ドゥカティCEOのクラウディオ・ドメニカーリがステージに上がり、4機種のニューモデルを発表。 |
東京モーターショーが終わったばかりなのに、ヨーロッパではEICMA/ミラノショーが始まった……いや、もうすぐ始まる。それに先立ち、各メーカーがプレスカンファレンスを開催。今年はドイツでのインターモトがないだけに、各メーカーとも気合いが入っている。まずはドゥカティの様子を、現地ミラノから河野正士さんにレポートしてもらおう。
■レポート&写真:河野正士
いよいよ始まりました、2017年のEICMA/ミラノショーです。いや正確にはまだ始まっていなくて、プレスデイが11月7日(火)、8日(水)の2日間、その後11月9日(木)から12日(日)が一般公開となります。
EICMAは欧州最大、いや世界最大級のモーターサイクルショー。メーカーの企業姿勢や新しい技術を発表する「東京モーターショー」における国産二輪メーカーの取り組みとは違います。翌年、または再来年に各メーカーがラインナップする(であろう)ニューモデルが発表される場所なのです。
夢は未来ではなく、翌年に手に入る最新バイクって訳です。そこに20万人とか30万人が集まるのです(不思議なことにここ数年EICMAは正確な来場者数を発表していません)。偶数年は10月にドイツ・ケルンでモーターサイクルショー/INTERMOT(インターモト)が開催されるので、各メーカーのニューモデル発表バランスが変化するのですが、奇数年である今年はEICMAのみの開催なので、各メーカーがここに照準を合わせてニューモデルを発表するのです。
もう少し前置きを。通年なら、プレスデイ前日にEICMA会場とは違うミラノ市内のイベント会場でドゥカティ、ヤマハがプレスカンファレンスを開催。2015年からは、そこにホンダが加わっていました。しかし今年はドゥカティがプレスデイ2日前の5日(日)にプレスカンファレンスを開催。今日は、そこでの様子をレポートします。前置き長くてスミマセン。
いくつか発表された2018年モデルにあって、一番の注目はV型4気筒エンジンを搭載したスーパースポーツモデル「DUCATI Panigale V4(パニガーレV4)」でしょう。そしてスクランブラーファミリーには、長男的な存在として大排気量エンジンを搭載する「DUCATI Scrambler 1100(スクランブラー1100)」が加わりました。またムルティストラーダは排気量をわずかにアップした「DUCATI Multistrada1260(ムルティストラーダ1260)」を発表。最後が「DUCATI 959 Panigale Corse(959パニガーレ・コルセ)」。“スーパーミッド”と呼ばれた水冷L型2気筒4バルブデスモエンジン/スーパークアドロを搭載する最上級モデルです。
カンファレンス冒頭は、今週末に最終戦を迎えるMotoGPライダーが登場し、会場を沸かせました。最初は「OCTO PRAMAC RACING」のダニロ・ペトルッチが、つぎに「Ducati Team MotoGP」からホルヘ・ロレンソと、タイトル争いを展開するアンドレア・ドビツィオーゾです。決戦の週末を前に、“ドビは来ないかな?”なんてヤマを張ってたのですが見事に外れました。そして登場の時、最後の記念撮影の時には“ドービ!ドービ!”と歓声が。さすがイタリアです。
すこし順番が前後しますが、「DUCATI 959 Panigale Corse(959パニガーレ・コルセ)」の発表には、今度は先週末に最終戦を終えたばかりの、2017スーパーバイク世界選手権でシリーズランキング2位を獲得したチャズ・デービスが、また「DUCATI Panigale V4」の発表にはMotoGP機のテストライダーを務めるミケーレ・ピッロが、そしてそして「DUCATI Panigale V4 Special」の発表時には同じくMotoGP機のテストライダーを務めるケーシー・ストーナーが登場しました。これだけのタレントを抱えているドゥカティはやっぱり凄いです。
●「DUCATI Panigale V4(パニガーレV4)」
V4エンジンの迫力がガーンと! と想像していたのですが、じつにスマート。タンク幅はいままでのL型2気筒エンジンと変わらない気がするし、エンジン幅も気筒数が増えたデメリットを感じさせません。タンクカバー下部とフロントカウルが一体成型されたり、ヘッドライト内側がエアダクトとなり、その造形がMotoGP機の“ウイング”のようであり、デザイン的にも新しいチャレンジを感じます。
またフレームはエンジンをストレスメンバーとして使い、そのエンジンから“生える”ようにフロントフレームとスイングアーム、そしてシートレールを装着するモノコックデザイン。このV4では、そのコンセプトをさらに進化させているそうです。またこれまでフレーム左サイドにセットされていたリアフレームは、いわゆる一般的な、スイングアームとフレームの間に縦に配置。リアサス上部はジョイントパーツを介してエンジン後ろ側シリンダーに連結されています。リアサスは車体やや左側にオフセットされているので、V4の後ろシリンダー左側、という感じでしょうか。
スタンダードは新世代のエレクトロニクス・コントロールとともに、SHOWA製BPFフォーク+ザックス製フルアジャスタブルリアサスを装着。Sモデルとスペシャル・モデルは前後オーリンズ製の第二世代電子コントロールシステム/Smart EC 2.0システム搭載の電子制御サスペンションと鍛造アルミホイールなどを装着。さらにスペシャル・モデルはカーボンパーツを多数装備しています。
●「DUCATI Scrambler 1100(スクランブラー1100)」
個人的には、ちょっと不意打ちだった感のあるスクランブラーの兄貴分。エンジンは、水冷化される前の、モンスター系に搭載されていた1079ccの空冷L型ツインです。資料によると1960年代にドゥカティがラインナップしていた“スクランブラー”モデルは250/350/450ccの3つの排気量をラインナップしていました。そして現代のスクランブラーにも3つの異なる排気量(400/800/1100cc)を揃えたと。それを受け止めるフレームは専用設計されたもの。
実車は、少しマッチョになった感じです。排気量が増え、マシンのキャパが広がれば、その機能を充実させたくなるもの。それを証明するように、このスクランブラー1100には、アクティブ/ジャーニー/シティの3つのライディングモードを装備。またトラクションコントロールシステムとともに、コーナーリングABSも搭載されています。オーナーの個人的な趣向にフィットさせる=パーソナライズという、スクランブラーのコンセプトは変わらないとのこと。要するに1100であって、この車体は素材だと。その素材の機能を充実させると言うことは、スクランブラー・シリーズとしてのモデル群ピラミッドをさらに強固なものとし、イメージやスタイルだけでなく、機能面においてもドゥカティ・ブランドのモデルラインナップとの切り離しを進めたのではないかと想像します。
スクランブラー1100はスタンダードモデルに加え、ドレスアップパーツが装備されたスクランブラー1100スペシャル、オーリンズ製前後サスペンションを装備したスクランブラー1100スポーツをラインナップ。
●「DUCATI Multistrada1260(ムルティストラーダ1260)」
少しだけ排気量アップ!? というイメージですが、結構変わってるようです。エンジンはストロークを36mm伸ばして排気量をアップ。コンロッドやシリンダーだけではなく、クランクシャフトも変更されています。そしてDVTシステムのキャリブレーション(可変タイミングやオーバーラップなど)にくわえ、吸排気系も見直されているようです。
またフレームも変更。ステアリングアングルを24度→25度、+48mmのスイングアームなどによってホイールベースは+55mmとなっています。サスペンションはフロントにKYB製/リアにザックス製を使用。東京モーターショーのKYBブースで電子制御サスペンションのコンセプトモデルを見たばかりだったので、KYBの電サス!? と思ったのですが、セミアクティブサスを持つSバージョンはザックス製サスペンション装備となっていました。ちなみにパイクスピークモデルはオーリンズ製サスペンションを装着しています。
●「DUCATI 959 Panigale Corse(959パニガーレ・コルセ)」
ドゥカティL型ツイン・スーパースポーツの最先端、ですね。オーリンズ製前後サス、型式認証を取得したアクラポビッチ製チタンマフラーなど、盛りだくさんです。