xsr900_run_title.jpg

ヤマハ
_DSC0339.jpg
XSR900のライディングポジション。ライダーの身長は170cm。(※写真上でクリックすると両足時の足着き性が見られます)

 
 少し前から、海外を中心にネオレトロとかネオクラシックという、古いバイクのルックスにしたカスタムをネットでも多く見るようになって、盛り上がりを感じていたけれど、その後、欧州メーカーから同じようなコンセプトの新型車が出るまでになったことで、その流れが確実にあることがはっきりした。
 日本では’90年代の頭にネイキッドブームが大型にも波及して、’70年代、’80年代頭にあった4気筒スポーツ風のレトロなモデルが販売され人気が出たことを思い出す。ZEPHYR1100、CB1000 SUPER FOUR、XJR1200など。当時の欧州市場ではそれがほとんど理解されず、「なんでわざわざ古くするの?」と向こうから言われたと某メーカーの人に聞いたことがある。それが今や欧州がレトロなんだから面白い。
 
 MT-09との違いは跨ってすぐに感じられた。外装が違うのだから雰囲気や体が接触する部分がちょいと違うのは当たり前なのだが、何よりシートが高い。スペックでは座面そのものが15mm高くなっている。そして上にせり上がった細身の燃料タンクに下半身が挟まるようにピタッとフィットするMT-09と比べ、伸びた燃料タンクでやや後ろに座ることになって、燃料タンクは前のせり上がりが小さく、前方向に動きやすい反面、身長170cmで足が太く短い私には燃料タンクの角面がフトモモに差し込み、ニーグリップが張り付くようにピタッとくる形状ではない。タンク単体でデザインが完結している昔のテイストなので、’80年代初頭からライダーをやっている身としては経験してきたものであり気にはならないけれど。
 バーハンドルのグリップ位置やステップ位置はMT-09と同じだという。走っていると腰高感があって、開放的である。MT-09のダイヤモンドフレームの車体と直列3気筒DOHCエンジンを使いながらも、いろいろ手が入っているところが興味深い。走りだして街中での、信号停止、右左折、ちょっとした渋滞で頻繁に停止から発進を繰り返したら今回初採用になったアシスト&スリッパークラッチの効果のおかげでクラッチレバー操作が軽くなったことが実感できた。
 

_DSC0367.jpg

 
 エンジンについて、もうひとつの話題としてはトラクション・コントロール・システムを採用したこともあげられる。MT-09 TRACERにも装備されているけれど、オン・オフの切替のみ。このXSR900はさらに進んで、オフ、オンがモード1、モード2と細かく選べるようになった。ものすごく晴れた舗装路で、常識的な走りをしたこの試乗で、その恩恵をほとんど体感出来なかったけれど、車体がバンク中からスロットルを開けていくシーン、μの低い路面状況では心強い味方になって、安全性と楽しさの幅を広げてくれるだろう。
『STDモード』を基本に、より活発に走れる『Aモード』、控えめに走れる『Bモード』の3つの走行モードは変わらないけれど、印象が違う。最高出力で走れるAやSTDのモードにして走っている時に、より低中速が扱いやすくなっていた。MT-09のスロットル操作に機敏に反応してグイグイ前に出るテイストは、上級者にはものすごく面白くて快楽的だけど、運転レベルや好みによっては機敏すぎると感じる人もいるだろう。ちょっとスロットルを開けたらビュッと飛び出す部分が、リニアに反応しながらも、制御が楽になっている。
 
 前後のサスペンションが固められていることもあって、ぐいっとサスが入ってからしなるように路面をトレースするMT-09より、沈み込みが小さく、右手の制御により、エンジンパワーが出て、車体が反応する、一連の動きのレスポンスが良く、ダイレクト感が出た。高速道路のレーンチェンジなどが機敏で、独特なポジションと見た目もあって気持ちいい。これはスーパースポーツをベースにしてネイキッドカスタマイズをしたストリートファイターに近いか。ベース車両を体験したことがある人は思わないだろうが、レトロな外観から、よりまったりとした味付け、と思ったら間違いだ。MT-09とはちょいと違う、俊敏なロードスポーツに仕上がっている。考えみると、こういう部分も、今流行のネオクラシックスポーツ的なのであろう。
 これは古さを懐かしむものではない。車名にヤマハ4ストロークの初代モデルと同じ“XS”の文字が入っているけれど、デザインも含め、過去のヤマハモデルを手本としていない。あくまでもちょっと昔のバイクらしいディテールを散りばめた、現代的な走りを持ったモデル。例えるならリバイバルファッションのようなものか。凝った見た目に負けないくらい手を入れ変化している走りで、趣味性が強く、良い意味での「クセ」を手に入れている。
 
(試乗:濱矢文夫)
 

_DSC0171.jpg _DSC0200.jpg _DSC0210.jpg
水冷直列3気筒エンジンをアルミ製フレームに搭載するMT-09をベースに開発された“Neo Retro”(「スーパースポーツ」「ネイキッド」といった従来のカテゴリーを超え、レトロな外観やその背景の物語性を秘めながらも、先進技術に基づくエキサイティングな走りを楽しめるモデルのカテゴリー)の世界を提唱するニューモデルがこのXSR900だ。 A&S(アシスト&スリッパー)クラッチを採用。減速時の穏やかな車体挙動、軽いクラッチ操作荷重により市街地での軽快な走りに貢献している。クラッチ操作荷重は「MT-09」比約20%も低減。 メーターパネル内にTCS(トラクションコントロールシステム)の作動状況「1(弱)」「2(強)」「OFF」を表示。
_DSC0156.jpg _DSC0167.jpg _DSC0160.jpg
3分割フェンダー(アルミ製フェンダーステー)、対向4ピストンラジアルマウントキャリパー、ABSを採用。 クロスプレーンコンセプト”に基づく845cm3の水冷直列3気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。YCC-T(電子制御スロットル)やメッキシリンダー、アルミ鍛造ピストン、1次偶力バランサー、FS(破断分割)コンロッドなども投入、走行状況や好みに応じてエンジン特性を3種から選べるYAMAHA D-MODE(走行モード切替システム)も採用している。 丸形サイレンサーカバー。新デザインのマフラープロテクター、アルミ製リアフェンダーを採用。
_DSC0188.jpg _DSC0182.jpg _DSC0179.jpg
アルミ製タンクカバー採用。燃料タンクの容量は14リットル。 ステッチ入りダブルシート。アルミ製サイドカバーを採用。 丸形テールランプが乗るアルミ製リアフェンダー。
_DSC0114.jpg _DSC0119.jpg
■YAMAHA XSR900(EBL-RN46J ) 主要諸元
 
●全長×全高×全幅:2,075×815×1,140mm、ホイールベース:1,440mm、最低地上高:135mm、シート高:830mm、車両重量:195kg、燃料タンク容量:14リットル●エンジン種類:水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ、排気量:845cm3、内径×行程:78.0×59.0mm、圧縮比:11.5、最高出力:81kW(110PS)/9,000rpm、最大トルク:88N・m(9.0kgf-m)/8,500rpm、燃料供給方式:電子制御燃料噴射、点火方式:TCIトランジスタ式、始動方式:セルフ式、潤滑方式:圧送飛沫併用式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング●フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター:25°00′、トレール:103mm●サスペンション:前・テレスコピック、後・スイングアーム(リンク式)●ブレーキ:前・油圧式ダブルディスク、後・油圧式シングルディスク、タイヤ:前・120/70ZR17M/C 58W、後・180/55ZR17M/C 73W●メーカー希望小売価格:1,042,299円(4月15日発売)


| 新車プロファイル「YAMAHA XSR900」のページへ |


| ヤマハのWEBサイトへ |