幻立喰・ソ

第69回「胸騒ぎの東池袋(胸焼けに非ず)」

 
 多くの常連さんに見送られ、2016年3月25日残念ながら幻立喰・ソになってしまった平和島のあさま。すっとこどっこいな私は、肝心要、要潤さんはうどん県のまわしもの、じゃなくて肝心な店名の由来を聞き忘れていました。「しょうがないよね。いつものことだもん」と、恒例の開き直り&「また謎が増えた」でお茶を濁しまくっておりました。立つ鳥跡を濁さずとシャッターを下ろしたあさまに対するあまりの無礼を見かねた坂崎師匠から、またも温かい、温かすぎてああん、もう、好きにして♡と身も心もゆだねてしまいそうな助言をいただきました。

 私が大将だと信じて疑わなかった方は店長さんで、社長さんは別にいらっしゃるそうです。その社長のご出身が長野。出店に当たり「そばの本場は信州だから、信州そばとか、信濃そばとかいいんじゃないか」と考えたそうです。そしたらすでにかの「信濃路」があったので「似たような名前じゃなぁ」としぶしぶ「あさま」にされたそうです。
 へえ〜、あさまと信濃路にそんなドラマがあったとは、ツユしらず(ソだけに)、とへらへらしている場合ではありません。師匠、ありがとうございました、ほんといつもながら勉強になります。

 さらにもうひとつ。あさまは平和島で35年間営業したのですが、その前はお隣のお隣、立会川で10年間営業していたそうです。
 さらにさらに麵は店長が自宅で製麺した自家製。通い箱があったので自家製ではないと思っていた方、結構いらっしゃるようです。もちろん私もその一人。
 さらにさらにさらに、なつかしい味なんだけど業務用? と思い込んでいたカレーは、なんと明治のカレールーベースで、これまた自家製だそうです。
 あさま様、重ね重ねの非礼無礼、どうか平に平にお許しください(平和島だけに)。

 それにしても、毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度毎度こんな裏情報をさらっと教えてくださる師匠、遭難した冬山でいただく天玉そば、または遭難した砂漠でいただく冷やしタヌキそばを越える滋味にあふれています。ドリームジャンボ3億円が当たったら立喰・ソ博物館建設よりも「昭和立喰・ソ大全・全18巻」の執筆をお願いしようと心に誓いました。だから当ててください、ソの神様。

 先日、なんと坂崎師匠と偶然ステーキそばでおなじみ、銀座の陶(現役店ですが、伏せ字では失礼千万です)で一献させていただきました。おもしろいお話たくさん聞かせていただき、至福のひとときを過ごしました。どうもありがとうございました。そして、陶のかこママ、おいしいお料理とお酒ごちそうさまでした……あっ、かんじんのソ食べるの忘れた。



陶


陶
花の銀座で美味しい料理で一杯やって、シメのそばまで食べられる。そんな夢のようなお店が陶です。美人女将のかこさんの繰り出す料理もスマイルもたまりません。今度は間違いなくステーキそば食べないと。あ、師匠とのツーショット、撮るの忘れた……(2016年4月撮影)

 立喰・ソ帖を眺めていたら、まるで記憶に残っていない立喰・ソがちらほらと出てきました。写真を見返してみても「ほんとに行ったのか? 食ったのか? そもそもそんな立喰・ソがあったのか?」という、「ばんごはんまだですかいのう」状態です。これも単なる老化現象と片付けるのはいとも簡単なのですが、そのくせへんなことは憶えていたりします。

 例えば大森駅南口にあった赤乃れん。立喰・ソ帖を見れば2003年6月に玉丼セット(510円)をいただいたようです。写真も残っていましたが、写真を見てもまるで思い出せません。2013年ごろ、この並びのお店にトラックが突っ込んだのは憶えていたりするのに。



赤のれん

赤のれん
大森駅の南口横の商店街に赤乃れんはありました(といいますか、写真から判断するとあったようです)。記録では玉丼セットをいただいたようですが、ソの写真しか残っておりませんでした。立喰・ソ帖の記述によると、純立喰・ソというよりも、軸足は呑み屋、定食屋部門だったようです。(2003年3月撮影)

 
 代々木の駅前にあったのが謎の多い? チェーン店の笠置そば代々木店。マニアには有名な代々木会館の一階にあったようです。2005年11月にかき揚げそば(330円)をいただいたはずですが、これもまたまったく記憶にありません。ですが、お隣のラーメン屋の昭和感丸出しの店内で、250円の激安ラーメンを食べたことは憶えていたりするのです。



笠置そば


笠置そば
代々木と言えば共産党、じゃなくて、代々木の九龍城? こと代々木会館。その1階に笠置そばはありました。と言いますかあったようです。(2008年1月撮影) そばやと書いてあるのが笠置そば(たぶん)、その奥がラーメン屋さん。なんというお店だったのか、それは記憶にございません……(2006年9月撮影)

 東池袋駅を出ると目の前に六花そばがありました。お休みでしたが、近づいてみると胸騒ぎの貼り紙が。
「いつも当店をご利用いただき、ありがとうございます。突然ですが、このたび諸事情により、東池袋店を閉店することになりました。皆さま方には20余年の長きにわたりご愛顧を賜りまして、心より厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。」
 え〜、たった今出会ったばかりなのに、もうお別れなんですか!?  

 東池袋に来る前には日暮里駅でも胸騒ぎの貼り紙を見たばかりです。
「平素は、当店をご愛顧賜り、厚く御礼申し上げます。ご利用のお客様にご案内申し上げます。当店は駅改良工事の為、平成二十八年四月三十日(土)をもちまして閉店させていただきます。これに伴い、かけそば回数券の販売につきましては、三月三十一日(木)限りで終了させていただきます。お手持ちのかけそば回数券につきましては、引き続きご利用いただけますが、五月一日以降、左記の店舗にてご利用いただけますので、引き続きご愛好をよろしくお願い申し上げます」
 感動の北海道の小もろといい、出会い=お別れパターンが増えているような…気がします。きっと、気のせいだと誰かに言ってもらいたいです。



六花


大江戸
六花そば東池袋店は2016年4月28日までだそうです。(2016年3月撮影) 日暮里駅の大江戸そばは30日まで。NREはいろり庵きらくブランドへの統一に邁進しているようです。(2016年3月撮影)

 六花そばはお休みで、残念ながらまた未食店(後悔マイレージともいう)が増えちまったと、立喰・ソ帖を再びながめると、六花そば東池袋店でたぬきそば300円を食べたという記述が……えっ! もう訪問済み? ホッとするやら怖くなるやら残念やら、かなり複雑な心境になりましたが、そんなことはどうでもいいのです。熊本の地震、いつになったら収束するのか。一日も早い収束を願うばかりで迎える皐月五月です。



六花


六花
看板は変わっていますが、間違いなく六花そば東池袋店です。(2005年1月撮影) 珍しく定点観測っぽい写真になっていました。(2016年3月撮影)

●立喰・ソ(じゃないけど)NEWS 2016

東池袋から都電沿いの道をとぼとぼ歩いて雑司ヶ谷霊園あたりまで来たら、ただならぬ気配が。パトリック・ラフカディオ・ハーンでおなじみの小泉八雲先生他、あまたの有名人が眠る墓地の横ですから何らかの気配を感じても当然ですが、フランキー堺さんの名司会でおなじみ「霊感ヤマカン第六感」がZero〜♪ な私ですから、そっち方面ではありません。都電雑司ヶ谷電停を挟んで向こう側が霊園、妖気ならぬ陽気は反対側からむんむんです。陽気に誘われて歩いて行くと、こ、この壁画は、まごう事なき小型え日記でおなじみ津無理せんせいの作品!? みなさまも雑司ヶ谷霊園へご参拝の折はぜひご鑑賞を。



雑司ヶ谷

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。現在800店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけで、たいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


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