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BMW Motorrad Japan
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 BMWはビッグスクーターを2012 年から市場投入し、3年目を迎えている。世界人口の半数が暮らすと言われる都市部。今もその人口は上昇を続けていると分析するBMWは、そこにビジネスチャンスがある、と動き出したのだった。 
 そして生まれたのがマキシスクーター、C600SPORT、C650GTの2機種だ。前者がTMAX、後者がスカイウェイブ650(海外ではバーグマン650)をターゲットとして造られた。2012年夏にヨーロッパでユーザーへの引き渡しが始まって以来、3シーズンで2万7000台を越すCが販売されたという。ヨーロッパでもスペイン、イタリア、フランスなどが主要スクーター市場だと分析するBMWにとって、デビュー時の経済状況は決して追い風ではなく、スペインなど市場がシュリンクするなかの滑り出しだっただけに、一安心でもあったという。
 
 この2台は、エンジン、CVTミッションなどの駆動系、そしてサスペンションなどを共用する言わば、兄弟車だ。それでいて両者の乗り味はライバルをみっちり学習したと見えて、C600SPORTはTMAX、C650GTはスカイウェイブ650を意識したものだ。
 Cが搭載するエンジンは、前傾シリンダーDOHC4バルブ並列2気筒647㏄で、最高出力は44kW(60ps)、最大トルクは63Nm。排気量、アウトプットともライバルを上回り、BMWでは初採用となる並列2気筒の270度クランクを採用したことも後発の強い意志を感じる。また、駆動系はユニットスイングとせず、スイングアームピボットを持ちエンジンは固定されたバイクスタイルを採るのもライバル同様、マキシスクーターらしいレイアウトだ。
 乗った印象で惜しい!と思ったのは動き出しのクラッチのつながりかただった。エンジンとクラッチ系の連携に250クラスのように回転の上ずり感があって、動き出しにコンマ数秒のタイムラグを感じてしまうところがあった。それを見越して少々右手を大きく捻ると、グワっと回転があがり、そのあと半クラッチが長い距離続くような印象が出る。もうちょっとエレガントでも、と思った記憶がある。ここはTMAXやスカブーのように排気量なりのクラス感でみたして欲しかったところ……。
 動き出してしまえば文句ナシだが、この辺詰めるべし、が当時の取材時にメモった言葉だ。
 

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新型はネーミングも650で統一。
熟成を進めたモデルチェンジに期待感上がる!

 今回、C650SPORT、C650GTの新型モデルをテストしたのはスペイン・バレンシア。C650GTは表記も踏襲するが、C650SPORTは600から650となった。元々エンジンは650だったから、解りやすいともいえる。
 
 テスト前日、変更内容にまつわるレクチャーが行われた。まず、スティールチューブのブリッジ構造フレームボディに、アルミダイキャストのピボットプレートを組み合わせたシャーシ、エンジン、CVTの駆動系をそのフレームにマウントし、二次駆動はスイングアーム内でオイルバスに浸かっているドライブチェーンによる駆動方式など、基本的な骨格やレイアウトは踏襲している。
 また、サイドスタンドを出せば、パーキングブレーキが連動して掛かる「その手があったか!」という機能もそのまま。今回施された変更は、C650SPORT、C650GTとも外観デザインの変更、安全装備の拡充、そしてCVT、クラッチなどの駆動系の設定変更とリファインだった。
 
 デザイン面ではC650SPORTに変更が多く見られた。外装パネルに連続を意識したラインを多用することで、面に彫りの深さとフロント、サイドなどのパネルの連続性を出している。
 C650SPORTのキーデザインであるスピード感はそのまま引き継がれた。コンパクトなテールからフロントエンドへと続くクラウチングスタイルがつくる前傾ライン。それを主体にしたBMWのスポーツバイクにも通じるデザインで、BMWお得意のスプリットフェイスも彼ららしさを主張している。
 対するC650GTは、テールランプとサイドパネルなど限られた部分の変更に留めている。こちらは、BMWのツアラーモデル、RTやGTL系のようなモデルライフサイクルの長さを主張するため、あえてイジらなかったという。
 また、両車ともハンドル周りのコクピットビューには所有感を満たす、高級感に溢れた仕上げが施されている。各部の表面仕上げにアレンジを施した他、ハンドルカバーには塗装のパーツが用いられた。ピアノのような艶のある黒塗装とクロームの飾りは、所有感を満たす巧い演出だと思った。
 
 先代で気になっていた駆動系にも手が入った。遠心クラッチのスプリングをソフトに、そしてウエイトローラーの重量を上げクラッチミートのレスポンスを上げると同時に、クラッチライニングの材質も変更。CVTをワイドレシオ化。よりローレシオからハイレシオまで広くカバーすることで、加速も向上。最高速も5km/hアップを果たしたという。
 
 また、前後のサスペンションのスプリングレートを10%減少させることで、快適性にも配慮したという。この二つの変更は大いに気になるところだ。
 またトラクションコントロール、オートマティック・スタビリティー・コントロール(ASC)を新たに標準装備。ABSに加えASCが装備されたことは、他のBMWのモデル同様、安全意識が高いイメージだ。
 
 安全装備は他にもある。初年度の日本導入はないとのことだが、C650GT用にオプションで選べる新しい安全装備がある。
 これは、前後に取りつけた音波センサーで他車の接近をライダーにワーニングランプを通して知らせるというシステム。サイド・ビュー・アシスト(SVA)と呼ばれるのがそれだ。仕組みは、最近の四輪車でも普及し始めているものと同種で、ミラーの死角にいる車両をモニターするものだ。自車の速度25km/hから80km/hの間で、同方向に進む、速度差10km/h程度の車両を感知し、ワーニングランプで知らせてくれる。
 四輪のドアミラーにオレンジや赤の矢印をよく見かけることが多くなったが、あれと同じ役割をもっているのがSVAだ。
 C650GTでは左右のリアビューミラーのステーに三角のワーニングランプが装備され、それが点滅することで知らせてくれる。これは動画をみてもらったほうが役割、仕組みが解りやすい。※動画あり
 
2015年10月、BMWはホンダ、ヤマハと協調型高度道路交通システム(C-ITS)の共同開発検討を開始し、その実用化で協力することを発表している。そのプロジェクトの仕事もこなし、安全装備のエキスパートエンジニアがこのシステムの開発を行ったという。二輪界ではSVA的装備はC650GTへの搭載が初めてとなる。オプションながら、日本向けにもできるだけ早いタイミングで選択ができるようになるKとを期待したい。

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惜しい90点から
新型は全問正解に!

 テスト当日、バレンシアの天気は雨。上がりそうな雲行きだが、路面はしっとりと濡れている。まずはC650GTのキーが渡された。比較的上体がリラックスしたポジションと手前に引かれたハンドルバー、そしてニールームやフットスペースと呼ばれる部分は、マキシスクーター随一の広さを感じるのは相変わらず。
 説明を受けた30%操作力を軽減した、というセンタースタンドも、えッ!というぐらい軽い。シート下に60リットルのラゲッジスペースを持つが、アウターデザインはあくまでスリムさを忘れていないのも特徴だ。
 
排気系にも変更を受け、排気音がよりダイレクトに耳に届く。270度クランクらしいバイク感ある音が楽しめる。アクセルを開けて発進をする。この時、後輪の最初の一転がりした瞬間、その違いに驚いた。ヤマハ、スズキのライバルと比肩する走り出し感、それでいて270度クランクが醸し出すトルク感が音と共に乗り手を満たす。先代では発進時に、プレミアムクラスとしてはもう一息だ、と思ったところが劇的に「らしく」なった。
 石灰質のジャリを用いたバレンシアの舗装は雨で想像以上に滑る。緩やかな加速でも頻繁にASCが介入し、ABSもレバーに作動のキックバックを与えてくる。信号待ちで止まり、足付きが良いだけにちょっと斜めに足を出し、踵を着こうとすると、それこそ股割きになりそうな感じでソールが路面を滑る。まるで過去に経験した忙しいとんこつラーメン屋の床のようだ。そんななか、多くのランナバウトを慎重に回り、加減速をソフトに操作する。発進の時、もし以前のクラッチセッティングだったら・・・・、もちろんASCナシの先代ではちょっとツラかったね、と思うほどだ。
 地元の人に聞くと、雨だとこれが普通とのことで、ピアッジオのフロント二輪のスクーターの誕生もうなずける。
 
 また、足周りのセットアップも素晴らしく、スプリングレートを低くしながらも、適度なプリロードが掛かっている様子で、路面への追従性がとっても良い。それでいて旋回性に重さが出るようなこともなく、この滑りやすい路面を綺麗にトレースしてゆくのだ。だから恐くない。OE装着されていたメッツラーのフィールフリーというマキシスクーターに向けたタイヤもマッチしてるようで、ウエットグリップは馴れるほどに不安が無くなる印象だった。
 駆動系のセッティングが決まったことで、C650GT全体の乗り易さと一体感がぐっと増している。
 
 試乗車にはSVAが装備されていた。街中の雨のこんな状況だと余計、周りに神経を使いたい、でも神経はアクセルやブレーキ、旋回時のバンク速度など、滑る路面でのサバイバルに使いたい……、というこんな状況で頼りになった。点滅で車両の存在を知らせるそれは、想像以上に助けてくれる。他車を感知している状況でその方向にウインカーを出すと、その点滅が早まり、危ないゾー、と猛アピール。視覚認知サポート、これは欲しい。都心などではもちろん、ベタベタの渋滞ではもちろん、高速道路が60km/hほどで走行車線も追い越し車線もなく同様な速度で多くのクルマが流れるような場面で威力を発揮することは間違いなさそうだ。 
 市街地から郊外に向かう高速に乗る。合流の加速など、さすが60psのCVT、という印象だ。美味しいエンジン回転域をキープして続く加速は、力強いトルク感が途切れない。速いクルマを追いかけて160km/hまであっという間に速度が乗る。その領域でもカウルとスクリーンが生み出す快適空間の中にライダーはいる。C650GTに装備される電動スクリーンを調整すれば欲しい快適性がさらに高まる、という印象だ。唯一、スイッチを押してから3秒ほど待たないといけないそのスイッチの連動性に不満を覚えるが、スクリーンを最上部まで上げれば身長183センチのボクの座高でヘルメットの上部まですっぽり覆われ、小雨に濡れずに走ることができた。
 高速道路でも足周りのセットアップも市街地同様に好感が持てた。乗り心地はすこぶる良い。それでも高速域までフワつくことなく、まるでコンパクトに仕上げたR1200RTにでも乗っているような自在感と安定感。それに快適さが加わる。ひょっとしてこれぞ大穴の上がりバイク候補では、と思った程だ。
 
 高速道路での車線変更でもシャーシはしっかり感と、いなし感を併せ持ち、車体がブルっとするようなこともない。固すぎず柔らかすぎない適度な剛性バランスを持っているのだろう。ヨーロッパの道で初めて体験するマキシスクーターだったが、要求度の高い道でこの走りはさすがだ。
 
 ワインディングでもその一体感は崩れず、雨で滑りそう、という舗装事情が唯一のストレスだったが、存分に楽しめた。100kmを共にしてバレンシアの港近くにあるランチスポットまで戻ってきたとき、太陽が顔を出すほど天気は好転していた。乾いた市街地なら自信を持って走れるし、大きな体躯を気にせずスクーターとしてバンバン使える。試乗に参加しただれもがそれを感じたのか、信号待ちでも地元ライダー同様、すいすいと開いているレーンをたどり、スペイン流アーバンモビリティーを堪能した。
 

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 そしてランチ後、C650SPORTに乗り換えた。結論から言うと、C650SPORTとC650GTは駆動系、エンジンのセッティング、サスペンション設定など全て同じだという。しかし、駆動系の味付けやエンジンが元気に感じる。そもそも速いし、速く走りたくなる一体感が楽しい。
 ポジションはC650GTより上体が前傾したアップライトな中にもスポーティーさが封入されたものだ。また、マフラーの取りつけ角度がC650GTより斜め上にエンドを上げており、マフラーエンドと耳の位置が近いことで、音に元気さが加わり、加速の度に「お!」と思わされるのも違いの源泉だという。リアセクションのデザインが異なる部分も、音にダイレクト感を強める一因だという。
 だれもがC650SPORTに乗り換えたとたん、ガンガン走り始めたから、そのちょっとした違いで人は大いに気分が変わる、ということなのだろう。先代よりも格段にハンドリングは軽くなった。以前、ちょっとハンドリングした辺りにドンとした重みを感じた部分がすっきりし、BMWの他機種のような一体感と安心感、そしてスポーツフィールを併せ持つものへと磨きこまれていた。
 発進のマナーはC650GT同様、一体感と加速感、トルク感に満たされる部分がランクアップしている。これによって250クラスのスクーター的感覚でビッグパワーを引き出せるのもC650SPORTの魅力だろう。
 こちらはSVAの設定や電動スクリーンは装備されない。装備は割り切って軽く仕上げるのが全体のスポーティさを醸す一因でもある。やや前傾したポジションの効果で、よりフロントサスの動きを意識しやすいく、旋回へのアプローチなどスポーツバイクらしい気分を楽しめる。まるでリアサスの全長を長いものに換え、車体を前下がりにしたような印象なのだ。それでも乗り心地は良好だった。
 
 このスポーツのほうはラゲッジスペースも割り切ったもので、停車時こそヘルメットを2つ収納できるフレックスケースの恩恵を授かるが、走行中はそれを折りたたむ必要があるから利便性だけを追うならC650GTが上だ。しかし、この軽快な走りを体験すると、スポーツも俄然気になる。
 ともに峠では濡れた状態だったことを考えても、それがストレスにならないパッケージだ。マキシスクーターという今までボクにとって他人だった存在が急に気になり始めた。いや、それほど新しいC650は艶っぽい、ということだ。
 国内のコトを考えると、あとはどのようにマキシスクーター予備軍、既存のTMAX乗り、スカブー乗りをBMWモトラッドディーラーへと誘うのか。その導線確保が急務のように思う。まだ価格も決まっていないが、ヨーロッパでは価格上昇は最小限に留める、と説明されているし、先代から戦略的な価格を考えても、競争力をもったプライスになるだろう、ということを期待してバレンシアからのリポートを締めくくりたい。
 
(松井 勉)
 

 
BMW C 650 SPORT

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BMWのマキシスクーターのデザイン潮流は、ワイドな押し出しの強さよりもスマートさ、そして軽快さとスポーティーさを打ち出す。テールからフロントに流れるような前下がりのラインが印象的。テールエンドの軽快さ、フロントの力感。そして各部のパネルを融合させるようなライン構成は秀逸。ハンドル位置が低くセットされているのも解る。
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他のBMWと同様のスイッチ類。電動スクリーンが備わらないC650SPORTのスイッチは、GTよりもシンプルになる。グリップヒーター、シートヒーターなどをパッケージオプションで装備可能な点はGT同様。国内導入時にどのようなパッケージで入るのか楽しみだ。 フットボードに金属製のプレートを配置し、グローブボックス周りの樹脂をパートごとに変えて質感を高めた新型C650SPORT。グローブボックス左側にはパワーソケットがあり、電源を必要とするデバイスを使用しながら走る事ができる。また、ハンドルバー類も脱スクーターとも言える造形を盛り込んできている。プレミアムカーとアーバンモビリティーのクロスオーバーを思わせる。
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C650SPORTのスクリーンは高さ3段階に調整可能。左右のノブを緩めてレールに合わせて所定の位置に合わせる方式。大型のスクリーンが装備されており、もっとも高さを上げると雨でも耐候性が俄然高まる。オプションでショートスクリーンも用意される。
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シンメトリーに別れたスプリットフェイス。センター、アッパー、ボトムの各パネルを有機的なラインが繋ぐ。プレーンな印象だった先代とはそのあたりが異なる。 180km/hまで刻まれた速度計。ファンクションモニター、オドメーター、時計などユースフルなメーター。グラフ式の回転計はあえて表示が小さい。開発者に聞くと、シフト操作をしないCVTだしね、とのこと。実際、右手に対する反応がよいため、あえて見たくならない。メーター周囲の樹脂のマテリアルにもこだわっている。 φ270mmのプレートを2枚備えるフロントブレーキ。フロントフォークはφ40mmのインナーチューブを持つ倒立フォーク。115mmのストロークを持つ。
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天地に薄いスポーツバイクを思わせるテールエンド。この厚みの中に機能的なラゲッジスペースを両立させるのもBMWらしいところ。走行中は使えないが、停車時にシート下ラゲッジに収納された蛇腹式に伸びるフレックスケースがそれ。合わせて二つのヘルメットを収納する能力を持つ。このフレックスケースを収納しないかぎりC650SPORTは走行出来ないように安全対策もとられている。 ナンバーステーを後方に張り出すスタイルや高い位置にあるテールランプなどはストリートファイター的モチーフでもあり、スポーツバイクとの血縁を印象付ける。

表皮、ステッチ、掛け心地にも上質さを漂わせるシート。ラゲッジスペースを覆うために幅広となっていないのが印象的。シート幅が適度の細身なので足付き性も悪くない。(写真の上でクリックすると、シートを空けた状態が見られます)
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前後15インチのピレリ・ディアブロスクーターを履く。ハンドリング、ドライ、ウエットグリップともC650SPORTをそれらしく楽しむためにうってつけのシューズだった。C650GTよりも角度を付けたマフラーが特徴のC650SPORT。サブサイレンサーを省いた結果、より純度の高いサウンドが耳に届くようになった。270度クランクらしいパルス感をダイレクトに楽しめる。エッジを効かせた意匠も特徴だ。 ホリゾンタルマウントのリアショック。白いスプリングが特徴。ボディーサイドにあえて見せるのがデザインとレイアウトの妙。 設計を見直したセンタースタンドは、操作力が30%低減されたという。スタンドを立てようと踏面を踏むと、ぽとりと掛かる。その時に必用な力はとてもこのクラスのスクーターとは思えないもの。サイドスタンドと合わせて使い勝手が良い。

 
BMW C 650 GT

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同じシャーシを使った兄弟車ながら、重厚感を出したC650GT。リアシートサイドのパネルはBMWのツアラーにみるパニアケースのような意匠だ。細かい変更だが、そのサイドパネルに刻まれたラインと、テールランプ回りの意匠が新しくなった。テールまわりはK1600GTL系、R1200RT系などBMWのツアラーモデルとファミリーであることを思わせるものへ。大きな変更はあえてせずモデルライフの長さをそこに込めたという。
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電動スクリーンは雨の時などライダーの楯となって機能してくれる。タンデムする場合など、パッセンジャーへの風圧コントロールもこれ一つで可能。中央にLED導光帯のデイランニングライトを持つヘッドライト。法規の関係で日本ではランニングライトとしての機能は使えないのが残念。現地では日中でも輝度の高い灯りで被視認性の高さが印象的だった。 大きな盤面の速度計、8分割のグラフ式燃料系、モニター中央に機能表示をするメーターは見やすくレイアウトされている。回転計が小型なのはCVTミッションではその重要度がそれほど高く無い、という理由から。
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ライダービューとなるハンドルバーカバーやグローブボックス周りの意匠は先代から神経を使った仕様だったが、今回もモデルチェンジではさらに表面フィニッシュなどにも細かく神経を使われた。また、膝前のスペースはじつにゆったりとした空間をもっている。 スイッチボックスのレイアウト、機能はBMWらしさが他のモデル同様使われる。ハンドルから手を離すことなくトリップメーターの操作が可能、多機能表示の切り替えも操作優先順位の高い順にレイアウトされる。ライトマークのスイッチはデイライト装備モデルでヘッドライトを日中に点灯させる場合の切り替えスイッチ。基本的に周囲の明るさを感知するセンサーを持つため、トンネルなどに入ると日中でも自動でヘッドライトやメーター照明が点灯する。ヘルメットマークは電動スクリーンの操作ボタン。押してから3秒後に動くレスポンスは短縮化を希望したい。右のスイッチボックスにはシートヒーター、グリップヒーターのスイッチが備わる。
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リアビューミラーのステー部分にある三角マークがSVAのワーニングランプ。左右のミラーのこの位置に装備される。運転中、どちらにクルマが存在するのかライダーは即座に認識可能。センサーはフロント、リアに装備する音波ソナーによるもの。テールランプ下にある二つの穴の中にソナーを装備する。車両が併走する場合、このようにワーニングランプが点灯し警告してくれる。また、その状態で車両が居る側にウインカーを出すと、このワーニングランプが点滅し危険を知らせてくれる。
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ボッシュ製9.1MB 2チャンネルABSを使い高い安全性を持つブレーキシステム。φ270mmのプレートと2ピストンキャリパーを装備する。フロントフォークはφ40mmインナーチューブを持つ倒立フォークを採用。 ウインドスクリーンとボディーの隙間にあるエアインテークの「外気導入」システムを装備する。操作は左右別々の手動とプリミティブだが効果的なエアフローコントロールが可能。K1600GTLなどに装備される導風板と同じ機能だ。
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表皮、ステッチなど先代にも増して高級感の演出に努めたシート。縦方向に長いトランクしたスペースのため、シート幅もさほど感じること無く、自然な掛け心地と、足付き性にも影響しない先端の細さで市街地でも郊外へのツーリングでも良さが生きるシートだった。バックレストの調整もできる。シートヒーターをオプションで選択可能。ライダー、パッセンジャーともにその恩恵に授かれる。リアシート用のスイッチはパッセンジャーが操作しやすい場所に。ライダー用は右側ハンドルスイッチボックスにある。シート下の収納スペースは60リットルと広大。フルフェイスのヘルメットを二つ収納してその間にもスペースが残る。(シート写真の上でクリックすると開いた状態が見られます) 先代C650GTはヘッドライトで造られたスプリットフェイスをリアでも反復するように左右に分かれた意匠だったが、左右一体に連なる形状へと変更になった。BMWのツアラーファミリーの一角にあることを主張する。
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外見はC650SPORTと同仕様のサイレンサーを備えるC650GTだが、その取りつけ角度やボディーのリアセクションの形状の違いなどからライダーの耳に届くその音はツアラーらしい整った高級感を持っている。全開時でも音疲れするような主張をしない。2機種でそれらしいチューニングを施した部分でもある。 カンチレバータイプのスイングアームと路面と平行にマウントされたリアサス、白いスプリングで存在を主張する。バネレートが10%低減されたこともあって乗り味はとても良い。 CVT一体のエンジンをフレームマウントし、スイングアーム内に内蔵されたドライブチェーンにより後輪を駆動する方式をとる。バネ下重量の低減やロードホールディング性能向上にも一役買うデザインだ。


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