EICMA_report_part4_title.jpg
04_lead.jpg

 だからといって、欧州のカスタム人気が衰えた感じは一切無し。さらに熱を帯び、クオリティを高めてきていると感じました。

03_0207_Custom_002.jpg 04_0207_Custom_003.jpg 05_0207_Custom_004.jpg
06_0207_Custom_005.jpg 07_0207_Custom_006.jpg 08_0207_Custom_007.jpg
↑イタリアのデザイン・カンパニー/ルシアーノ・ディゼニョがデザインしたカワサキNinja H2ベースのカスタムマシン「H2LD」。

 その筆頭として紹介したいのがイタリアのデザイン・カンパニー/ルシアーノ・ディゼニョ。かつてジウジアーロでモデラーとして活躍したエンジェル・ルシアーノさんが、フリーのモデラー&デザイナーとして活躍した後に起ち上げたデザイン・カンパニーで、フリーランスのデザイナーとなってからバイクのデザインを開始。カワサキNinja H2のデビューに衝撃を受け、カワサキ・イタリアにラブコールを送り、良好な関係を築きながら、このH2をベースにしたデザインスタディモデル/H2LDを造り上げたそうです。

09_0207_Custom_009.jpg 10_0207_Custom_008.jpg 11_0207_Custom_016.jpg
12_0207_Custom_012.jpg 13_0207_Custom_011.jpg 14_0207_Custom_010.jpg
↑左右非対称なボディデザインとともに、フレームワークを強調するボディワークを採用。

 イタリアのバイク雑誌で働く編集者の友人・ジャンリコが“彼はヨーロッパのローランド・サンズになり得る”と強力にプッシュしてくれました。
 
 紹介されたルシアーノさんはシンプルでモダンなボディデザインが好みのようで、「H2をカワサキとは違うアプローチでスピードやパワーを表現した」と言っていました。また左右非対称もテーマになっているとのこと。左右対称なイメージが根付いているバイクのデザインですが、マフラーの取り出しやチェーンラインなど、機能パーツは左右非対称に装着されていると。ならばそれを強調しながらも成立する左右非対称なデザインを造り上げたとのこと。もちろんデザインには、すべて理由があると説明してくれました。

15_0207_Custom_013.jpg 16_0207_Custom_014.jpg
↑カワサキとは違うアプローチでスピードやパワー感を表現。

 このEICMA開催直前に、筑波サーキットで開催された“テイスト・オブ・ツクバ”で、全日本選手権や鈴鹿8耐で活躍するチューニングファクトリー/トリックスターが造り上げた“H2レーサー”が発表され、悪天候のなかレースを戦ったのですが、ルシアーノさんとジャンリコの2人はそのマシンのこともよく知っていて、「ヨーロッパで初の、世界ではトリックスターに次いで2台目の“H2カスタムマシン”だ!」と自信満々でした。

17_0207_Custom_019.jpg 18_0207_Custom_018.jpg
デザイナーのエンジェル・ルシアーノさん。↑

 とはいえ、EICMA展示に向けて突貫工事が続いたようで「細かいところまでしっかり撮影されちゃうと粗が出ちゃう」とはにかんでいました。個性的なヘッドライトは、いまはただ並列にLEDライトを並べただけですが、クリスタルレンズの内側をカットし、LED光源に指向性を持たせたヘッドライトをすでに構築しているらしく、今後はその製作に取りかかったり、各部の煮詰めの作業を行ったりするとのことです。というのも、彼の夢は外装パーツの販売であり、コンプリート車両の販売とのこと。2月にイタリア・ベローナで開催されたカスタムバイクショー/Motor Bike Expo(モーター・バイク・エクスポ)では、この車両がカワサキのメーカーブースに展示されていたそう。このカワサキとの良好な関係を続けて、さらに大きく羽ばたいて貰いたいものです。

19_0207_Custom_020.jpg 20_0207_Custom_023.jpg 21_0207_Custom_024.jpg
22_0207_Custom_027.jpg 23_0207_Custom_026.jpg 24_0207_Custom_025.jpg
↑ルシアーノさんが2012年に手掛けたカワサキZ1000ベースのカスタムマシン。

 カスタムシーンにおけるデザイナーという存在は、日本ではちょっと不思議に感じてしまいます。なぜなら日本のカスタムビルダーは、ボディデザインからパーツデザイン、そして板金や削り出しなどの金属加工といった、カスタムマシン製作の多くの作業をビルダー自身で行います。したがってデザイナーが入り込む余地がないのです。または“デザイナーがデザインしたら、カスタムビルダーの作品じゃないじゃん”となります。

26_0207_Custom_030.jpg 27_0207_Custom_032.jpg 28_0207_Custom_033.jpg
↑こちらもルシアーノさんが手掛けたドゥカティ900SSベースのカスタムマシン。イタリアのツインレースでチャンピオンを獲得したマシンをベースに、ルシアーノさんが新たなボディパーツをデザイン。フロントカウルとタンクカバーは一体成型されている。

 しかし欧州では、カスタムシーンのなかにデザイナーが存在します(ルシアーノさんはカスタムシーンに特化しているわけではないです、念のため)。ボディ全体をデザインしたり、パーツをデザインしたり……それどころか金属加工はすべて外注、というビルダーも少なくありません。ではビルダーは何をしているのか……いわゆるプロデューサー的役割です。デザインをまとめ、金属加工をまとめ、多くのスペシャリストをまとめて1台のマシンを造り上げていく、というスタイルです。もちろん、日本人的なビルダーも数多くいます。これはどちらが良いというものではありません。各国、その土地や風土にあったモノづくりがあり経済の生い立ちがあるのです。そしてこういった違いを知ることが、世界のバイクシーンをみる楽しさでもあるのです。

04_midashi.jpg

(※写真の上でクリックすると、大きな画像で見られます)



| 『2016バイクシーンを占うために…EICMAをキリトル!』Part1へ |

| 『2016バイクシーンを占うために…EICMAをキリトル!』Part2へ |

| 『2016バイクシーンを占うために…EICMAをキリトル!』Part3へ |

| 『2016バイクシーンを占うために…EICMAをキリトル!』Part4へ |

| 『2016バイクシーンを占うために…EICMAをキリトル!』Part5へ |