西村 章

Vol.135 第3戦 アメリカGP Got My Mojo Workin

 予想どおりの圧勝劇である。最高峰クラスではアメリカ無敗を誇るマルク・マルケス(Repsol Honda Team)が、テキサス州オースティン郊外のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催された第3戦で、6年連続の独走優勝を達成した。
 2013年から今年までの彼のレース内容を見てみると、COTA初開催の2013年はレース中盤でトップを奪い、1.534秒差を開いてゴール。2014年は1周目から後続を引き離して、終盤には最大で5.603秒差を開いた。2015年も、後続に対して3秒から4秒の差をコントロールしきって優勝。2016年は8秒以上の大差を築いて、赤子の手をひねるような余裕の勝ちっぷり。2017年は初年度のように中盤周回で狙い澄まして前に出ると、途中から毎ラップ1秒ずつ差をつけながら、終盤には4.8秒のマージンを作ってしまった。そして今年は1周目から飛ばしに飛ばして、ラスト2周で7.684秒差。危なげのなさもここまでくれば、もはやレースというよりも無邪気におもちゃで遊んでいるような状態である。

 レースを終えたマルケスは、「今日の戦略はスタート直後から攻めきることだった」と述べ、「バトルにしたくなかったので序盤から逃げを狙った」と、思いどおりの展開になった今回の第3戦を振り返った。
 前戦のアルゼンチンGPの際には決勝レースで3回のペナルティを受け、バレンティーノ・ロッシ(Movistar Yamaha MotoGP)との確執も再燃しただけに、今回のレースウィークにはその不穏な雰囲気がどのように影響するか注目も集まっていたのだが、却って勝利への執念と闘志を掻き立てさせる結果に終わったようだ。むしろそれくらい強靱な鉄の神経の持ち主でなければ、世界最高峰でチャンピオン争いなどできない、ということなのかもしれない。


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 マルケスのこの圧勝に隠れがちだが、今回の2位と3位もそれぞれ意義深い表彰台獲得になったようだ。

 マーヴェリック・ヴィニャーレス(Movistar Yamaha MotoGP)は、今季初表彰台。チームメイトのロッシ同様にプレシーズンは苦戦傾向だったが、開幕とともに少しずつパフォーマンスを向上させ、前回のアルゼンチンでもトップ3には届かなかったものの、好感触を掴んだレース内容だったことを決勝後に述べていた。
 2位でチェッカーを受けた今回のレースについては
「まだ最高の状態ではないとはいえ、しっかりと強さを発揮できた。2018年仕様の進むべき方向もわかってきた」と話し、次戦以降のヨーロッパラウンドで本格的に戦闘力を発揮したい、と期待をつないだ。

 3位を獲得したアンドレア・イアンノーネ(Team SUZUKI ECSTAR)は、チームとしては2戦連続で、イアンノーネ本人にとっては現チーム移籍以来初表彰台となった。イアンノーネは金曜のフリープラクティスから好調な走り出しで、予選でもフロントローを獲得していただけに、各セッションで積み上げてきた成果を決勝の全20ラップでしっかりとまとめきった、というレース内容になった。
「去年はすべてが難しくて苦労の連続だったけれども、皆が僕を信じてがんばってくれた。今回は週末をとおしていい走りをできて、やっと表彰台に上がることができた。この調子でこれからもがんばりたい」
 と、活き活きとした口調で第3戦を振り返った。スズキ陣営のチームスタッフもそれまでの苦労が報われた思いで、うれしそうに話すライダーの表情を見ていたのではないだろうか。


#26

 ところで、今回の第3戦を圧勝で制した表の勝者がマルケスなら、強い意志と精神力で肉体的に苛酷な三日間を乗りきって高い成果を得た、いわば「もうひとりの勝者」がダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)であることに異論のある人はいないだろう。
 第2戦の決勝で転倒を喫し右手首を傷めたペドロサは、レース翌々日に負傷箇所をスクリューで固定する手術を実施。第3戦は、どこまで走りきれるか不安要素を大きく残す状態で臨むことになった。


#26

 金曜午前のFP1は全24選手中21番手で、手術直後であることを考えれば無理もない位置でスタートしたが、午後のFP2ではトップタイムから1.1秒差の10番手タイム。土曜は雨になるとの気象予報だったが、MotoGPクラスのセッションは午前午後ともドライコンディションを維持。FP3で6番手タイムを記録したペドロサはダイレクトに午後のQP2に進出し、9番手タイムを記録した。
 予選を終えたペドロサは「今日は痛みが強く、昨日以上に厳しかった」と、それまでのセションを振り返った。「昨日の午後は手首の腫れが大きく、今朝はそれがだいぶ収まっていたけれども、午後になってまた腫れてきた。今日は雨になると思ったので、ソフトに乗って明日に向けて回復を目指せるかと思ったら、ドライセッションになってしまったので、予選に向けて全力で走らなければならなかった。バイクの上でだいぶ動けるようになってきたものの、痛みが強く午後は特に難しかった。ブレーキングのコントロールや、特に切り返しが厳しい。明日は鎮痛剤が助けになってくれるだろうから、最後まで走りきれると思う」

 COTAは全長5513mで高低差も激しく、長いバックストレートエンドのタイトな12コーナーにアプローチするハードブレーキングなど、計20個ものコーナーがある。肉体面では全19戦で屈指の苛酷なコースで、日曜のレースが厳しい試練となることは明らかだった。が、全20周の戦いを終え、シングルポジションの7位でチェッカー。おそらくは、本人にとっても予想以上の好リザルトになったことは間違いない。
 決勝を終えたペドロサは、次のようにレースを振り返った。
「正直なところ、今朝はウォームアップで痛みが強く、体力的にも厳しかった。それでも決勝前には回復できたし、(痛み止めを使用したので)レース序盤に痛みをあまり感じなかったので、レースにしっかりと集中できた。パワーは充分ではなかったけれど、ペースも可能なかぎり維持できた。最後はバイクのコントロールが難しかったけど、後続との差があったのでなんとかマネージできた。ここは体力的に厳しいコースなので、プラクティスを走れるかどうかまず様子を見るような状態でやってきて、最後はレースを走りきることができたので、ファンにも応援してくれるアメリカの人たちにもお返しができたと思う」

 ペドロサは、過去にも負傷を抱えた状態でレースに挑んだ経験が一再ならずあり、ときにはウィーク途中で断念を余儀なくされたケースもあった。手術直後にもかかわらず最後まで走りきってポイントを獲得した今回のアメリカズGPは、彼のレースキャリアのなかで最も辛いものだったのかどうか、質疑応答の最後に彼に訊ねてみた。
「今までにも、負傷を抱えた状態で乗ろうとしたけど乗れなかったレースもあった。バイクのコントロールをうまくできなくて、数回のプラクティスを走ってみた後にリスクを考えると、諦めざるをえなかった。今回はまずトライしてみて、一回のプラクティスのときの調子でずっとウィークを走りきれたわけじゃないけども、もちろん、今までの中で最もハードなレースのひとつだった。今はもう、完全に消耗しきったよ」
 そう言って、安堵したような笑みを泛かべた。

*   *   *   *   *

 というわけで、第3戦アメリカズGPについては以上。5月からはいよいよヨーロッパラウンドがスタートする。では、保積てぃおぺぺでおなじみの第4戦スペインGPヘレスサーキットでお目にかかるといたしましょう。

恩讐の彼方に、なんつって。レースは4位 5位で終え「良くもないけど、悪くもなかった」と自己分析 来季の去就になにかと注目が集まってる人
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実は肩を痛めていたのだとレース後に告白 2戦連続でポイント獲得。今回はルーキー最上位 11位。欧州ラウンドで巻き返しを狙う
実は肩を痛めていたのだとレース後に告白。 2戦連続でポイント獲得。今回はルーキー最上位。 11位。欧州ラウンドで巻き返しを狙う。
次戦、スペインGP(ヘレス)は5月6日決勝です
次戦、スペインGP(ヘレス)は5月6日決勝です。

 



■2018年4月22日 
第3戦 アメリカズGP
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ

順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #93 Marc MARQUEZ Repsol Honda Team HONDA


2 #25 Maverick VIÑALES Movistar Yamaha MotoGP YAMAHA


3 #29 Andrea IANNONE Team SUZUKI ECSTAR SUZUKI


4 #46 Valentino ROSSI Movistar Yamaha MotoGP YAMAHA


5 #4 Andrea DOVIZIOSO Ducati Team DUCATI


6 #5 Johann ZARCO Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA


7 #26 Dani PEDROSA Repsol Honda Team HONDA


8 #53 Tito RABAT Reale Avintia Racing DUCATI


9 #43 Jack MILLER Alma Pramac Racing DUCATI


10 #41 Aleix ESPARGARO Aprilia Racing Team Gresini APRILIA


11 #99 Jorge LORENZO Ducati Team DUCATIA


12 #9 Danilo PETRUCCI Alma Pramac Racing DUCATI


13 #44 Pol ESPARGARO Red Bull KTM Factory Racing KTM


14 #30 Takaaki NAKAGAM LCR Honda IDEMITSU HONDA


15 #19 Alvaro BAUTISTA Angel Nieto Team DUCATI


16 #38 Bradley SMITH Red Bull KTM Factory Racing KTM


17 #45 Scott REDDING Aprilia Racing Team Gresini APRILIA


18 #12 Thomas LUTHI EG 0,0 Marc VDS HONDA


19 #35 Cal CRUTCHLOW LCR Honda CASTROL HONDA


20 #10 Xavier SIMEON Reale Avintia Racing DUCATI


21 #21 Franco MORBIDELLI EG 0,0 Marc VDS HONDA


RT #42 Alex RINS Team SUZUKI ECSTAR SUZUKI


RT #55 Hafizh Syahrin Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA



RT #17 Karel ABRAHAM Angel Nieto Team DUCATI


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