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切れ味爽やかなハンドリング。マニュアルクラッチと横置きシリンダーエンジンが見せる意外なまでのスポーティーさ。見応えのある凝縮感に溢れたスタイリング。ミニバイクの深淵、タイヤだけでも多くの選択肢があり、カスタムに踏み出せば、そこはおもちゃ箱のような世界が広がる。このZ125 PROはスポーツファンバイクとして、カワサキの末弟スポーツとして異彩を放つ独特の存在だ。その走りは、なるほど、オモシロい広がりに満ちていたのだ。

■試乗・文:松井 勉 ■撮影:松川 忍
■協力:カワサキモータースジャパン http://www.kawasaki-motors.com/

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ライダーの身長は183cm。(写真の上でクリックすると、片足→両足、両足→片足着きの状態が見られます)

 
ひもとけばスポーツミニ、30年のキャリア。

 スモールホイールを履いたスポーツファンバイク。このセグメントでカワサキが持つ歴史は長い。1988年、当時、50クラスのスポーツマシン、AR50/80系の空冷2ストロークエンジンやユニトラック方式のリアサス、そしてスーパーバイカーズ風ルックスをパッケージしたKS-1、KS-2がその始まりだった。
 ファニースタイル、コンパクト。しかし、その本格的な走りに誰もが唸った。その後、搭載するエンジンを水冷2ストロークエンジンにアップデイトし、スタイルはKLXやKDXといったカワサキのオフモデルに寄せたシャープなスタイルになった新型、KSR-1、KSR-2にスイッチした。
 2000年代に入ると、環境規制の影響でパワーユニットは4ストロークへ。自動遠心クラッチの4速ミッションを搭載したKSR110がデビューし、その後、マニュアルクラッチを装備したKSR PROが登場する。走る楽しさをミニサイズに詰め込んだKSRシリーズは定番スポーツとして親しまれ続けてきた。

 そして2016年には、ホンダのGROMも意識して、マニュアルクラッチを装備し、それまで一人乗りで通してきたKSRから大きなサイズアップを図らずとも2人乗りも可能としたZ125 PROが登場するのである。これでミニながら、フルサイズの125モデルとなっているのだ。

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ミニバイクらしさの中に
Zらしいディテールが。

 なるほど、外観はコンパクトだ。全長×全幅×全高の数字を並べても、大柄になったモンキー125と似た数値でしかない。全長で比較すれば、GROMが1755mm、モンキー125は1710mm、Z125 PROのそれは1700mm。ホイールベースは、GROM・1200mm、Z125 PRO・1175mm、モンキー125・1150mmとなる。全車12インチホイールを履く。きっちりと並べても僅かな差しかないほど似かよったサイズであることがわかる。

 Z125 PROを眺めると、いかにもカワサキらしいことがわかる。タンク上部、タンクキャップ両サイドから前に伸びるタンクのえぐり。これはZZRなどでは前輪を左右にフルロックしたとき、クリップオンハンドルのグリップ部の逃げにもなるディテールだ。アップハンドルのこのバイクには必須ではないのかもしれないが、ZのDNAとでも言いたくなる部分。そしてタンク下に走るフレーム形状のカバーもなかなか。がっしりした体躯を思わせる。

 ヘッドライトからテールエンドまでスピード感あるラインが描かれ、短いなかにストリートファイター的なマッシブで突き抜けるような造形がされている。
 ホイールは12インチ。ミニバイクの小径ホイールとサイドウォールが厚めのタイヤという組み合わせだ。それでいて「重さ」を感じさせないのは、スポークが細身でクールなデザインだからだろう。前後に備えたペタルディスクとキャリパーという組み合わせもカスタムしたミニバイクのようでかっこいいし、カワサキらしいディテールだ。

 エンジンはシリンダーが寝たタイプ。トランスミッションは4速リターン。マニュアルクラッチを持つ。カバー類の色を変えるなど。外観コスメもしっかりとビッグバイク風なのだ。

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転がり出せば、市街地から即スポーツな走り。

 Z125 PROに跨がってみる。モンキー125に近いサイズなのだが、どっかり座る印象のモンキーとは対象的に、軽い前傾ポジションとなるZ。それは、ライダーにしっかりとスポーツバイクであることを意識させる。細身でパリっと張った感じのシートフォームの印象もそれを補強する。足付き感は細身に仕立てられたシートと相まってストンと足が下ろせる印象。股関節幅そのままにスクっと立つようなだ。

 エンジンをスタートさせた。空冷単気筒エンジンは、タコメーターの針が躍るほど俊敏なレスポンスではないが、充分に軽快。嫌な振動がグリップなどにも出ない。

 クラッチの繋がりは節度感があり、するりと低速トルクに促されるように車体が前に動き出す。適度なギア比で1速もしっかり使える。2速に入れても加速は力強い。伸びがある。3速、4速とシフトアップを急いでもトルク感は途切れない。なかなかだ。1速、2速で引っ張り、その後はポンポンと4速にシフトアップして流すような用途にも向いている特性だ。クラッチレバーの操作力は軽いし、アクセル開度も適度な特性でワイヤーを引っ張るから、急開しても息付を起こすようなこともなかった。さすが「今」のエンジンだ。

 ハンドリングはとにかく軽快。直進では安定感があるのに、カーブを曲がろうと車体を少し寝かすと、それ以降の曲がる操作など不要なほど軽々と曲がってみせる。細めのタイヤとのマッチングも良好で、短いホイールベースの間に80キロ超の自分が乗っていても、前後バランスも適度に保たれながら走るから、前が軽くて恐い、ということもなかった。

 ブレーキに関しては、フロントはレバーストロークは短いタイプのマスターシリンダーで、入力の強さでブレーキ力を調整するタイプだ。リアは踏力とストロークがリニア。解りやすい。前後ともスポーツバイクらしい風合いをもったシステムであり、バイクのイメージ全体とよくマッチするものだった。

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峠道は最高にファン。
特に下り坂ではオオカミに変身する。

 そうなのだ。上りは125という限られたパワーながら回し疲れするようなことがなく、しっかりトルク感を伴いエンジン回転が上昇してゆく印象だ。4速だから時にドンピシャなギア比ではないかも、と思う場面もあったのは事実。それでも、2速でひっぱり、3速のトルクに任せる、という走り方でしっかりとペースを保って走り続ける。上りのカーブで少し寝かせば、タイヤの接地面がトレッドサイドに動き、タイヤの円周が小さくなるので、それだけでギアリンクが少しショートになる。そこでエンジンの回転を上げ立ち上がり、少しゆったりと直立にバイクを戻せば、12インチタイヤらしい特性を活かして加速を保つこともできる。Z125 PROと一心同体になって駆け上る楽しさは格別。

 そして下りだ。ここでのミズスマシ感はスゴイ。このサイズのバイクならではの動きがハジケ出すのだ。まず、カーブの進入で必要な減速を済ませる。ややハードに感じる場面もある前後サスだが、そのストロークを一気に使い込むようなブレーキングを避け、サスをじんわり縮めていくと、タイヤへの荷重がしっかり乗りながら旋回を開始してくれる。この辺がZ125 PROをスムーズに気持ちよく乗るコツのようだ。そうすればタイヤは路面をしっかりと掴む。

 適度に高回転まで伸びるエンジン、軽快なシャーシ。そして12インチタイヤが持つ特性。この3つを引き出しながら走れば、バイクの深い世界を身近に味わえる。コーナー一つで「巧くいった」「もう一つだった」が攻めると解りやすい。それでいて日常のコミューターとしては軽く扱いやすい、という二面性を持つ。

 セカンドバイクにはもちろん、乗り方に迷ったら、このバイクで腕磨きする、くらいの機能がある、まさしくモバイルテキストとしてライダーをビシビシしごいてくれる一台なのかもしれない。
 
(試乗・文:松井 勉)
 

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尖ったノーズはZ、ニンジャ系に見るデザイン。メーターバイザーを含め、現在のカワサキイズムをしっかりと見せている。ヘッドライトはハロゲンバルブ、ウインカーもリア同様白熱球を使用する。 φ30mmのインナーチューブを持つ倒立フォークと細身のスポークのホイールが印象的なフロントエンド。ブレーキシステムは、ペタルディスクとシングルピストンキャリパーを採用。フェンダーの造形も含めカワサキらしいスタイルを持っている。タイヤはIRC製を履く。
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OHC2バルブ空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載するZ125 PRO。エンジン前側にあるスポイラーや真下にあるマフラーの位置関係とデザインにより125ながら濃密なエンジン周りとなっている。ケースカバー類はグレーシルバー、シリンダーはブラック塗装とするなど、上級機種とも呼応するZらしさが売りだ。 クランクケース下に置かれたマフラーのメインボディー。スイングアームサイドとピボット後ろ側の隙間を埋めるように造形されたエンドチップを持つ。カバーなのだが、細部まで丁寧なデザインポリシーが貫かれている。ステップはアルミ製ペグを採用する。
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角パイプのリアスイングアーム。リアブレーキもペタルディスクを採用。片押しピストンのブレーキキャリパーを装備。ホイールの質量感を軽く見せる細身スポークを採用。見た目の軽さが写真からもわかる。インナーフェンダーの造形も含め、駆動系にマッシブさがある。 ニンジャシリーズにも採用されるオフセットさせレイダウンさせたリアサスペンション。Z125 PRO用ユニットは、スプリングイニシャルプリロード調整機能をもつ直押しタイプのものが装備される。サイドカバーやインナーフェンダーの表面はカーボン調の樹脂パーツとなる。 ライダーが足を出しやすいよう、タンクとシートの接続部分は絞られ、そこからリアシート手前で膨らみ、そしてテールエンドに向けてキュっと細くなるデザインがよくわかる。テールランプも各パートからのラインを受けてきゅっと研ぎ澄ませた形になっている。LEDを使った輝度の高いランプだ。ウインカーは白熱球を使う。
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エッジを効かせたタンクデザイン。まるで4気筒を搭載するZのようにがっしりとした張りをもたせ、そして抑揚のある面の構成で立体感をだす。存在感をしっかりと主張したもの。実際のサイズより小柄に見せるモンキー125のものとは対局にあるコンパクトなのに拡張性を見せるカタチだ。 フレームから生えるタンデムステップ、グラブハンドルはシート下の部分にえぐりがあり、そこをつかめるようなカタチになっている。タンデムを常用するにはコンパクトだが、しっかりと考えられている。取り外し式のシートの下は、メンテナンスフリーバッテリーが横倒しに置かれている。
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メーターはデジタルの燃料計、速度計、ワーニングランプなどを液晶モニター側に。回転計はアナログでシンプルに見せるスポーツバイクの定番タイプだ。 立ち上がったハンドルバーにより、コンパクトながら窮屈さを感じさせないポジションを取れる。183cmのテスターが乗ると、軽く前傾姿勢になる。ミラーの視認性も良好、左右のスイッチ類の操作性も十分に扱いやすいし触感もマル。良くできたミニバイクだ。
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■KAWASAKI Z125 PRO(2BJ-BR125HJF/BR125HJFA)主要諸元
●全長×全幅×全高:1,700×750×1,005mm、ホイールベース:1,175mm、シート高:780mm、最低地上高:155mm、車両重量:102kg●エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ、排気量:124cm3、ボア×ストローク:56.0×50.6mm、最高出力:7.1kW(9.7PS)/8,000rpm、最大トルク:9.6N・m(0.98kgf-m)/6,000rpm、燃料供給装置:電子制御燃料噴射、燃費消費率:50.0km/L(国交省届出値 定地燃費値 60km/h 2名乗車時)、54.2㎞/L(WMTCモード値 クラス1 1名乗車時)、タイヤサイズ:前100/90-12 49J、後120/70-12 51L、ブレーキ形式:前φ200mm油圧式シングルディスク、後φ184mm油圧式シングルディスク、フレーム形式:バックボーン●メーカー希望小売価格:345,600円/353,160円


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