東京モーターショーや東西モーターサイクルショーの参考出品を経て正式にリリースされたSWISH(スウィッシュ)は、”通勤快速”ブームの先駆者・スズキが放つアドレス110、アドレス125と共に原付二種(原二)スクーターのラインナップ彩るニューモデル。投入の背景は「多様化する原二スクーターへの要望」からだという。その仕上がりは、大ヒットとなったアドレスV125シリーズのチャームポイントであった”軽さ、取り回しの良さ、優れたパフォーマンス”に加え、上質感も備わった印象だった。
■試乗:高橋二朗 ■撮影:依田 麗
■スズキ http://www1.suzuki.co.jp/motor/
“SWISH”とは英語で素早い身のこなしなどの意
スズキの市場調査によると、原付二種ユーザーの用途の約70%が通勤通学や用足し・買い物に占められるという。その点を踏まえ、使い勝手の良さ、取り回しの良さに加え、スタイリッシュなデザインや付加価値などにこだわりをもってSWISHは開発されている。
特徴はコンパクトな車体、前後に10インチのタイヤを採用したこと。中でも10インチタイヤは街中での機動性を狙ったもので、”通勤快速”ことアドレスV100&V125シリーズなどで好評であった取り回しの良さと軽快感を追求している。一方で小径タイヤは安定性の面で一般的に不利と言われるが、φ33mmの高剛性フロントフォークやジャイロ効果をもたらすワイドタイヤ、2本のリアサス、低重心化、そしてフレームの高剛性化によってスタビリティが確保されたという。リアサスは3段階のプリロード調整を可能とし、1名乗車からタンデム、積載状況に合わせて快適な乗り心地が追求されている。
低重心化は燃料タンクをフロアボード下に配置したことによるもので、これはシート下のトランクスペースの容量アップ(28リットル)ももたらした。
搭載されるエンジンは昨年発売されたアドレス125の空冷4ストローク単気筒のSEP(スズキ・エコ・パフォーマンス)ユニットと基本的に共通。パワーやトルクのスペックも同一ながら、燃費と加速性能の両立を狙ったSWISH専用のチューニングが施されたもの。主に吸・排気系、駆動系に手が加えられたことで発進加速、中間加速においてアドレス125を上回るパフォーマンスを実現している。尚、始動はスポーツモデルですでにお馴染み、スズキイージースタートシステムを搭載する。
また、付加価値がもたらされた装備類も見逃せない。メーターはバーグラフでエンジン回転も表示する多機能フル液晶ディスプレイを採用。GSX‐Rシリーズをイメージしたという縦配置のヘッドライトやテールランプはLED化されている。さらに、スズキの原二スクーターとして初となるパッシングスイッチとハザードスイッチも装備される。
他、リアボックスの装着率が高い原二だけにリアキャリアを標準装備。足着き性が向上する大型スクーターでお馴染みのカットフロアボードやカバンホルダーといった”スズキの良心”もSWISHでは随所に見ることができる。
SWISHは2006年以降のアドレスV125シリーズなどと同様に台湾工場で生産。現地では日本より一足早く販売されており、日本以外では韓国でもリリースされるという。ちなみに車名のSWISHとは英語で”シュッシュ”や”ヒュー”などの擬音を意味するもので、素早い身のこなしなどを実車にイメージさせてという。
ライダーの身長は173cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。 |
V125シリーズの上級版、進化版、大人版
エッジの効いたその個性的な造形から構成されるスタイルはSWISHに存在感をもたらしているような印象を受ける。が、実際にライディングポジションをとると、V125シリーズとまではいかないがコンパクトだ。燃料タンクがフロア下にあるおかげでフロアは高めで、フロア下にタンクの無いスクーターから乗り換えると、特に長身のライダーは違和感を感じるかもしれない。ただ、タンクがフロア下に移動したおかげでシート下のトランクスペース容量が増えるという恩恵も。シートの尻へのアタリ、座り心地ともに良好で、今回、タンデムのパッセンジャーからもリアシートの座り心地がいいという意見があった。
SWISHの特徴である前後10インチの足周り、予想通り小回りが効き、軽い車体と相まって市街地ではとても乗りやすい。一方で乗る前は高速域での安定性に疑問があったが、小径タイヤを履くレイアウト上どうしても短くなりがちとなるフロントサスペンションのストロークの中で上手く作動している感じ。ダンピングの効いたセッティングによって、舗装されているとは言え荒れた路面などでも進路を乱されることは少なかった。
エンジンのパフォーマンスは十分以上。アドレス125と同じSEPエンジンながら、一部のチューニングによってスポーティに生まれ変わっている。スムーズな変速も好ましい。駆動系の開発を担当した人はとてもいいセンスを持っていると思った。
変速が滑らかなので速さ感はないが気が付いたら結構なスピードが出ていることがある。これはスピード感を感じさせない、すなわち落ち着いている、安定している、車体がとてもしっかりしているということ。また、ブレーキもエンジンパフォーマンスに見合ったもの。効き、コントロール共にかなり高いレベルにあると感じた。
使い勝手の面では、給油口の開閉はカギを抜き差ししなくていいから便利。スズキ原二スクーター初となるパッシングライト、最初はこのクラスに果たして必要か? と思ったが、本来の使い方とは別に、一瞬だけ遠くを照らしたい時などには便利だ。液晶ディスプレイはバックライトが優しい明るさのオレンジ。速度などの基本的に必要な情報はとても見やすいが、最近、老視が進んでいる私にとって、バーグラフのタコメーターは数字が小さくて見にくいと感じた。
SWISHは軽さ、取り回しの良さ、パフォーマンスと、毎日の足にうってつけの仕上がり。V125シリーズの上級版、進化版、大人版といった感じ。V125シリーズやアドレス125に対し、車両価格はやや上昇はするが、その価値以上のプレミアムが備わるモデルと言える。
尚、SWISHにはアドレスV125GやV125Sでお馴染み「リミテッド」バージョンもラインナップ、9月21日より発売される。防風効果をもたらすナックルバイザー、指先の冷たさを和らげる5段階温度調整のグリップヒーター、サーモスタットによる自動温度制御が備わるシートヒーターを装備。”生涯旅人”こと日本はもとより世界各地をバイクで旅する冒険家・賀曽利隆さんも絶賛した冬仕様となっている。
スズキ・スポーツバイクでもお馴染みのイージースタートシステムを採用。また、スズキ原二スクーター初となるハザードスイッチとパッシングスイッチも備わる。 | GSX-Rを源流とする縦2灯レイアウトとなるLEDヘッドランプを採用。シャープな印象を与えるポジションランプもLED。 | 個性的レイアウトのテールランプまわり。テールランプ、ストップランプ、ライセンスランプにはLEDを採用。 |
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