Z900RS CAFEは
大人気Z900RSのドレスアップバージョン。
ビキニカウルを装着して
ライディングポジションに少し手を入れたCAFEは
スタンダードのRSより、さらにい~い感じで古い。
ただし、このZ900RSの本性って、あんまり知られていない。
■試乗&文:中村浩史 ■撮影:松川 忍
■協力:カワサキ http://www.kawasaki-motors.com/
ライダーの身長は178cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。 |
こんなのZじゃねぇよ――そんな声は確かにある。
似せてる時点でニセモノだ――そう言う人だっている。それがZ900RS。
毀誉褒貶っていうのかな、ホメたりけなしたり、みんな注目しちゃうから、ついついひとこと言いたくなる。Z900RSがこれだけ大人気モデルになっちゃったものだから、なおさらだ。ただし、ひとこと言いたくなる人だって、まだまだ実際に乗ったことある人は多くはなかろう。ちなみにこんな仕事をしていると「あのバイク、どーなの? もう乗った?」って聞かれることが多いんだけど、Z900RSは近年まれに見るほど、その連絡が多い! みんな注目しているのだ。
Z900RS CAFEは、そのZ900RSにビキニカウルを装着し、ローハンドルやハイシートを装着しただけのドレスアップモデル。カワサキZのビキニカウルモデルといえば、Z1RやZ1000/1100Rな角Zがイメージされるけれど、Z900RS(系統的には「丸Z」に入るのかな)にビキニカウルだと、グッとレトロコンシャスだ。
ベースとなったZ900RSから、パフォーマンスという点で大きな変更はない。ごくごく厳密に言うと、ハンドルマウントのビキニカウルの分、ハンドリングがちょっと重くなった? ハンドル低くてシートが高いから、荷重が少し前がかりになって、それも併せて、ちょっとだけ、ホントにちょっとだけ手応えがある。けれど、まーったく気にしなくていいレベルだと思う。
しかしこのZ900RS兄弟、エンジンも足周りも、本当によくできてる!
エンジンは、低回転から軽やかに回る、トルクある特性だし、2000~3000rpmといった常用回転域のトルクが力強い。ここから高回転まで回すと、低回転のトルクがあるエンジンにありがちな頭打ち感がまったくなく、6000rpmくらいからぐんぐん勢いを増してきて、10000rpmくらいまで軽々と回るのだ! ストリートを走っていて、ふと前が空いた時に不用意にスロットルを開けると、前の荷重がふわーっと軽くなって浮き始めるほどパワフル。またこの時のサウンドがイイんだ! いま並列4気筒の快感サウンドを聞きたかったらZ900RSだ!
6速2000rpmくらいからネバりあるトルクがあって、のんびり走るのも使いやすいトルクだし、6000rpmあたりを使って、ピックアップのいいパワーを引き出してもいい。もとはZ800をベースとしたこのエンジン、本当に名機だね!
ワインディングに持ち込んでも、Z900RSは意外な戦闘力の高さを見せる。もちろん、スーパースポーツのようなシャキッとした、ド・シャープなハンドリングを見せるわけではないけれど、生産を終えた1200DAEGよりパワフル&シャープで、Z1000よりもコントローラブル、というポジショニングに近いかな。フロントの接地感がすごくあって、車体剛性もしっかり高いから、ブレーキングで突っ込めるし、バンクスピードも見た目より結構早い。
バンク中はパイプフレームのしなりが良く出ているのか、路面をしっかりトレースして、路面の凹凸もきちんとシートに伝わりつつ、バイクの動きがわかりやすい。限界は低くとも、そこまでしっかり使える、というかんじ。小さくて軽くて、くるくる曲がる――そんなイメージです。この辺は、旧Z800のエッセンスをきちんと受け継いでいる。
ハンドリングも本当によくできていて、低速域では軽々としたフットワークを見せ、高速域ではしっとりとした落ち着きがある。注意深く感じていると、サスがよく動いていて、フロントタイヤの接地感がしっかりある。これは、キャリアの浅いライダーも安心だと感じるキャラクターで、倒立フォークやリアのモノサスを採用した効果だろうと思う。
もっと「Z感」を出したかったら、正立フォーク&ツインショックのアイディアもあったんだろうけれど、クラシックイメージに走りすぎなくて正解だと思う。低速でも高速でもホントに軽々とシットリが両立していて、気持ちがいい。
高速クルージングしてみると、トップギア6速で80km/hは約3000rpm、100km/hは約3900rpmといったあたり。手や足に伝わってくるエンジンの振動がなくて、本当にスーーッと空気の中を突き進んでいく錯覚に襲われるほど。僕は、この瞬間はスゴく好き。優れたツーリングバイクは6速3000rpmくらいで無振動100km/hクルージングできる、って理想を持っているほどで、Zはそれに、かなり近いね!
その時の車体の動きは、軽快すぎず、重厚すぎず、しっとり、という感じ。ビキニカウルつきの900CAFEは、少しだけ風圧を減らしてくれてはいるが、多くを望みすぎるのはダメ。全伏せ姿勢では、たしかにZ900RSよりプロテクションしてくれるが、これはあくまで、少しだけ防風効果のあるファッションアイテム、と考えるべきだろう。
ストリートを流してよし、ツーリングによし、ワインディングでも結構に速い。Z900RS兄弟は、決してレトロルックスなおとなし目バイクなだけじゃない。カワサキレジェンドのスタリングをまとったスーパーネイキッドなのだ。きっと、このスタイリングじゃなくても、完成度の高いバイクなんだろうな、と思う。Z900RSのあとに国内販売をスタートしたZ900にも、ガゼン興味がわいてくるなぁ。
Z900RS兄弟は、カワサキレジェンドである空冷Zをイメージしながら、新しい技術を盛り込んだヘリテイジスポーツだ。このスタイリングのままで、パフォーマンスをもっと古っぽく振ることもできたし、最新のパフォーマンスのまま、ルックスだけを古くすることだってできただろう。
そのバランスが絶妙なのだ。スタイリングも走りも、古すぎないし、新しすぎない。Zのスタイリングで200psってのもスーパーチャージャーってのもピンとこないし、新たに空冷エンジンを新作しました、って大努力をされても、ちょっと違う気がする。
時代の要求、カワサキファンの待望、マーケットの期待――そこまできちんとバランスさせたスポーツバイクなのだ。
Zがスキでしょうがない、って人はずっとたくさんいる。けれど、大好きなZを手に入れようとすると、40年も前のバイクを200万も300万も出して買うことになる。それを否定はしないけれど、それだけの大枚を果たして得られる満足度は、年々と低くなっているはず。だって、調子のいい空冷Zなんて、1日ずつ少なくなっていくものだから。
だから約130万円で新車のZが買えるなんて、本当に素晴らしい! そしてこのZ900RS兄弟は、その期待にたがわない完成度を持ったスポーツバイクなのだ。
(試乗・文:中村浩史)
Z900RSとは違う形状の、タンデム部にタックロールの入っていない専用シート。シート高も820mmとZ900RSより20mm高い。シート下には標準装備のETC車載器がセットされ、シート裏には車載工具がボルトオンされている。ライディングポジションも小変更。 |
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