W800CAFE

カワサキは海外のジャーナリストに向けた「Heritage Press Introduction」を信州・長野にて開催した。これはWシリーズの歴史と伝統を紹介しつつ、最新の「W800 ストリート」「W800 カフェ」の試乗会をメインにしたもの。ビーナスライン、奈良井宿、松本城を巡る日本の文化を感じさせるコース設定のなか、お手伝いで参加した筆者も「W」をすっかり堪能できた。

■文:青木タカオ 
■撮影:真弓悟史、安井宏充
■協力:カワサキモータースジャパンhttps://www.kawasaki-motors.com/、川崎重工業 https://www.khi.co.jp/

Kawasaki W800 STREET / CAFÉ 試乗
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W800 STREET
Wらしさを感じる乗り味が
オールドファンも唸らせる!!

 Wシリーズの最新型はアップハンドルの「W800ストリート」、ビキニカウル+ローハンドルの「W800カフェ」という2本立てになっている。まず、スタンダード的な位置づけとなっているストリートから見ていこう。
 各部がブラックアウトされたスタイルは、レトロとモダンが融合したもの。最新のトレンド“ネオクラシック”を感じさせるもので、言うならば“今どき”のムード。先代までのWシリーズはクロームが要所に使われ旧車然としていたが、「W800ストリート」のスタイリッシュな姿を見ると、もう過去は引きずらないといった印象。つまり、懐古主義ではないのだ。


W800

 しかし、跨ると昔ながらのWを感じさせてくれ、自然とリラックスできる。というのも筆者は25年間、W1SA(1971年製)に乗るダブワンオーナー。「W800カフェ」のような新感覚も嬉しいが、オーソドックスなモデルも残して欲しいという想いを正直なところ断ち切れない。とにもかくにもWとなれば目が離せず、あれこれと黙ってはいられないのである。
「やっぱり、Wはこうでなくちゃ」と、自分のような旧型オーナーを唸らせるのが、まずアップハンドル。上半身が起きてグリップ位置が高く、少しの入力で車体を操れる。
 先代まではフロント19インチでヒラヒラ感の強いハンドリングだったが、新型は前後18インチ化され、動きが落ち着いた。実はW1も1966年の初期モデル(シングルキャブ)だけは前後18インチ。タイヤ幅は違うものの、50年以上を経た原点回帰といっていいかもしれない。


W800

 その落ち着きは前後18インチ化だけによるものではなく、フレームが刷新されて剛性が増し、フロントフォークもφ39→41mmに変更されたことが影響している。
 ただし、カチッと硬い神経質な乗り心地ではなく、従来型にあった頼りない部分を補ったという印象で、Wならではの扱いやすさは変わっていない。イージーな操作性をそのままに、高速コーナーや高速巡航を苦手としなくなり、路面の段差などから大きな衝撃を受けても平然としていられる。
 とはいえ、やっぱりノンビリ走るのがWの醍醐味だ。ロングストローク設計のバーチカルツインは、等間隔爆発をもたらす360度クランクが心地良く、なによりサウンドが素晴らしい。新型になって排気音に力強さと迫力が増しているが、これはプロジェクトリーダー(開発責任者)の菊地秀典さん(川崎重工業株式会社モーターサイクル&エンジンカンパニー)もこだわりのポイントだったと教えてくれた。



W800


W800

W800 CAFE
新型で向上した運動性能を
いかんなく発揮できる!!

 W800は新型でキャスター角も27度から26度に起こし、トレール量を108→94mmに変更。旋回性を高めるとともにブレーキもグレードアップ。フロントのローター径を300mmから320mmに拡大し、リアはドラム式をついにやめて270mmディスクを装備している。そしてアシスト&スリッパークラッチも搭載した。
 コーナー手前のシフトダウンもスリッパークラッチがあるから大胆にできるし、後輪ドラムブレーキではできなかったシビアなブレーキ操作も可能となったが、そうした進化をより堪能させてくれるモデルが「W800カフェ」である。


W800

 昔ながらのフィーリングを残し、従来路線で進化したのが「W800ストリート」だが、こちらは新しい楽しさを提案しているのだ。M字型のスワローハンドル、シングルカウル風のシートでアグレシッブな前傾ポジションとし、見た目だけでなく走りもお尻をイン側にズラして積極的に荷重移動するようなスポーツライディングに対応している。
 もちろん、エンジン、車体、足周りは共通なので運動性能に大きな違いはないが、ライポジが異なるだけでライドフィールが一変。フロント荷重が増えて、操作感や乗り手の意識もガラッと変えたのだ。低く構えた途端にスポーツマインドが高まり、こうした意識はこれまでのWシリーズでは感じられなかった新感覚。新しいファン層を獲得するだろう。


W800

 両車の仕上げも細部で差別化を図っている。カフェではメーターパネルにレーシーなホワイトをあしらい、ベベルギアカバーにはシルバーをあしらってブラックエンジンのなかでアクセントとしている。ホイールリムのアルマイト加工もストリートではシルバーだが、カフェでは黒。そしてグリップヒーターを備えて、上級仕様であることをアピールしているのだ。
 伝統を受け継ぎつつ、それぞれが個性を主張するWブランドの最新進化形。これは甲乙付けがたい。
(試乗・文:青木タカオ)



W800


W800


※W800 STREET


W800 CAFE
上質なクラシックフォルムはそのままに全身をブラックアウトし、ネオレトロなトレンドを取り入れた両車のスタイル。W800 ストリート(写真左)はアップハンドルやタックロールシートで、昔ながらの姿。W800 カフェ(写真右)はクラシカルなプロポーションをそのままに、ビキニカウルや低く構えるローハンドル、シングルシートカウルの形状を模した専用シートでスポーティさを強調した。

Kawasaki W800 STREET / CAFÉ 解説
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※W800エンジン


W800エンジン
2つのピストンが交互ではなく同時に上下する360度クランクのバーチカルツインは、Wシリーズの伝統。メグロから受け継いだOHV2バルブは、1974年に生産終了した650RS W3とともに姿を消したが、1999年のW650でベベルギヤ駆動のSOHC4バルブで復活。「美しいエンジンの創出」をテーマに、新開発したものであった。72mm×83mmのロングストローク設計で、2011年にボアを77mmにして773cc化。今回の新型もボア・ストロークや排気量といった数値は同じだが、各部を最適化しセッティングも変更。2500rpmで発生していた最大トルク62Nm(6.3kg-m)を4800rpmに引き上げるなどした。


W800 STREET


W800 CAFE
大径φ170mmのヘッドライトはLED化され、明るい白色光が被視認性を向上。6室のLEDライトは4室がロー、2室がハイビームに割り当てられている。また、ハイビーム部にあるポジション灯は電球式のようにランプ全体が点灯し、クラシックムードを意識。カフェはビキニカウルを装着し、スポーティなムードを漂わせた。


W800 STREET


W800 CAFE
ストリートでは上半身が起きた乗車姿勢となるハンドルバーを装着。その形状はW650アップハンドル仕様を踏襲している。カフェではクラブマンスタイルのローハンドルが与えられ、スポーツマインド高まる前傾のライディングポジションに。グリップ位置が低くなるだけでなく、フロント荷重が増え、ライドフィールにも影響する。


W800 STREET


W800 STREET


W800 CAFE


W800 CAFE
スイッチボックスの形状やデザインもクラシカルなものにこだわった。ハンドル左には、手動リターン式のハザードスイッチを装備。レバーはダイヤル調整機構付きで、ブレーキは4段階、クラッチは5段階に調整可能。カフェ(写真下)ではグリップヒーターを備え、価格差を見ても上級グレードという位置づけであることがわかる。


W800 STREET


W800 CAFE
シンプルで美しい指針式のメーターは、右にエンジン回転計、左に速度計を配備した昔ながらの独立式。スピードメーター内に液晶パネルが埋め込まれ、オド、トリップ、時計を切り換え表示する。カフェでは中央をホワイトにした文字盤が、スポーツモデルであることを強調した。


W800 STREET


W800 CAFE
魅力的な曲線を描くラウンド形状のフューエルタンクは、容量を14→15Lに拡大。存在感をより高め、力強い印象を見る者に与えている。グラフィックは両モデルで異なり、カフェではスポーツマインドを高めるニーグリップラバーが標準装備された。車体色はそれぞれ1色ずつの設定。


W800 STREET


W800 CAFE
ストリートはタックロール入りのオーソドックスなデザイン。カフェはシングルシート風デザインだがタンデムもできる。シートはキーで取り外しでき、シート下にはETC2.0車載器を標準装備。シート高はそれぞれで異なり、ストリートは770mm、カフェは790mmとなっている。


W800 STREET


W800 CAFE
リアサスペンションはオーソドックスなツインショック。剛性の上がったシャシーに合わせて、硬めのセッティングに見直された。アッパーマウント部にはグラブバーや荷かけフックがあり、使い勝手がいい。ヘルメットホルダーも備わって、出掛けた先で重宝するのは言うまでもない。

■KAWASAKI W800 STREET〈CAFE〉主要諸元
全長:2,135×825〈925〉×1,135〈1,120〉mm●ホイールベース:1,465mm、シート高:770mm〈790mm〉、●エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ、排気量:773cm3、ボア×ストローク:77.0×83.0mm、最高出力:38kW(52PS)/6,500rpm、最大トルク:62N・m(6.3kgf-m)/4,800rpm、燃料供給装置:電子制御燃料噴射、燃費消費率:30.0km/L(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)、21.1km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)、燃料タンク容量:14リットル、変速機形式:常時噛合式5段リターン、車両重量:221〈223〉kg●メーカー希望小売価格:993,600円〈1,112,400円〉


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