扱い易さと利便性、そしていわゆる“ビッグスクーター”に対して手頃な車両価格で昨今、注目を集めているコンパクト・サイズの軽二輪スクーター。中でも155ccの排気量をもつヤマハのマジェスティSは発売早々台数を増やし、街で見かける機会が多い。その人気の秘密は? 最新2016年モデルに乗って探ってみた。
■撮影:依田 麗
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シティ・コミューターとしての実用面でも抜かりない仕上がり
海外では「S-MAX」の名でデビュー、日本では2013年10月30日より販売が開始された軽二輪スクーター「マジェスティS XC155」。発売以来、軽二輪クラスで好調に台数を伸ばしている人気モデルだが、仕様とカラーリングを変更した2016年モデルが発売となった。
最新2016年モデルの特徴、まずはタンデムシートのクッション厚を増やし、前後サスペンションに改良を施すなど、快適性の向上が図られたこと。また、ボディカラーに新色が設定されると同時に、新グレード「SP」も追加されている。ヤマハ発動機の創業60周年を記念し、イエロー地にスピードブロック模様をあしらった「60th Anniversary」を期間限定予約(2016年4月末まで)による受注生産モデルとしてラインナップしているのもホットなニュースだ。
クローズドコースで試乗(S-MAX 台湾仕様)したことはあるが、マジェスティSを公道でしっかりと乗りこむのは今回が初めてだ(2014年モデルのインプレッションはコチラhttp://www.m-bike.sakura.ne.jp/?p=56364へ)。
写真は2016年モデルより追加されたツートーン塗装の新カラーリングを採用する「SP」。ボディカラーは「ダークグレーイッシュマゼンタメタリック1」(パープル)。 脚の長さやソールの形状にもよるが、身長173cmのライダーの場合、着座位置によっては若干かかとが浮く場合がある。※写真の上でクリックすると両足時の足つき性が見られます。 |
跨ってみると、シートとハンドルとフロアボードの位置関係によるライディングポジションが、同じ“XC”系ということで兄弟関係にある原付二種モデル・シグナス-Xに近いことを感じる。ただ、シートの高さは10mmほどの違いしかないのだが幅が異なるのか、マジェスティSは若干足着き性がスポイルされる印象だ。シート自体はサイズ、クッション共に余裕あり、独特のソフトな感触が特徴。今回、400km超の遠出でもお尻が痛くなることはなかった。
燃料タンクがレイアウトされる関係上、高めのステップボードは形状がフラットなため、乗り降りが楽なのはチャームポイント。灯油の買出しを行なう人にとっても嬉しいだろう。また、フロントカウルのインナーの形状は足を前に伸ばすことを可能としているため、足を置く位置の自由度は高いと言える。
自動車専用道路を走ることができる軽二輪の特権を活かし、静岡県の奥大井方面へ足を伸ばしてみた。緑の湖面が特徴の井川湖へ向かう細く曲がりくねった県道(山道)を軽快に駆ける。大井川鉄道・井川線(南アルプスあぷとライン)を見ることもできた。 |
走りだすと、4バルブ・ヘッドをもつエンジンの鼓動、フィーリングもシグナス-Xに似た印象を受ける。マジェスティSは30cc分キャパシティに余裕をもつが、駆動系はどちらかと言えば加速を重視したセッティングで、スロットルを捻ってやるといつでも145kgの車体をグイグイと引っ張ってくれる。発進時、フルスロットルを与えると、高回転域で半クラッチのような状態が続き、クラッチが繋がってからメーターパネルの一等地に構えるタコメーターを見ていると、7500rpmあたりをキープしながら勢いある加速が続く。ちなみに今回、最大トルク発生回転である6000rpm前後で巡航している辺りのフィーリングが気持ちいいと感じた。もちろん、自動車専用道路(高速道路)での100km/h巡航は問題なくこなすパフォーマンスを有する。
クネクネとした低速コーナーが続く山道を走っていても、絶妙なる駆動系セッティングのおかげで、もたつきなどのストレスを感じることはなかった。トリシティに乗った時も同様な感触を得たことがあり、ヤマハの駆動系セッティングにはいつも感心させられる。
前後に13インチのタイヤを履く足まわりはどっしりとした、軽快感ではなく接地感を感じる印象。エンジン搭載位置の関係上、リアヘビーになりがちなスクーターの印象は薄く、感じとしてはT-MAXに近い。個人的には若干固めに感じ、荒れた路面ではドタドタとした印象があった。今回、試すことはできなかったが、タンデム・ライディングでは好印象を得られたかもしれない。
ユーザーの使用用途の大半がシティ・コミューターとしての役割を担うであろうマジェスティS、実用面でも抜かりはない。オープナーの操作性も優れるシート下トランクは十分なスペースが確保されているおり、500mlのペットボトルも収納できるフロントインナーラックはちょっとしたものを置いておくことができる手軽さが魅力だ。また、シグナス-Xでお馴染み、フロント部にあるガソリン給油口は楽な姿勢で給油を可能としている。尚、参考までに通勤を想定した市街地走行や遠出を含め、625kmほど走った平均燃費は36.6km/L(満タン計測)だった。
コンパクトなサイズの中の各所に“魅せる造形”を見つけることができるスタイルは、好みによるものではあるものの、マジェスティSの魅力のひとつと言えるだろう。タイヤとホイールによる力強さと安定感、モノクロスサスによるリアのスッキリ感、そして前のめりのクラウチング・フォルムによる疾走感などなど……。そんな見る楽しみ、そして走る楽しみによる“所有する喜び”が、マジェスティSが今やYZF-R25とともに軽二輪クラスでベストセラーを続ける理由のひとつになっているのではないだろうか? 今回、触れてそう感じた。
(試乗:高橋二朗)
ヤマハ発動機の創立60周年を記念した2016年4月末までの受注期間限定モデル。1970年代から1980年代にかけ、北米のレースで活躍したマシンをイメージするイエロー地にスピードブロック模様をあしらったカラーをはじめ、フロントカウルのストライプ& 60th Anniversaryエンブレム、ブラック塗装のフロントフォーク・アウターチューブ、シャンパンゴールドのホイールなどが専用装備となっている。 |
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