Japanese Moto-GP rider

■文・写真:川崎 由美子
■写真:JTBヨーロッパ 長島
■協力:スズキ(株)、SUZUKI DEUTSCHLAND GMBH(スズキ ドイツ)、(株)JTB Germany GmbH、JTBコーポレートサービス

 誰もが憧れるヨーロッパ、いつかは交通マナーの良いドイツを走ってみたい。
 アウトバーンや歴史建造物が多く、まるでおとぎの国のような街並みの中をバイクで走ってみたいというライダーも多い。
 そんなライダー達の夢をかなえた「川崎由美子と行くドイツロマンチックツーリングツアー」の様子を3回に渡ってお届けします!

 かれこれ30年前に四輪でドイツを走った時、あまりの交通マナーの良さにカルチャーショックを受けて以来、いつかまたドイツを走りたいと思い続けていましたが、たまたま家族の仕事の関係で2006年から2013年まで8年間ドイツに住むことになったのです。その間は欧州各地をツーリングしたり、それぞれの国の交通文化の違い等を肌で感じました。そうしていつかは“欧州のこの合理的な交通文化、特にドイツのマナーの良さなどを日本のライダーの皆さんにも体感していただきたい。そしてそこから感じ得たものを、帰国後にそれぞれのバイクライフに役立てていただけるようなツーリングツアーが出来たらいいなあ”と夢描いていたのです。
 予てからこの夢のツーリングツアーを、友人でもある四輪・二輪ディーラーの主濱さんにご相談していまいした。主濱さんのアシストにより、ドイツのスズキユーザークラブのアンバサダーでもある浅野さんからも「ぜひやりましょう!」と、さらにSUZUKI Club代表のヨリッグさんからも「由美子いつやるんだい? 早くやろう」という声かけと共に背中をポンと押していただきました。そんな大切な友人たちに支えられ開催する事になったのです。
 やると決まったら話はトントンと進みました。参加者の皆さんに“安全、安心をご提供できるように”ということでJTBさんに旅のすべてをお願いしました。肝心のレンタルバイク等のマシン関係はスズキドイツさんにご協力いただけることになり、SV650 ABSに決定しました。さらにスズキドイツのテストライダーのオッファー氏や、 SUZUKI Clubのドライバーでもあるワーナーさんがトランスポーターを担当するなど、この上ない強力なスタッフ陣に囲まれての開催となったのです。
 ツーリングは危険を伴う事も想定しなくてはなりません。安全に進行するためのノウハウを持ち備え、現地に精通しているスタッフ陣という事で大変助かりました。
 
 ドイツ国内には8つの街道があります。北からエリカ街道、メルヘン街道、ゲーテ街道、古城街道、ロマンチック街道、ファンタスティック街道、アルペン街道です。今回のルートは、その中でも人気の高い「ロマンチック街道」を選びました。古城のあるヴュルツブルクから、中世の町そのものを感じるローテンブルクに立ち寄り、さらに南下しアルプスのふもとに位置するフュッセンまでの約350Kmの素敵な街道です。
 ……と前置きが長くなってしまいました。
 さて、準備も整いましたので、ツーリングに出かけましょうか。
 ドイツの旅にWillkommen(ようこそ~)!

 

■第1日目(9月3日・日曜日) 一路フランクフルトへ! まずはビールで乾杯。

 午前9時半、成田空港の第2ターミナルJTB専用受付に集合したメンバーは、それまで渡航手続き等を担当してくださっていたJTBの木村さんに見送られ、一路フランクフルトへ。
 今回のエアラインは、JAL。日系エアラインは何かあった際の迅速な対処はこれまでの渡航で感じていたという事、また無料預け荷物容量が23kgのスーツケース2個まで可能なので、何かとライディングギアなどかさばる物が多い事を考えると、やはり日系になってしまうのは否めないのです。

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前列左がJTBの木村さん、後列左より谷口さん、柿田さん、三谷さん、今村さん。 大阪からトランジットで合流した宮崎さん(写真右)、この後チェックインを済ませ、ゲートで全員集合しました!

 フランクフルト空港では、添乗のJTBドイツ、長島さんが到着ロビーでお出迎え。一行は小型バスでフランクフルトから約40キロ離れたニアシュタインのホテルへ。
 ここニアシュタインはとても静かな街で、ドイツ国内で唯一日本人が営む浅野さんのワイナリーがあります。
 夕食は近くのレストラン。先ずは旅の疲れを取るべくドイツビールで乾杯! 9月はまだまだ夜が明るいので、ついつい時間が経っている事を忘れてしまいます。
 初顔合わせの方々もいらっしゃるというのに、みなそれぞれがあっという間に打ち解けます。すぐにLINEグループを作成して、連絡をLINEで共有しながらの旅が始まったのです。

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フランクフルト空港では、JTBドイツの長島さんが到着口までお迎えに来てくださいました! みんなウッキウキ~! ニアシュタインの街で、先ずはドイツビールで乾杯! Prost(独語:プロースト!乾杯)

 

■第2日目(9月4日・月曜日) SV650 ABSと女子6人のツーリングが始まった。

 いよいよバイクとのご対面の日。ホテルでセレブ~な朝食の後、ライディングウエアに着替えてベンスハイムにあるスズキドイツへチャーターバスで向かいます。

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ホテルの朝食は、こんなに種類があるバイキング。食べきれないくらいのハムやパン、サラダを堪能し、一日のエネルギー補給には大満足なセレブ女子たち。

 

 スズキドイツに到着!

 バスが門を入り玄関先まで来ると、今回の旅の友となるSV650 ABSがきれいに勢揃いして私たちを出迎えてくれている姿にみんな思わずバスの中で「すご~~い!」「カッコいい!」の連呼。あまりの感動にちょっと涙が出ちゃいました。
 
 “WILLKOMMEN”(ようこそ)の文字はいつどこで見てもうれしいです。
 
 今回のマシンは、すべてスズキドイツからのレンタルです。同じSV650 ABSでもカラーリングなどちょっとずつ異なっているところが新鮮でした。
 ミーティングルームで今回の旅に関わってくださっている方々の紹介と、ツーリングに関しての説明の後、いよいよバイクとのご対面。

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ドイツスズキのスタッフの皆さん。右から土澤氏、シュタイマン氏、ヨリッグ氏(SUZUKI Club)、オッファー氏(スズキドイツテストライダー)、アドナン女史(バイクの手配全般担当)、ワーナー氏(トランポドライバー)、浅野さん(SUZUKI Clubアンバサダー)。 ずらりと並べられたSV650 ABSの雄姿は圧巻。
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社内で事前ミーティング。注意事項や確認事項、ライディングに関することなどのレクチャーを受ける。 レンタルバイクの手続きの書類などにサインしたり、どのバイクがいいかをチョイス中。 さあ、いよいよプレツーリングに出発しま~~す!

「好きなバイクをチョイスして」ということで1台1台跨ってみては、一番気になる足着きやライポジ等をチェック。少し足着きに不安があると、ツーリングの先導を担当するテストライダーのオッファー氏が一人一人の意見を聞き、納得いくまで調整してくれるのです。この優しさは脱帽でした。
 この日は、プレツーリングとしてベンスハイムから約150km離れたダイデスハイムへ。
 ランチタイムはちょっとおしゃれなレストランのガーデンだったのですが、参加者の皆さんにはツーリングで初めての食事に何もかもが新鮮に映ったようでした。

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Flamkuchen(フラムクーヘン)は、”Flam(炎)+Kuchen(ケーキ、焼き菓子)=熱い炎で焼いたお菓子(ケーキ)”という意味で、どちらかというとちょうど薄いピザに似た感じ。薄い生地にサケや玉ねぎ、ベーコンなどをトッピングして焼いたもので、なんとこれは一人分の大きさだが、ペロリとたいらげることができるくらい食感も軽くておいしい。 ランチタイム。旅の安全を祈って、ソフトドリンクで乾杯! 定番のシュニッツェルにポテトは欠かせない。

 今回のツーリングの参加者は、私を含めて女性6名。先導にオッファー氏、2番目にオッファー氏と打ち合わせができるように私が入ります。3番、4番目に参加者、5番目に浅野氏、そして6番目、7番、8番目は参加者の方々、最後尾にはヨリッグ氏という具合に信号などで途切れても対処できるようにしました。
 そしてトランスポーターには、運転手のワーナーさんと長島さんが乗り込み、先に到着していて駐輪場に誘導してくださるので、大変気が楽でした。
 そうなのです、このようにバイク隊とトランポは渋滞などの関係もありバイク隊と同じルートを走らず、先回りをして私たちを待っていてくださったのです。行く先々でSUZUKIのサポートカーを探すのが楽しくなってきていました。
 
 海外を初めて走るという方々も難なく走行し、宿泊ホテルへと無事戻りました。
 夜は、スズキドイツの関口社長(当時)、今回のバイク関係一切合財を仕切ってくださったスズキドイツの土澤さん、そしてJTBドイツの斎藤さんを交えてウエルカムパーティーが、なんと浅野さんのワイナリーで行われたのです。

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ウェルカムパーティにはおいしい浅野さんのワインやお寿司などもあり、もうお腹いっぱい。 スズキドイツの関口社長(後列左から3番目)を囲んで、ツーリングの事や、海外での女性の働き方、バイクの話など話題が途切れることなく、楽しい時間が過ぎてゆく。
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ドイツ国内で唯一の日本人醸造家でもある浅野秀樹さんは、300年の歴史あるSTRUBワイナリーでご自身の名前の付いたワイン”HIDE’s WINE 639”を造っている。この春からANA国際線ファーストクラスで出されることになった。もう一つの顔を持つ浅野さんは、ドイツのスズキゆーざーくらぶであるSUZUKI Clubのアンバサダーもされている。愛車はスズキSV650 ABS。また、ワイナリー内では、スズキのATVのKINGQUADを使用している。

 

■第3日目(9月5日・火曜日) ロマンチック街道を走り出す。

 さていよいよ本格的なツーリングの始まりです。
 お天気は良いのですが少し肌寒いヨーロッパの朝。それでも気持のよい朝を迎えた皆さんはちょっと緊張してバイクに跨り、再び隊列を組んで目的地のローテンブルクへ。
 ルートのほとんが一般道なのですが、時々アウトバーンを走ったりしてそのスピードのメリハリ感に大変驚いたようでした。
 ローテンブルクでは、ランチを一緒にした後は自由行動です。クリスマスオーナメントで有名なお店を見たり、城壁を散策したり、美味しいアイスクリームをほお張ったりと、まったり女子力満載な時間を過ごして充実した観光が出来ました。
 その後はディンケルスビュールの街を散策し、ツーリング最初の宿泊ホテルがあるネルトリンゲンへ。
ツーリング最初のホテルへ。
 今回の旅では、サポートカー(トランスポーター)の中に参加者やスタッフ全員のスーツケースを入れて移動の為、バイクに荷物を積載することの手間を省ける事が一番楽でした。

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ローテンブルクの街を見渡せる丘で休息。ドイツのアイスクリームは美味しいですよ。
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城壁の町ローテンブルグに到着。トランポが先回りをして、私たちの到着を待っていてくれるので、とても安心。 中世の町並みが残っている。まるでおとぎの国のような街、ローテンブルクはロマンチック街道の中でも大人気の町。 ネルトリンゲンのホテルの部屋には、なんとこんな素敵なウェルカムグッズが到着を待っていてくれて大感激。これはSUZUKI Clubからのものだが、こういう粋な計らいが女子にはたまらなくキュンとしちゃうのです。

 さて、日本を出発してから3日が経ち、いよいよ4日目からは一日の走行距離も伸びるツーリングの始まりです。(続く)

[ちょっとこ覗き見しちゃいたい情報]

 日本と欧州の交通事情の違いってあるの? という事で、ツーリングにちなんだものからご紹介していきます。

★欧州の交通事情のあれこれ

今回のツーリングで遭遇した日本とドイツの交通事情の違うものを取り上げてみました。

*アウトバーンは本当に無制限なの? 無料?

 誰しもが憧れてしまう“夢の道路”みたいな感じで捉えられている方も多いかもしれないのですが、この名称はただ単にドイツ語で“高速道路”という意味なのです。
 高速道路代は四輪・二輪共に無料ですが、1995年1月より12トン以上の大型トラックは有料になりました。徴収方法は料金徴収所を設置しなくても走行距離で料金の支払いが可能なGPSで排気ガス量や車軸数によって料金がきまる徴収方法で1Kmあたり0.141~0.288ユーロ(約18.5~37.9円)としているようです。二輪の高速代が高い日本からすると羨ましいアウトバーンの料金体制ですよね。
 金額以外に一番興味のあるのは制限速度についてだと思います。基本的にスピード制限がある区域と、無制限の区域があります。オランダやベルギーなどの近隣国では120Km/h ないし130Km/hと最高速度を限定している国が殆どです。無制限がある国はドイツのみですが、制限のある区域では皆きちんと速度を守って走っています。例えば無制限区域を走っていたとします。前方に速度標識が見えた途端に減速をしその速度に合わせます。
 なぜこんなにスピードに忠実になれるのか、と考えだすと理由はいろいろありますが、ドイツの場合、予想もしない場所に移動オービスが設置されていたりするのです。ある時は工事現場のパイロンのどこかに設置したりするので、例え5km/hオーバーでも写真を撮られ証拠写真付き書面が郵送されてくるので、気が抜けない状態でもあります。
 また、小さな街に入る際には必ずと言っていいほど、速度制限の看板があります。ほとんどが30km/h制限の場合が多いのですが、要するに住民が暮らしている街であるため、スピ―ドを制限しなさいという事なのです。速度看板と共に、常設のオービスが設置されています。
 これは慣れるとすぐに判別できるのですが、常設以外に路上駐車しているツーリングワゴン車内の後部に特設カメラが設置されている移動オービスがあります。これも気を付けて駐車している車の車内後部を見ると赤いレンズのカメラがドンと構えているのが判別できるのですが、速度指示に従って走らないと痛い目に合う事もあるのです。
 バイクなら大丈夫、なんていう事は言っていられないのが海外。オービスも前方からだけでなく後方から撮影するカメラもあって、その時の借主を追跡して来るので、海外を走る場合には要注意です。そんなこともあり、ドイツでは“スピード制限を守る”という事に関しては徹底されているのかもしれません。

*免許制度は?

 EUの場合、二輪の免許は日本の普通二輪のカテゴリーがない為、今回の参加者の中で日本では普通二輪の免許証と言う方も、ドイツでは大型に乗車が出来たのです(国際免許の取得が必要)。

*踏切は一旦停止無し

 海外では踏切に差し掛かった際に、遮断機が下りていなかったり警笛が鳴っていなかったらそのまま通過します。日本のように一旦停止していたら後続車からホーンを鳴らされてしまったり追突の危険を伴ってしまいます。最初は驚いてしまいますが、慣れれば非常に合理的だなと思います。

★旅のしおり

9月3日(日)成田空港→フランクフルト JAL使用
9月4日(月)ニアシュタイン→ベンスハイム→ダイデスハイム→ニアシュタイン
9月5日(火)ニアシュタイン→ローテンブルク→ディンケルスビュール→ネルトリンゲン
9月6日(水)ネルトリンゲン→ホーエンシュヴァンガウ→フュッセン
9月7日(木)フュッセン→バーバリアンアルプス→ミュンヘン
9月8日(金)ミュンヘン→ヴュルツブルク→ゲミュンデン
9月9日(土)ゲミュンデン→ベンスハイム→フランクフルト
9月10日(日)フランクフルト 夕方フランクフルト発
9月11日(月)成田空港着

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●川崎 由美子 プロフィール

モーターサイクルジャーナリスト&アンサンブルピアニスト
バイクとピアノとパンがあれば生きていけるソリストライダー。
8年間のドイツ生活の経験を活かし、テレビ、ラジオ、雑誌等で
生活全般、交通全般の情報を発信中。
二輪車安全運転指導員でもありビギナーや女性ライダーの頼れるお姉さま的存在。
現在ラジオNIKKEI RN2『ライダーズ』にてバイクとピアノのコラボ企画
「由美子の部屋」に準レギュラーとして出演中!
公式ブログ:http://yumiko91.at.webry.info


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